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擬死態  作者: 面映唯
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3

 中庭に行くと、久しく来ていないというのに懐かしい光景が降ってきた。校舎の外装は汚れ、中庭の花壇も荒れてブタクサが生えているというのに、なぜか当時の光景が思い出せてしまう。担任の先生が中庭の花壇に掘った穴。どうせ掘り起こすんだからそんなに深い穴じゃなくていいよな。浅く掘った穴の中に、どこかの観光地で買ってきたお土産の缶ケースを入れてその上に土をかける。わかりやすいようにここに看板でも立てておくか。担任の考えで事前に作った木の看板をその上に刺した。


 数年の月日と年月、雨風に耐え凌いだよぼよぼの看板がそこには刺さっていた。


 私はその看板を抜き、手で穴を掘り返し始めた。そんなに深くなかったはずだ。手で掘ってもすぐに見つかるくらいの深さだったはずだし、それこそ雨風に打たれていたら花壇の土の嵩も減っているはず。


 爪の間に土が入った。手が泥で汚れている。それでも私はせっせと犬にでもなったように穴を掘っていた。次第に穴が深くなり、固いものが爪に当たる。指の腹でその表面を掻くと、土に汚れた缶ケースの角が見えた。


 ――あった。


 私は素早く缶ケースの周りを指で掻き、取り出した。


 缶ケースを取り上げた直後だった。缶ケースを開けるよりも先にそちらに視線が行ったのは少し臭かったからだ。


「ほ、骨……?」


 そのとき、ベルが鳴った。


 私は驚いて顔を上げた。うそ、もうそんな時間? 早く掘り起こして玖のいる放送室に行かなきゃ……。


 冷たい水が頭の上から降ってきたようだった。土砂降りの雨の中一人で傘もささずに歩く少女の気持ちはこんなだろうか。違うよね。土砂降りの雨とバケツ並々の水を頭からかぶるのとでは全然違う。それもいきなりトイレの上からバケツの水を放られたんじゃ、悪意丸出しだ。


 鼻を刺すきつい臭いは居酒屋で幾度となく嗅いできた。消毒液の匂い。アルコールだ。アルコールの匂いと、頭からかぶった冷たい寒気。身体をぶるっと一回震わせた。次の瞬間には急速に体が温まっていくようだった。


 熱い、熱い、熱い熱い。


 温まるなんてものじゃない。痛い。痛い。痛い。冷たくなんてない。燃え盛るような内側からの熱気が痛い。外面を蝕む悪意が痛い。


 彼女も、こんな気持ちだったのかな……。


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