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講義7:オーラ学 (2)

 廊下に出た私たち。

 ノムの推測に従い、一番奥の応接室4の前。

 ノムと目を合わせると、質問が投げかけられる。


「エレナ、何か思うことはある?」


「私も、この部屋だと思う。

 レイナの炎の魔力ってさ、なんか特徴的な感じがするんだよね。

 まあ感覚的な話で、言葉にはしづらいんだけど」


「ではでは、答え合わせね。

 ぱんぱかぱーん!」


 陽気な掛け声と共に、勢いよくドアを開いたシェムノ教授。

 その先では、応接室のイスに座って、(うつむ)いたレイナがいた。

 ただよう悲壮感。

 日頃のSキャラとのギャップが最高です。

 なんか、かわいい。


「残念でした。

 ご褒美獲得ならず」


 私はレイナに背後から近づき、ゆっくりと肩に触れた。

 拒絶され、手をはじかれることがないことをしっかり確認すると、弱めに肩を揉んだ。

 スキンシップ攻撃。

 弱ったところに漬け込むのである。

 10秒ほど揉み揉みしたが、レイナは最後まで拒絶しなかった。

 あんまり長くやるとウザがられるので、ここらで退散。

 喜んでもらえたかはわからないが、不快ではなかったと信じたい。


「エレナ、肩を揉んでくれてありがとう。

 また後日、今度は私が揉んであげるわ。

 強めで、ね」


 レイナ様が目を細め、いやらしい笑みを浮かべる。

 よかった。

 いつものレイナ様に戻ったようだ。

 Sのレイナ様と、Mのエレナは相性抜群なのでした。


「さてさて。

 ・・・。

 魔術師ノム!

 あなたの番よ。

 その実力を見せなさい!

 勝負よ!」


 シェムノ教授が宣戦布告する。

 これは楽しみな戦いだ。

 実力は教授が上だ。

 でもノムも、先ほどの『耳ふー』攻撃の借りを返さんと奮起するはずだ。


「ふんす!」


 ノムがちっこくファイティングポーズを見せる。

 こちらもやる気満々だ。


「私たちはまた第一応接室に戻るわ。

 戻ってから1分間があなたの猶予。

 その後に答え合わせね。

 よろしいか?」


「ぬ!」





*****






 1分経過。

 応接室の中からでは、ノムの行動を彼女の漏出魔力から感じ取ることはできなかった。

 私とレイナの2人。

 左の応接室2、中央の応接室3、右の応接室4、それぞれを交互に眺め、集中力を研ぎ澄ましていた。


「答えは出た?」


「もう少し時間をください」


 シェムノ教授の問いに、私が返す。

 私は行動を開始。

 応接室2から順に、その扉に手を触れ、そしてノムのことを脳内に強く思い描いた。

 懐かしい、過去の光景が浮かんでくる。

 『見つけてあげたい』。

 そんなフレーズが脳内に浮かんだ。


 応接室3、応接室4でも、同様の作業を行ったエレナ。

 そしてシェムノ教授に告げる。


「決まりました」


「りょ。

 では、レイナから答えをちょうだい」


「私は応接2です。

 ここからしか、魔力を感じないから」


「では次、エレナ」


「2は、『スケアクロウ』、だと思います。

 私は応接3です。

 流れてくる、本当に微弱な波動が、なんかノムっぽい気がする、から。

 応接3の扉に触れたときが一番落ち着く、というか。

 私、何言ってんだ」


「なるほどね。

 私は応接4を選択するわ。

 余ったので」


「そんな理由ですか」


「悔しいけれど、ノムのオーラセーブの能力は本物よ。

 世界でも上から10人には入るでしょうね。

 脱帽よ。

 応接3か応接4。

 どちらであっても不思議ではないわ」


 そこまで話すとシェムノ教授は、応接室4の前に移動した。


「全員、同時に扉を開けましょう。

 準備して」


「了解です」


 レイナは応接2へ、エレナは応接3へ。

 それぞれ各位、ドアノブを握る。

 ノムとの絆が試される。

 そう考えるとプレッシャーだ。


「いっせーの・・・。

 せっ!」


 ガチャリと音を立てて扉を引く。

 その瞬間、私の胸に柔らかい温もりが飛び込んできた。


「エレナ、おめでとうなの」


 扉を開けた瞬間、ノムが私の胸に飛び込んできた。

 日頃ない優しくて大胆なスキンシップに一瞬戸惑うも、すぐに彼女が与えてくれる愛を堪能する。


「ノム、いつも一緒にいてくれて、ありがとうね」


「こちらこそ、なの」


 日頃は言えない感謝の念。

 それを耳元で伝えあった。


 ノムから離れ振り返ると、レイナは優しい表情を見せてくれていた。

 その表情を見て、『あんたたち、ほんとに仲がいいわね』というフレーズが浮かんだ。


「おめでとうノム。

 見事、このシェムノ教授をだましましたね。

 では、ご褒美を贈呈します。

 こっちにきなさい」


 ノムは軽く首を縦に動かすと、無言で教授の前まで移動した。

 なんか、くれるのかな?

 マジックアイテムかな?

 きっとノムも同じような考察をしているだろう。


「むきゅっ!」


 ノムが変な悲鳴を漏らす。

 そのノムの顔は、シェムノ教授の巨乳に、ずっぽしと埋まり込んでいた。

 さらに教授は、ノムの顔を押さえつけてグリグリと自分の体に押しつける。


「ぷはぁ!」


 ノムの抵抗が激しくなったので、その行為は5秒ほどで終わってしまった。


「堪能した?」


「この人、変態なの」


 困惑した声でなげくノム。

 その顔は朱色に染まり、両の瞳はウルウルしていた。

 くっそ、かわいい。

 そんなくっそかわいいノムが、今度は私に体を預けてくる。

 白い手で、私の腕をちょこんと掴んだ。

 なんか今日は、ノムの女の魅力が大解放される1日だ。

 大先生の威厳が崩壊し、男の心を何度も串刺しにする美少女の側面が漏れ出している。


「魔術師ノム。

 私の弟子になりなさい」


「やなの」


「即決は必要ない。

 ゆっくりと考えておいてね。

 それじゃ、バイバーイ」


 そう言って振り返った瞬間、教授は霧散消滅してしまった。


 なんかぐったりしたノム。

 気分転換に、帰ってお風呂にでも入ったほうがいいのかも。

 そんな思考を受け、帰宅を提案しようとした私を引き止める声。

 レイナだ。


「エレナ。

 ちょっといい」


「はい?」


「オーラセーブの特訓をするから手伝って」


 断る理由は特になく。

 一人宿へ戻っていくノムを見送って。

 私とレイナは、応接室を利用したオーラ操作の修行を開始したのだった。

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