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講義8:魔導光学 (2)

「喋りたいことは全部話せたので、これで講義終了。

 と、いきたい気持ちもあるのだけれど。

 これじゃあ、僕が『工学者』だという認識だけで終わってしまうね。

 なので最後に少しだけ、魔術の話をしよう」


 そう言うと、教授は私たちから少し距離を取る。

 そして祈祷(きとう)収束のポーズで精神集中を開始した。

 教授と私達の間の空間に、魔力が集まる。

 その魔力は、成人女性になった。


「アルティリス女史、ですね」


 そう答えたのは、ノム。

 レイナと私は、ただの白い長髪、白い衣装の美しい人であるという認識しかなかった。

 長く伸びた白い髪は、今にも地面に着きそうなまである。

 聖女のような微笑み。

 しかし、どうしても感じざるを得ない『違和感』。

 それが、私の次の言葉を引き出した。


「『幻術』、ですね」


「その通りだよ、エレナ。

 この学院の教授は、1年に最低1本、魔術に関する論文を書き、学院に寄贈する必要がある。

 これが研究費をもらうため、この場所にとどまるための条件になっている。

 僕の研究論文の内容は『幻術』。

 光術を用いて、相手術師にマボロシを見せる術」


 アルティリス様が徐々に消えていく。

 さよならなのだ。

 今度は本物に会いたい。


「そんな幻術に関連して、1点だけ語ろうと思う。

 魔術の講義を始めよう。

 今日語るのは、『擬似12属性』だ」


 『擬似』、『12』。

 その2つの情報を脳がピックアップする。

 この世界の魔術属性は6つ。

 12、ではない。

 その差、6に、『擬似』という言葉が影響してくるのであろう。


「既知の通り、この世界の魔術属性は6つ。

 魔導、封魔、炎、光、風、雷の6つ。

 これは現在の科学においては真実。

 その他の属性は存在しない。

 擬似12属性は、幻術を用いて、これら6つの属性、もしくはその合成、混合属性を、あたかも別の新たなる属性であるかのように見せることにより実現される。

 擬似的な属性。

 その歴史は、魔石戦争時代に(さかのぼ)る」


「12個の魔石。

 この魔石と、擬似12属性の各属性が対応しているの、ですね」


「その通りだよ、ノム。

 この魔石は、かの聖者マリーベルが創造した神具、マジックアイテム。

 魔石1つ1つに、マリーベルは擬似属性を割り当てた。

 ここで、その属性を列挙させて欲しい」


 ナルセス教授は1枚の用紙を机に置き、私たち3人に向ける。


「1、氷雪ひょうせつ

 2、獣鬼じゅうき

 3、桜花おうか

 4、天光てんこう

 5、風樹ふうじゅ

 6、雷雨らいう

 7、星空せいくう

 8、海龍かいりゅう

 9、宵月よいづき

 10、地裂ちれつ

 11、鋼鎌こうれん

 12、魂火こんか

 以上、12属性」


「ぬぅん」


 多い。


「例えば、7つ目、星空せいくう星空せいくう魔術。

 これは、天から星々を振らせる魔術。

 それはまるで、神の御技みわざ

 しかし実際は、光術や炎術、雷術で生成した魔力球を、星に見せかけて振らせているにすぎない。

 一部、幻術を利用して」


「なるほど」


「その他の11属性も同様。

 この周辺の内容は、僕の研究論文に詳細をまとめているので、気になれば参照して欲しい」


「なんで、マリーベル様は、こんな面倒なことしたんですかね。

 基本6属性なら、楽できたはずなのに」


 ふと浮かんだ疑問を、私はそのまま垂れ流した。

 不躾ぶしつけだったか?


「美しいからだよ」


「美しい・・・」


「ここで挙げた12の属性は、人間が見て、美しいと感じるものが列挙されていると言える。

 桜、星、月、海、大地、そして人の魂。

 マリーベル様は、後世の人間に、このような美しさがあることを忘れないでいて欲しかった、のではないだろうか。

 そんな考察だ。

 まあ。

 その魔石は、戦争のために使われることになるのだが」


 擬似12属性と幻術の研究も。

 そして光学、レンズの研究も。

 すべては教授の『美意識』と連結している。


「美しいものが好きなんですね、教授は」


 そんな私の言葉。

 それを無視して、教授はレイナを見つめていた。


「レイナ、今度時間をくれないか。

 君の写真を、大量に撮らせてくれ。

 衣装を着せ替えさせてくれ。

 そこに、僕の求める『美』がある」


「帰るわ」


 レイナ様、ご帰宅。

 授業も終わったようなので、私たちも、ゴメンアソバセ。

 サヨウナラ。

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