表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/75

課外13:メコたん親衛隊と週刊新聞

 『MECOSHIN、B級会員証』。

 会長様から直々に手渡された会員証を、私はニヤニヤしながら見つめる。

 ついに私も、C級会員からB級会員へランクアップしたのだ。



 念願のB級会員証を手に入れたぞ!




 ・・・


 さて。

 コレが何の話なのかというと・・・。


「エレナおねぇたん。

 新聞、持ってきたよ!」


「メコたん、ありがとー。

 今日も、とってもかわいいよ」


「ありがとう、おねぇたん。

 おねぇたん、だいしゅき」


「私も、だいしゅき〜」


 そう言って私は、天使の頭をわしゃわしゃと撫で撫でする。

 猫をあやすが如く。

 メコたんはニヘラと笑う。

 メコたん、マジ天使。

 かわいいよ、メコたん、かわいいよ。


 ひとときのスキンシップののち、メコたんは厨房の方に去っていった。

 次のお仕事があるのだろう。


 そう。

 『MECOSHINメコシン』とは、『メコたん親衛隊』の略称である。

 正式名称は『メコたんを虫獣から守る会』。

 メコたんをでたいという思いを持つ人間が組する、天使守護組織である。

 自己申告制であるC級会員まで含めると、クレセンティア内に相当数の構成員が存在する。

 これによりメコたんは、クレセンティア内のいかなる場所でも守護された状態となっているのだ。


 会員は、A級、B級、C級に分類される。

 C級会員は、『メコシンに入りたい』と宣言するだけで会員扱いになる。

 そこから、メコたんへの愛、及び品行方正さが、他の会員から認知されると、B級会員にランクアップすることができる。

 この時点で初めて、会員証を授与していただけるのだ。


 A級会員は、ある意味、メコシンの幹部。

 メコたんへの愛が、会長であるこの宿屋の女将おかみさん、つまりメコたんのお母さんに認められると、A級へランクアップできる。

 が、現在はA会員が増えすぎたので、ランクアップは一旦停止状態になっている。

 このA級会員が、組織運営を司っているのである。


「おはようございます、エレナ」


「おはようございます、パグシャさん、サラ教授」


「メコたんは、どちらに?」


「今、厨房の方に行きましたよ」


「ありがとう。

 ならちょうどいい。

 朝ご飯を食べましょう。

 メコたんがウェイトレスさんをしてくれるわ、きっと」


「楽しみですね」


 パグシャさんとサラ教授は仲睦なかむつまじく。

 2人で並んで、笑顔で食堂の方に入っていった。




 ここ、宿屋『宿り木の種』は、女性専用の宿である。

 同時に、食堂は宿泊客以外も利用でき、料理が美味しい、ウェイトレスが天使ということで人気になっている。

 しかし、入場制限があり、その条件が、『メコシンB級会員以上』、ということである。

 つまり、パグシャさんとサラ教授は、B級会員以上であるということ。

 だが、実は彼女達こそが、数少ない、精鋭、メコシンA級会員なのである。

 ちなみに、シナノ教授とノレリア教授もメコシンA級会員であるそうだ。

 この4人は、どうも仲が良いらしい。

 おっとり美女軍団である。


 現在、私はすでに朝食を取り、受付前のロビーの休憩席でコーヒーを飲んでいる。

 ノムは図書館に行くと言って、先ほど宿を出ていったところだ。


 さて、では。

 天使が配達してくれた週刊新聞(有料)を読むとしよう。

 見出しは・・・。

 

 『怪盗ξ、またまた出没』


 また出たのか。

 『ξ』は『グザイ』と読む。

 なんでこんなマイナーな文字を選んだのか不明だが、本人が予告状に明記しているのでしょうがない。

 ダサくない?

 『Σシグマ』とか『Ωオメガ』とかの方がよくない?

 などと、どうでもよい思考が生まれた。


 このグザイさんは、俗に言う『義賊』というヤツで、ちょこっといかがわしい商売をしているオッサンから、宝石のたぐいを取り上げる、というヤカラである。

 『この街の自警団は、一国の軍隊よりも強い』というエミュ先輩の言葉があったが、その自警団を持ってしても手を焼いている現状であることが、新聞に記載されている。

 その原因は、この怪盗が『消える』からである。

 おそらく『幻術+オーラセーブ』の組み合わせ、なのであろう。

 複数回の盗みを行い、さらに予告状まで出す。

 にも関わらず、逮捕どころか、何の情報も入手することができていないのである。

 このページには大きな写真が掲載されている。

 が、そこには怪盗の姿はなく、高価な宝珠を盗難されて、うなだれる商人の姿が映されているのみであった。


 次のページのトピックスは、『映画館』。

 そう。

 ナルセス教授の映画館である。

 簡易的な映画が完成し、試験上映を開始した、と記載されている。

 と同時に、その上映開始日時の情報もある。

 内容は、『猫とネズミが追いかけっこする』、だそうだ。

 ノムも誘って、タイミングが合うときに見にいってみようと思った。


 次のページのトピックスは、『世界情勢』。

 隣国『ハーパー』の経済情報や、国内の出来事が調査され、記載されている。

 この記事は、特に厳しい表現が多く、あまり外交がうまくいっていない、そんな印象を植え付けられた。

 というより、ハーパーがクレセンティアの存在をうとましく思っている、と言える。


 次のページのトピックスは、人気の連載もので、『研究院教授紹介』。

 今回登場するのは・・・。

 『ライザ教授』!

 教授がこれまで作成してきた武具がイラストを交えて紹介されていて、その武器が研究院の連絡棟の資料室で展示されていることが記載されている。

 その武器がどのように『凄い』のか、詳細に記載されており、新聞記者の腕が優れていることを感じ取った。

 そして最後に、ライザ教授のインタビューも掲載。

 『筋肉同盟』、『筋肉革命』、『筋肉留学』というお決まりのフレーズののち、『筋肉神マッスルしんあがめよ』という、ぶっ飛び発言まで飛び出していた。


 次のページのトピックスは、『自警団からの連絡、注意喚起』。

 街で発生した事件の詳細や、危険地域への立ち入り禁止、タバコのポイ捨て禁止などの行政規則が列挙されている。


 最後のページのトピックスは、『街の伝言掲示板』。

 お店の広告や、探し猫依頼、長寿お爺ちゃん紹介など、自由な内容。

 最後に多少ほっこりしたところで読了。

 この新聞は宿泊者で共用なので、私は受付にいる女将おかみさんまで返却しに行った。

 

 さて、新聞も読んだし。

 ・・・。

 もう一回、メコたん、でに行こー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=652491860&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ