表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/75

課外12:学院地下ダンジョン レベル3 (1)

 『KEEPOUT』。

 その封止テープの前に再び終結した。

 エレ、ノム、鎖骨、鯨。

 そして、レイナ様。


 学院地下ダンジョン。

 第3階層の攻略が始まる。






*****






 第3階層は第2階層と比較して、より壁の色が黒く、また照明は暗く。

 そして、敵が漏らす魔力は大きく。

 レイナが弱音を吐くほどの攻略難度であることが既知であり。

 自然と身が引きしまる。


「第3階層に関して、私が知っていることを述べておくわ。

 まず、第2階層よりも広大である、と思われる。

 長期戦を覚悟して。

 次に出現モンスター。

 ウィスプ属、レイス属、デーモン属、ウルフ属、アリゲータ属、ガーゴイル属。

 ここまでは第2階層と同じ。

 これに加え、さらにワイバーン属、プテラス属など、飛翔系モンスターが出没する。

 通路の広さが上層より広くなり、複数体からの同時攻撃を受けやすくなっている。

 ウルフ系も含めて、敵の敏捷性の高さに、特に注意を払ってちょうだい」


「隊列、どうしようか」


「今回、前衛に向く人間が、エレナと私、2人いる。

 なので、本探索は、『バックアタック』への配慮を行うのはどうかしら。

 つまり、前衛2人が隊列の最前列と最後尾に位置する。

 これで、背後からの攻撃にも対処可能。

 必然的に、最前列の人間の消耗が激しくなるので、適宜交代する」


「それ、助かるー」


「まず、私が先頭に出る。

 その後ろを、ホエール、エミュ、ノム、エレナの順で追従する。

 エミュは、後衛の2人に危機が迫った場合に対処を行うことをタスクにしてもらう。

 前にも、後ろにも行けるようにしておいて」


「ガッテン!」






*****






 探索は順調に進んだ。

 戦力が比較的低いエミュ、ホエールを、残り3人がサポートする。

 ダメージを受けても、ノム先生の治癒術ですぐ全回復。

 ノムが健在な限り、全滅はありえない。


 ただし当然、攻略難易度は2階層とは桁違いだ。

 その一番の理由は、ただ敵が強いから、だけではない。


「来た!」


 交代して先頭を預かっていた、私、エレナが警報を出す。

 前方からモンスター、の群れ。

 そう。

 モンスターが集団で襲ってくるようになったのだ。

 しかも、異種族混合。

 まるで、人間のような、知能や仲間意識があるように。


「後方からも来た!」


 ある意味、予定通りのバックアタック。

 しかし、まさか前後同時の侵攻とは。


「後方は2体。

 ワイバーンとレイス。

 ノムと私で足りる。

 エミュは前に出て!」


「オーケー。

 お任せあれ!」


 エミュ先輩が、ホエール先輩をかばうように前に出た。

 と同時に、ホエール先輩は魔力の収束を開始する。


「4体、かよ」


 前方に魔力体を確認。

 その数、4。

 視覚情報から得られる、敵の種別情報。

 デーモン2体、ガーゴイル、そしてプテラス。

 

 今階層から出現するようになったプテラスは、過去存在したとされる恐竜『プテラノドン』に類似した魔獣である。

 体は細く、防御力は低いが、危険なのが、長いくちばしと鋭い爪、そして羽。

 特に羽は、鋭く、刀剣類のような殺傷力を持っている。

 空中を自由に飛び、そのスピードはワイバーンよりも速い。

 魔術は使わないが、最も警戒すべき相手である。


 逆に、ガーゴイルは防御力が高く、攻撃力は比較的低く、かつ鈍足。

 私がコイツの相手をしてしまえば、危険な残り3体を鎖骨鯨組に渡してしまうことになる。

 それが、最も避けるべき事態だと考える。


「デーモン2体、ガーゴイル1体、プテラス1体。

 計4体です。

 プテラス急接近中です。

 でも、突破された場合、あえて無視しますので、エミュ先輩、コイツの相手をしてください。

 ガーゴイルは捨てます。

 残りデーモン2体は、私がります!」


「請け負った!」


 そして、私の横をプテラスが通過していく。

 想定通り。

 先輩方、頼みます。

 そして、次に接近したのは、紫色のデーモン、そしてその上位種の緑色のリザードデビル。

 『接近』というのは、私の『雷槍』の射程に入った、ということです。


「はっ!!」


 青の剣の先端から雷槍。

 ソイツが紫色のデーモンを貫いた。

 即、相手が戦闘不能になったことを悟り。

 同時に、緑のリザードデビルが、物理攻撃に向け、私に急速接近していることを感知する。


 『ガーゴイルが接近するまではまだ余裕がある』、という思考を挟んだのち。


 私は相手の鋭利な爪による攻撃を、青の剣を持ってして、はじき返した。

 そのまま剣で反撃。

 相手の右肩をかすめるも、致命傷には至らず。

 すぐにバックステップで距離を取ってきた。


 その瞬間、感じる魔力。

 緑、風。

 風術だ!

 デーモンは炎の術を使うが、リザードデビルが使うのは風の術。

 空間中に魔力が収束されていく。

 ここで怖いのは、この魔法が、私の後方に通過してしまうことだ。

 運悪く、鎖骨か鯨にヒット。

 そのワーストケースを殺す。


 私は魔力収束を開始。

 属性は風。

 目的は相殺。

 相手が魔法を発動したのと同じタイミングで、私も放出を行った。


 後攻であったにもかかわらず、相殺よりも良い結果を得られることになる。

 私の風術の方が威力が高く、風が相手まで到達した。

 さほどのダメージにはならなかったが、相手の体勢を崩すことに成功。

 その隙を見逃すほど、私は甘くない。

 奴の急所に、青の剣を突きつけてやった。


 勝負有り。

 リザードデビルは即、霧散消滅した。

 デーモンも消滅済みであることを確認。

 この時点で、ガーゴイルまでは、まだ距離がある。

 そのとき、


「うわぁぁっ!!」


 悲鳴。

 声色から判断、それはホエール先輩。

 しかし、私はその声を無視。

 今は、先輩たちを信じよう。

 そう決心し、私はガーゴイルに向けて侵攻を開始した。






*****






 戦闘終了。

 我々の勝利だ。

 ガーゴイルを雷槍2撃で消滅させ、すぐに引き返すと、そこには、もうモンスターは存在していなかった。

 心配だったホエール先輩は尻餅をついているが、流血は確認できず。

 大丈夫そうだ。

 エミュ先輩が手を差し伸べると、笑顔で受け、すぐに立ち上がった。


「ごめん、ごめんホエール。

 倒し損ねちゃった」


「怖かったよぉ」


「でも、結局トドメはホエールが刺したんだし。

 もっと胸張りなよ」


 どんな戦況だったのかな?

 その内容は、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で戦況を見つめていたノム隊長から説明された。


「エミュの炎の武具収束は被弾したけど、致命傷にはならなくて。

 敵の羽が槍を弾いて、突破を許して。

 敵がくちばしでホエールを攻撃したけど。

 とっさにホエールが杖で応戦して、反撃して。

 それで相手がひるんだ隙に、水術でトドメを刺した。

 ホエール先輩、意外と物理もいける口、なの」


「それだけ余裕があったんなら、助けてあげなよ」






*****

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=652491860&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ