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課外7:天空露天と月の歴史 (2)

「おう!

 お前らも来ていたのか!」


 エミュ先輩の話は面白く、話に没入していたが、掛けられたすこぶる明るい声により、現実世界に戻ってきた。

 声の方向を観察する。

 最初に目に飛び込んできたのはピンクの獣耳。

 そしてそのまま視線を下に移動させると。

 私といい勝負の巨乳。

 ぬぅ・・・。

 さらに下へ移動すると。

 一糸(まと)わぬ肉体美。

 鍛え上げられた腹筋。


「ライザ教授!

 教授もいらしてたんですか!?」


「奇遇だな。

 喜ばしいぞ!」


 隠して!隠して!

 という私の脳内の声は聞こえるはずはなく。

 ライザ教官は、あられもない姿でノシノシと近寄ってくる。

 そのとき私は、その後ろに、もう1人、ピンク色の髪の人物がいることに気がついた。

 

「エレナ、学院生活は充実しているかい?」


 そのピンクさんが私に声を掛けてくる。

 湯気が視界をぼかし、観察力を低下させる。

 しかし、その胸は、私以上に豊満であった。

 誰だ、この人?


「とうっ!!」


 そんな掛け声と共に、猛ダッシュ。

 ピンクの女性は助走を付けて加速し、湯船の淵で跳躍した。

 着地と同時にしぶきが上がり、私達は反射的に防御姿勢を取る。

 すぐに状況確認を開始するが、ピンク色はどこにも確認できなかった。


「いやっ!」


 その瞬間、体が否応なく反応する。

 双胸に走る強い刺激。

 胸を、揉まれてる!!

 

「でっかく育ちやがって」


 そんなオヤジ丸出しのフレーズを発しながら、性的衝動を抑えないピンク野郎。

 その声質に聞き覚え有り。

 私は刺激に耐えながら、全力で脳を回転させる。


「モメルさん、やめてください!」


「堪能したぜ、エレナ」


 胸を揉んだ犯人。

 それはモメル。

 メイドのモメル。

 メイド服じゃなかったから、判断が遅れた。

 が、いやらしい声質が、その答えを教えてくれた。


「そんなに揉みたいなら、先に私のこと口説(くど)いてください」


「愛してるぜ、エレナ」


 そんな軽々しい台詞(セリフ)を吐き捨てて、ピンクのモメルは離れていった。

 尻軽女め。


 気づくと、ライザ教授も風呂に浸かっていた。

 ここで、レイナが混沌を破る。


「ライザ教授とモメルさんはご友人なのですか?」


()み仲間だ。

 今日もこの後、一杯やるつもりだよ」


 ライザ教官のピンクの獣耳がピクピクする。

 触りたい。

 その感情は、モメルが私の胸を揉んだときの気持ちと似たようなものだ。

 

「レイナも、エレナ達と仲良くなったようね」


 その言葉を発したのはモメル。

 ここで、とある疑問が噴出する。

 私はレイナに尋ねた。


「モメルとレイナは、面識があるの?」


「私がこの学院に潜入しようと校門の前でウロウロとしていたら、モメルが声を掛けてくれた。

 その流れで研究生、入学の話になった」


「私達と、おおよそ同じだね」

 

「有望な人間を、みすみす見過ごす。

 そんなのは勿体無い。

 学院は、常に有能な人間を求めている」


 モメルが語る。

 その言葉に合わせて、ライザが目をつむり、首を縦に振り、つぶやいた。


「期待しているぞ、若人(わこうど)達」


 肌が上気し、髪と耳のピンク色と調和しだす。

 気持ちよくなっている。

 より良い武器を作ってもらうため。

 今こそがチャンスである。

 肩揉み攻撃だ!

 私はライザ教官の後ろに回りこみ、肩に手を伸ばした。


<<モミモミ>>


「気が利くな、エレナ」


 カッチカッチやぞ!

 肩にまで、しっかりと付いた筋肉。

 硬い。

 そんな硬度に負けず、一所懸命に手を動かす。


「何でも、ご命令ください、ライザ様。

 私達がお願いしている内容は、それほどに厄介なことと存じます。

 何卒(なにとぞ)


 先ほどのエミュ先輩のマッサージを真似。

 私は首と肩甲骨の上辺りを重点的にほぐしていく。

 教授の鍛え方からすれば、ある程度強くしても大丈夫であろう。


 ぽかぽか気分で気持ちよくなったノムも教授に近づき、腕を揉み始めた。

 美少女2人による、接待攻撃。

 陥落(かんらく)しなさい!


「2人とも、まだまだ筋肉の鍛え方が足りないな。

 弱弱しいぞ」


「ならば、殺すつもりでいきます!」


 込める力を強める。

 しかし教授は表情を変えない。

 ならば、作戦を変えよう。


「教授、不躾(ぶしつけ)なお願いをしてもよいですか?」


「なんだ」


「耳に触っても、いいですか?」


「まあ・・・。

 構わんが」


「ありがとうございます。

 では、遠慮なく」


 私は教授のピンクの獣耳の根元に触れる。

 両手を使い、それぞれで両の耳を触る。

 

「もふもふやぁ~」


 あまりのモフモフ具合に、心が持っていかれそうになる。

 その快楽に耐え、私は耳に添えた手を上に動かす。


「んっ!」


 ライザ教官の体が、(わず)かにビクンと跳ねる。

 効いてる!

 効いてる!

 

 そのまま、私は手を上下させる。

 その流れで、耳の内部まで手を伸ばす。

 さらに追撃。

 『耳ふー』攻撃だ!

 

「おい!コラっ!

 私の耳で遊ぶんじゃない!」


 慌てた様子のライザ教授が拒絶反応を見せる。

 しまった。

 やりすぎた。

 ただ、効果は抜群だったようで、顔がさらに赤くなっている。

 かわいい。


「どれだけ筋肉を鍛えても、耳は鍛えられんのだ」


 教授はそんなことを言い放った。

 モメルさんがニヤニヤしている。

 たのしそうな。


「教授。

 教授は、エレナとノムの武器製造を請け負っているのですか?」


 その質問をしたのはレイナ。

 真剣な表情で教授を見つめる。

 教授は(うなづ)いて、それに答える。


「私も、欲しいです。

 新しい武器が。

 何でもします」


 レイナが自尊心を投げ捨てて懇願した。


「どんな武器が欲しいのだ」


「私の、今の武器は腕輪です。

 相性は良いと思っています。

 しかし、決定打に欠けます。

 最後の決定打となる一撃。

 そのために必要となる武器を求めています。

 しかし。

 それに適した武器。

 それが何か。

 その答えは、今の私の中にはありません」


「エレナ。

 レイナに合う武器、何だと思う?」


 ライザ教授からの質問。

 突然、矛先がこっちに向く。

 あまり深く考えることなく、私は思ったことをそのまま口にした。


(むち)?」


 その瞬間、訪れた静寂。

 すみません、ボケたつもりだったのですが・・・。

 しかし、その先には、意外な結末が待っていた。


「いいわね」


「はっ!?」


「いいな、(むち)

 似合うと思うぞ」


「はっ!?」


 レイナもライザも、私のボケを本気で受け取ってしまった。

 レイナ×(かける)(むち)

 SM女王様への道、一直線。


「軽量で、レイナの敏捷性を損なわない。

 自由度の高い攻撃を実現できる。

 相手の意表を付ける」


(むち)

 作っていただけますか?」


 なに?

 この展開・・・。


「よく聞け。

 (むち)の、打撃部、レザー部の素材が必要だ。

 これは金属でなく、魔獣の革となるだろう。

 この素材は、レイナ、お前自身で入手しろ。

 より強力な魔獣を討伐し、レザーを入手する必要がある。

 レザーを鞭に加工する工程に関しては、ノノ教授に相談しろ。

 一方、グリップ部分に必要な金属はクリクラ教授に相談しろ。

 それが最適解。

 それら、全ての素材が揃ったら、私に持って来い。

 無償で武具製造してやる」


「無限の感謝を。

 必ず、全条件を達成します」


 ここに、『レイナ、SM女王様化計画』が発足(ほっそく)した。

 Mの男性が泣いて喜びそうだ。

 レイナは、いやらしい微笑(びしょう)を浮かべている。

 彼女は、どこに向かおうとしているのか?


「教授、話はそれますが、もう1つ質問があります」


「話せ」


「あそこに衣服を着用した女性がいるのですが。

 彼女は何をしているのですか?」


 それは私も、とてつもなく気になっていた。

 魔術師風なコートを着用した、キッツい目をした杖装備の女性。

 露天風呂にも関わらず衣服を着用したまま、風呂の外でじっとたたずんでいた。

 異質も異質。


監視者(サーベランス)だよ。

 覗き魔がいないかを監視しているのさ。

 この街の法では、風呂を覗く人間は殺していいことになっている。

 覗き魔を監視、排除するための人間さ」


 その瞬間、サーベランスさんが炎の槍を生成。

 即、放出され、数秒後に爆発音が聞こえた。


「あ。

 まさに覗き魔がいたみたいだな。

 その覗き魔。

 まさに、冒険者だよ」


「恐ろしい・・・」






 この時点で、ほっかほかで、のぼせ気味のノムが限界宣言。

 それにライザさんとモメルも応じてくれる。


『呑み、お前達も付き合え』


 そのライザ教授の提案に、エレノム、レイナ、鎖骨の全員が賛同を示す。

 ライザ教官行き着けの、お魚がおいしいお洒落居酒屋へと同行した。


 いい気持ち。

 本当に最高の一日だった。

 それにしても。

 居酒屋でのレイナの変貌っぷりが、あまりにも凄かったが。

 それを話すのは、別の機会にさせてください。

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