講義12:鉱石学 (2)
「高級な魔導素材というものは、MA、SAの素材にしても、エレメントと利用しても、高い魔術効果を発揮してくれますわ。
属性ごとに有名な素材がありまして。
本日は、それを解説いたします」
「よろしくお願いします」
「まず、炎。
コスパ重視では、先程話ましたラヴィ鉱、レッドストーンなどが挙げられます。
でもこれらは、今のあなた達には、取るに足らない素材ですわね。
今のあなた達のレベルなら、『フレアルビー』がちょうどいいのではないでしょうか。
ルビーの中で、特に炎属性の補助効果の高い鉱石が『フレアルビー』と呼ばれます。
そう。
今、レイナの腕輪に装着されているのが、まさしくフレアルビー」
「そのとおりよ」
「なので、さらに上をめざすなら、もっとお金を掛けないといけません。
1つの案は、より効果の高い『フレアルビー』を探す。
もしくは、さらに高価な宝珠としましては、『レッドスピネル』というものもありますわ」
「それが、欲しい」
「ならば、それと同等の素材を持ってきなさいな。
ただし、『複数個合わせて同等』で構いません。
安物でも、大量に持ってきていただければ」
「それは有難い」
「例えば、レイナなら、炎以外の宝珠はあまり有用ではない。
なので、それらはどんどん私のお店に売却してください。
そして、貯めたお金で『レッドスピネル』を購入する。
しかし、それでは金銭の持ち運びが面倒なので、最後まで宝珠の形式で資産運用したほうが楽ですわね」
「納得した」
「次に、ノム。
封魔の魔導素材について。
あなたの杖に付いている『封神結晶』を超えるものは、この世には存在しないわ。
濁った色のクリスタルなら簡単に手に入りますけど、全く魔導効果はありません。
その宝石は、一生家宝として奉るべき代物よ。
もし気が狂ったら、私に売ってちょうだいな」
「ぬ」
「封魔の素材で一番有名なのは『封魔水晶』。
大量に採取可能なため、世の中に多く出回っている。
ただ、水晶全てが封魔の魔導効果があるわけじゃなくて、水晶の中から、特に封魔の魔導効果が高いものを探し出さないといけない。
そのため採掘には、魔導工学的な知見と、オーラサーチの能力が必要になる」
「掘る人間にも、技術があるの」
「その上位版に当たるのが、『神水水晶』。
『封魔水晶』の中で、特に性質が良いものをそう呼ぶ。
これは若干、色が水色がかっていることが多い」
「・・・」
「そして、封魔の魔導素材として、高価で有名なもの。
それが『プレシャスオパール』。
『オパール』の中でも、特に虹のような色、遊色効果が大きいものを指す。
その遊色効果の具合と魔導効率がおおよそ比例関係にある。
なので、『プレシャスオパールの中のプレシャスオパール』という代物も存在して、それはもう、まさにアレなのよ。
ノムのレベルならば、この素材を求めても良いのではないかしら」
「がんばる」
「最後に、エレナ。
雷の魔導素材について。
だけど、残念なことに、雷の魔導素材って、他の属性に比べると少ないのよ。
特に、安価でコスパが高い素材が存在しないの」
「うげぇ」
「最もコスパが高いのが、『ラピスラズリ』ね。
その上に『アウイナイト』という鉱石がある。
どちらも高価。
あなたの武器の剣に付いているのも『アウイナイト』よ。
小さいほうの3つね」
「そうなんですか」
この小さいほうの石も、結構高価なものだったようだ。
シエルくん、おかねもちー。
「そして、その大きいほうが『雷帝の宝珠』。
これも雷の魔導素材としては最高位の代物。
ノムのときも同じことを述べたけど。
もし気が狂ったら、私に売ってちょうだいな」
「あはははは」
「そして、この『雷帝の宝珠』と肩を並べる魔導素材がある。
それが『ブルーセレスタイト』。
『セレスタイト鉱』の中でも特に青みが強く、同時に雷の魔導効率が高いもの。
『雷帝の宝珠』がエレメントとして用いられることが多いのに対し、武具製造に向くのが、この『ブルーセレスタイト』」
「チャレンジ、して、みたいです」
どうせなら、最強の武器を目指したい。
これからは、ギルドの仕事も、もっと力を入れなければ。
「じゃあ、ここまでの商談をまとめるわね。
レイナ:『レッドスピネル』。
ノム:『プレシャスオパール』。
エレナ:『ブルーセレスタイト』。
・・・。
サカキバラ!
見積もり書を作ってらっしゃい」
その言葉に応答するのは、黒服スキンヘッドの男性。
サカキバラさん、というらしい。
我々に軽く礼をし、応接室から退出した。
「ではでは。
見積書ができるまでに、他の属性の話もしましょうか。
まずは、風。
安価、コスパ重視なら、『グリーンストーン』、『ヒスイ』。
中堅どころが『エメラルド』。
最高位の素材は、『アレキサンドライト』、そして『ハルモニウム』」
「『ハルモニウム鉱』を贅沢に使った、『ハルモニア』という大剣が有名なの」
「次に、光。
安価、コスパ重視なら『ピンクストーン』。
中堅どころが『ライトルビー』。
最高位の素材は、『ピンクダイアモンド』」
「欲しい・・・」
「最後に、魔導。
安価、コスパ重視なら『パープルストーン』。
中堅どころが『アメジスト』。
最高位の素材は『パープルオブシディアン』。
『パープルオブシディアン』をふんだんに用いた『オブシディアンソード』が有名」
「黒い剣のやつだ」
「また、異属性混合の素材もある。
一番有名なのが、『2色鉱石』。
これは『レッドストーン』と『グリーンストーン』が混じり合った、炎と風のエレメント。
そして、希少宝珠である『虹の宝珠』は、全属性に対応したエレメント。
こういうレアなケースもある。
とも言えるし。
今まであげた宝珠も、純粋に対応属性のみが強化されるわけではなく、他の属性もわずかに増強されてる。
ただ、この成分が逆に雑味になるケースもあるので注意が必要なの」
「このへんは、魔導工学的な話なの」
ここで、いったん話が終わる。
せっかくなので、出されたコーヒーでも飲もう。
うーん、苦い。
3つ提供された無糖珈琲は、2杯のみ消費された。
「まだ時間ありそうだから、もう1点話しますわ。
メインアクセサリに使われるのは、封魔の魔導素材。
先程話をした『封魔水晶』や『神水水晶』などを、ネックレスやペンダントの素材として利用するのです。
すると自然と、装備者の封魔防壁と作用して、防壁が強化される。
で、魔法防御力が上がる。
そんなシステムなのですわ」
「なるほど」
「では、ここで問題を出します。
この事実から解ることは何でしょうか?」
にゅーん・・・。
レイナもしかめっ面。
ここは、先生に任せよう。
「封魔の魔導素材が、消費量が一番多い、ということなの」
「正解よ。
なので、封魔の素材だけ、いっぱい掘らないといけないの。
でも幸いなことに、『封魔水晶』と『神水水晶』はザクザク採掘できるの。
ただし、『質』は全ての石で異なる。
故に、『目利き』が重要になる。
見た目は『神水水晶』でも、魔導効果がなければ、ただの石コロ、なのですわ。
騙されないように、気をつけなさい。
まあ、装備して1発魔法を喰らえば、すぐにわかりますけど」
「その実験は、やりたいくないです」
「ただ、その他の封魔素材は、枯渇問題が発生している。
故に、雷属性の素材に次いで、封魔の素材も比較的価値が高くなってしまったのですわ」
「なるほど」
ここで、また静寂が訪れ、コーヒータイム。
最後まで飲み干し、『ノムのコーヒー、飲まないなら、もらっていいかな』という思考が生まれたが、ハシタナイとか思われたら嫌なので自重した。
「おまたせいたしました」
サカキバラさんが応接室に帰ってきた。
彼の巨大な手には、3枚の紙。
それが、赤、緑、青に配布され、各位、目を通す。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
なんじゃこら!
「た・・・、高い」
「流石に、これは労が、いるの・・・」
「ぼったくり、じゃないでしょうね・・・」
3人が3人、顔をひきつらせる。
そして尊大ロリ教授は、本日最高の笑みを浮かべて宣言するのでした。
「一銭も、まけませんからね!」