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課外10:結成☆アルテミス (3)

「ジークン、ビール持ってきてー」


「了解です、ギルコさん」


 地下室の奥に投げかけられた言葉に、闇が返答する。

 若い男性の声だった。

 それにしても。


「仲良くなりたい、とは言いましたが。

 本性を見せろ、とは言っていません」


「エレナも飲む?

 ビール」


「いただきます!」


「私、ワイン貰うわ」


「カフェオレがいいの」


「ウーロンチャ、2つ」


「すぐ用意します。

 少しお待ちください」


 再び闇からの返答。

 どうやら部屋の奥側にカウンターがあり、そこでドリンクをサーブしているようだ。


「まー、そんなわけで。

 結論から投げるね」


 ここで、1杯のビールが到着。

 給仕がはやい。

 訓練された部下。

 それは黒の礼装を着た、黒髪短髪の美形の男性。

 ちょっと、アリウスに似てるかも。

 けっこう、好きなタイプの男性、かも。

 知らんけど。


「素材に関しては、レフィリアに相談しな。

 当方でも、掲示板掲載分よりも良質な依頼の斡旋は可能。

 しかし、最適解はレフィリア。

 あそこはな。

 宝物庫さ。

 歩く宝物庫」


 何故。

 何故ここで。

 当たり前のように研究院の教授の名前が出てくるのか。

 『あたいの情報網の広さ、舐めるんじゃ、ないよ』。

 そんなフレーズが脳内に浮かぶ。


「が、しかし、一言付け加える。

 レフィリアは。

 奴は、世界で最も『ケチ』な女だ。

 守銭奴の元締め」


「歩く宝物庫、守銭奴の元締め、ですか」


 ギルコさんがビールをあおり、その後ろからジークンさんが我々のドリンクを木製の盆に乗せてやってきた。

 ビール、赤ワイン、カフェオレが各位の前へ。

 そして2杯のウーロンチャは、シンセの前に置かれる。

 シンセはそのうちの1杯を、リェルさんに渡した。

 リェルさんは困惑した様子だったが、シンセが口につけることを強制し、観念。

 シンセ、正妻力高いな。


 ここで各自ドリンクタイム。

 次の発言は、カフェオレの甘さに満足気味のノムから産まれた。


「等価交換・・・。

 素材が欲しければ、それに見合う、別の素材群を用意する必要がある。

 当たり前といえば、当たり前」


「その通り。

 そして、その貢ぎ物を入手可能なクエストを、私、ギルコが斡旋する。

 これを受注し、依頼達成。

 受注、納品、繰り返し。

 この先でランクアップの承認を行う。

 以上のフローになる」


「結局私たちは、この人に依存するの」


「依存する、と言いながら、接待を受けているという矛盾、不条理。

 この懐疑心。

 早くぬぐい去りたいのだけれども」


 レイナに赤ワイン。

 飲みすぎないでね。

 怖いから。


「理屈は単純。

 貴方達が活躍する。

 ギルド潤う。

 私、嬉しい。

 みんな幸せ。

 ビール飲む」


 実際にビールを飲むギルコさん。

 ジョッキの底が見えると、おかわりを注文した。


「ほんとに申し訳ないが。

 あんたが喋ると、なんか、くすぐったいんだよね」


 シンセが発言。

 ウーロンチャに口をつけてはいない。

 推測。

 睡眠薬等の混入を疑っているのだ。

 すると、『2杯』にも、別の意味を見出してしまう。

 なるほど。

 ダメなリーダーで申し訳ない。

 でもビール、飲みたかった。

 とか言ってみる、心の中で。


「理屈は単純。

 貴方達が活躍する。

 私たち、Sレベルの優秀な冒険者を囲い込んでおり、Sランク依頼も易々達成できます、と宣伝できる。

 依頼者、増える。

 依頼を求める冒険者、増える。

 売り上げ伸びる。

 ビール飲む」


 おかわりのビールが到着。

 今度は口につけず。

 ギルコさんはシンセを見つめた。

 シンセはウーロンチャに口をつける。


「客寄せなんたら、なの。

 冒険者の名前さえ秘匿してくれれば、私は問題ない。

 暴れてやる、の」


「楽しそうね」


「ビールうめぇ」


「あたしゃ心配だよ」


 各々、感想を述べ。

 意思をリーダーエレナへ伝達する。

 最終的意思決定権は私にある。


「ギルコさん、おおよそ納得です。

 まず、依頼書を見せてもらえませんか」


「ご用意しております」


 影からジークンさんが出現し、用紙の束を手渡してくれる。

 NINJA!!

 私はそれを4等分し、アルテミスメンバーに回した。

 各位、目の色が変わる。

 さあ、お仕事開始だ。


「なんか、いいなぁ」


 ぼそりと(つぶや)いたのはギルコさん。

 ゆっくりと、ゆっくりと。

 ビールを口に(そそ)いでいく。


「私の冒険談とか聞きます?」


「めっちゃ聞く!」


 嬉しそうに笑ったギルコさん。

 私は闘技場初日の出来事を思い出し、回想を準備する。

 その前に。

 ある考えが突発的に浮かび、それをそのまま口に出した。


「1つ、提案していいですか」


「どうぞ」


「では。

 リェルさんを、私たちのパーティーに貸してください」


「オーケー」


 エレナ、ノム、レイナ、シンセ、ギルコ、ジークンさん。

 全員がリェルさんを凝視する。


 そのときのリェルさんの表情を、私は、一生忘れることはできないだろう。






*****

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