表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

これで完結です。

 次の日、積もった雪を掻き分けながら、村人達が山の中に二人の捜索にやって来ました。


 そして、洞窟の中で抱き合ったまま死んでいる二人を見つけました。


 二人は、まるで眠っているかのように、微笑んで幸せそうな顔をしていました。


 父親は立ち尽くしたまま、呆然と二人を見つめていました。


 暫くしてその洞穴に、誰が作ったのか抱き合った男と女のお地蔵様が置かれていました。


 誰かが、二人の供養にと置いたのでしょう。


 前々から父親の薄情さに嫌気がさしていた優秀な小作人たちは、この事件をきっかけに去ってしまい作物が実らなくなり、たくさんの田畑も人手に渡ってしまって父親が死ぬ頃には、すっかり貧乏になってしまいました。


 父親は、その時になってお婆さんが言っていた『他人様を鏡に映る自分だと思い、敬って大切にしろ』というのは、自分がそういう気持ちを持っているからこそ、相手にもその気持ちが伝わり、自分も大切にしてもらえるのだという事を分かりました。


 父親は姉と弟に申し訳ないことをしたと心底悔やみながら死んでいきました。


 やがて、姉弟のことも、忘れられてしまった頃、姉弟と同じ様に家を出てきた二人が、洞穴にやって来ました。


「ふぅ…やれやれ。ここで一休みしていこうか?」


「あい。あれ?お前さん、こんな所に変わったお地蔵様が……」


「ん、どれどれ?ほんに、お地蔵様が抱き合おうておるな。これも何かのお導きかも知れん。わしらの事をお願いしておこうかの。お前も一緒に拝むだ」


「あい」


 二人は、どうか添い遂げられるようにと、祈りました。


 すると、お地蔵様が光りだし、まるで生きている様に見えました。


 その時、洞窟の外で声がしました。


「おぉぉぉい……やっぱりここにおったか。」


「あ、叔父さん。何でここが分かっただ?」


「なんじゃい、おまいら知らんかったか。ここはな、昔から親に反対された好いた者同士が願掛けに来るところぞ。お地蔵様は光ったじゃろ?どうじゃ」


「叔父さん、なぜそれを?」


「光ったら添い遂げられる。光らなんだら添い遂げられん。そういうことじゃよ。わしゃ、おまいらの父親から言付かったんじゃ。一緒になってもええとな。」


「それはほんまかえ?」


「あぁ。じゃから、わしと一緒に帰っとうせや」


 二人は帰り、末永く仲の良い夫婦で暮らしました。


 それからもそのお地蔵様には、親に反対された二人が願いを掛けにやってきていましたが、いつの頃からかお地蔵様はいなくなっていました。


 お地蔵様の由来を知っている人達は、二人はきっと仏様から言い付かった仕事を終えて、仲良く極楽で暮らしているのじゃろう、と話し合いました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ