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疑心暗鬼という生き物

作者: 迷走クマ

思いついたのでだらっと書きました

 疑心暗鬼の朝は早い。とはいえ、何か用があるわけでは無いのだ。

 昨日の自分が誰かに嫌われたのではないか? という疑念と、明日も誰かに怒られるのではないか? とい

不安に、睡眠が基本的に浅いのだ。

 疑心暗鬼の睡眠時間は一回当たり3~5時間。5時間も眠れる事は非常に稀と言ってよく。この睡眠は至福のひと時と言って過言ではない。ちなみに合計の睡眠時間は8時間を超える事がしばしばだ。実に健康的と言える。


 疑心暗鬼は単独で過ごす事が多い。しかし、好んでいるかというと、それは明確に違うのだ。

 疑心暗鬼は基本的に寂しがり屋だ。常に心中に疑念を抱えるが故に、人の温もりを求めている。だが残念な事に、他者とのコミュニケーションは疑心暗鬼にとって大きなストレスとなる。

 何故ならば、その日一日の間に接した人物が多ければ多いだけ、嫌われたかもしれない、という疑念が膨らむからだ。疑心暗鬼の哀れな所は、たとえ友人であってもこの疑念の対象になってしまう事だろう。

 結果として、疑心暗鬼は孤独に過ごす事が多いのだ。しかし、その心中は疑念から解放される代わりに、感情をすり減らすような寂しさに埋め尽くされる。


 疑心暗鬼は傍から見ると快活で真面目、比較的コミュニケーション能力に長けている様に見える。これは疑心暗鬼が本能的に行う防御行動、そう、擬態である。

 疑心暗鬼は自身が人間では無いという事が露見する事をひどく恐れている。もっとも、疑心暗鬼は見た目も遺伝子も人間のそれと変わりは無く、どれほど優秀な学者であっても生物的な違いでもって疑心暗鬼と人間を区別することは出来ない。


 疑心暗鬼は非常に憶病で、それ故善良な生き物だ。もちろん弱い生物なので、怒らせるとむしろ非常に危険な場合もある。しかし、基本的は攻撃性の非常に低い生物であると言える。

 また、疑心暗鬼は感受性も豊かで、その多くが涙もろい。そして疑心暗鬼はそういった感動話を好む傾向にあるようだ。どのような感動話を好むかは個体によって趣向があるようで、観察対象の疑心暗鬼はハートウォーミング系の物語を特に好んでいるようだった。


 疑心暗鬼はその猜疑心と裏腹に非常に優しい。これは多くの疑心暗鬼が非常に弱く、攻撃性に乏しいためと思われる。

 例えば、疑心暗鬼はコンビニの店員が何かミスをしても笑顔で対応する。道を聞かれれば快く答え、電車やバスでは積極的に席を譲る。例外的に、席を譲る場合考え過ぎてしまうのかややもたつく事があるようだ。

 

 疑心暗鬼は他者を喜ばせる事を非常に好む。頼られれば一生懸命に応えようとするし、家に訪ねて行けば精一杯の御もてなしをしてくれる。この時にしっかりとお礼を告げ、ハッキリと喜んで見せれば、疑心暗鬼も非常にうれしそうな表情を見せてくれる事だろう。

 あるいは、この瞬間だけが、疑心暗鬼をその苦しみから解放してくれるのかもしれない。

 

 私はとある疑心暗鬼の観察からこのような結論を得た。

 疑心暗鬼は、自身の正体が見破られる事をひどく恐れているが、本心の部分では見破られる事を望んでいる。正確には、疑心暗鬼の自分を受け入れてもらえる事を切望している。


 最後に、疑心暗鬼の観察中に聞こえた印象的な呟きを紹介したい。

 「早く人間になりたいなぁ」

 

 

そして思ったほど膨らまなかった

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