講義16:情報構成子学 (2)
「続いて、これが本講義で最も重要な話題だ。
『従属情報』ついて説明する。
従属情報とは、魔力の制御のために一時的に構成される情報で、空間中に存在するある魔導構成子が『誰に属しているか』を表す情報だ。
IXC情報と同じく、魔導構成子に付加する形で存在する。
基本的には攻撃終了後すぐに情報は消滅してしまうが、稀に長期的に残存する場合もある。
しかし、意図的に従属情報が消えないようにすることは不可能、と言われる」
「従属情報があるから、魔法を収束できる。
空間中の従属情報が存在しないプレエーテルを、魔力収束に利用することはできない。
基本は。
ってことですよね」
「緑、その通りだ。
そして、その『基本は』、の部分にも意味がある。
空間中に存在する、従属情報を持たないプレエーテルに、意図的に従属情報を与え、自分の魔力として利用する。
これを空間魔術収束と呼ぶ。
また、この魔力を体内に取り入れて魔力を回復することを、空間魔力吸収と呼ぶ。
これが、俺が最も得意とする技術だ」
「すげぇ。
意図的にMPを回復できるってことですもんね」
「緑の言う通り。
しかし当然、限度はある。
無限の魔力とはならない」
「それでもすごい」
「空間中のプレエーテルを収束するとき、その従属情報の強さ、従属度は、非常に高い状態である必要がある。
その理由は『p→M変換』は従属度が高いほど簡単だからである。
Mは体内の魔力を表す文字だ。
術者に近い空間中のプレエーテルの従属度を上げていくと、自然と体内の魔力が回復する仕組みになっている。
これが魔力回復の仕組みだ。
従属情報の書き換え速度が、魔力回復の速さとなる」
「・・・」
「従属情報には個性がある。
従属情報は人により異なる。
家族だったり、人格が似ていたりしても、情報は異なる。
法則性はなく、ランダムと考えられている。
基本的には先天的なものだが, 後天的に変化する。
しかし、急激に変化することはあまりない」
「・・・」
「他人の従属情報を感じ取り、自分自身がその従属情報を用いて魔法を行使することは基本的に不可能。
自分の魔力は、自分しか使えない。
しかし、この基本原則に逆らおうという研究も少なからず存在する。
『魔力贈与』は、ある術者の魔力を、別の術者に贈与すること。
Mは体外に存在しないので贈与不能であり、pを贈与する。
pの贈与とは、理論的には提供する側の従属情報を提供される側の従属情報に書き換えれば可能である。
が、これは非常に難しい。
また、2者間でなく、多者間での魔力贈与、基本的には1対多間の魔力贈与のことは『魔力並列化』と呼
ばれる」
「・・・」
「『対象認識』とは特定の対象のみ攻撃する、もしくは攻撃しない、と言うような情報の付加のこと。
これには、その対象の従属魔力について深く知る必要がある。
自己対象魔術、つまりオウンターゲットマジック、OTMとは、自身を攻撃魔法の中心とするような攻撃魔術。
自身の認識なので、他者の対象認識よりは簡単。
グランドクロスが有名。
自分の従属情報を強固なものにすることが必要。
闇魔術は、他者の魔力を吸収し続けることで、自身の従属情報が弱まりOTM を行いにくくなる」
「・・・」
「はい、ここで質問です。
緑。
『魔力並列化』について説明しなさい」
「ごめんなさい。
詳細、聞き取れませんでした。
でも、従属情報を書き換えてみんなの魔力を自分のものにしちゃうみたいな話だったと思います」
「大体それでいい」
この教授。
今までで一番しゃべるぞ!
でも一方で、なんか大方、何喋ってるかわかる、って思ってる自分もいる。
成長したてことなのかな?
「3つ目、『無の情報』について。
これは、IXCでも従属でもない情報のことを言う。
戦闘に関しては意味のない情報とも言える。
しかし、そこには何かしらの情報が含まれている。
この情報を読み取る技能の1つが『死者会話』だ。
これが『魔力は意志を持つ』と呼ばれる所以だ。
無と呼ばれているが、それは戦闘においての無であって、本当の無ではない」
魔力は意志を持つ。
それはオトギバナシではなく。
理論的にそうであると教授は言っているのである。
「最後の話題になる。
情報子は基本的には、攻撃時にaやpに付加し、それらを制御することに用いられ、そのような情報子は攻撃後すぐにその情報を失ってしまう。
このような情報を『一時的情報』と呼ぶ。
逆に攻撃関連以外の情報には消えずに残る場合が多く、そのような情報子を『長期的情報』と呼ぶ。
その最たる例が『アンデット』だな。
長期的従属情報魔力は、空間中で長期間に存在可能な従属情報を保ち続けることがある。
レイスやウィスプなどの魔物はこの長期的従属情報の結晶であると考えられる。
また、シナノ教授が研究する地精も似たような存在と考えられる。
以上、授業終わりだ。
帰る」
そう言って、教授は教室を去っていった。
私は、上を向き、天井に魂をこぼした。
脳が疲れた。
「怒涛の授業でしたね」
「お疲れー」
エミュ先輩が労ってくれる。
しかし今回の『従属情報』の話題は。
私の脳内に強く刻まれただった。




