表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

季節イベント、短編しりーず。

クリスマスには特別な何かを

作者: カタタン

クリスマスに一日遅れました・・・

幸せは、いつもどこかに。







「ふーふふんふーん♪」

 私は今、気分がいいのです!

 なんたって今日はクリスマスイヴなんですよ?

 みんなで集まって、チキンを食べて、それでそれで、

 なんと、ケーキまで食べられるのです!

 誕生日の時以外にはまず食べられないあの素晴らしい食べ物が!

 私はこの日のために生きてきたといっても過言ではありません!


 と、思っていたのですが・・・




「ごめんね、今日は仕事が入っちゃって。夜はお兄ちゃんと二人で食べてね。」


 朝ごはんのとき、お母さんにそう言われたのです。

 ショックです・・・

 せっかく家族みんなで食べられると思ったのに・・・

 そしたら兄まで、

「俺?今夜は彼女とデートあるから。お前と違うから。」

 と言ってきたのです!

 ひどいです、こんな兄だったなんて!

 というのはジョークですが。兄らしいです、仕方ないです。

 でも、本当は兄がいてくれたら、少しはましだったのに。

 むぅ。

 というか、何が私と違うのでしょう。わかりません。




 午前中はぼーっとして過ごして、午後になりました。

 私は何もすることがないので、街に出かけることにしました。



 いつも歩いている道をゆっくりと歩いていきます。

 今日はぴっかぴかの太陽が、空に浮かんでいます。

 私は嬉しくて、マフラーのはしっこをくるくる回します。

 サンタクロースも雪が降っていないから、きっと笑顔になっていると思います。

「りーちゃん、メリクリー。」

 あ、友達の冬奈(とうな)ちゃんです。

「とーちゃん、メリークリースマース!」

「いつまでその呼び方するの・・・」

「いーじゃん、ほんとにお父さんみたいなんだから。」

 冬奈ちゃんは父親力がたかいんです。本当に頼りになります。

「で、なんでこんなとこにいるの。」

「暇だからです!」

「威張るな。私は買い物に来てたの。」

「私は暇だから来ました!」

「さっき聞いたから。それならあんたも来る?」

 おお。

「誘ってくれるとは珍しいですねぇ。」

「うるさい。で、くるの、来ないの。」

 冬奈ちゃんが来てほしそうにしてるので、ついていくことにしました。



 冬奈ちゃんが行こうとしているのは、ケーキ屋さんというお店でした。

 そこに、ケーキを買いに行くそうです。

 ケーキだけのお店、どういうお店なんでしょうか。わくわく!

 というか、もしかして・・・

「とーちゃん、実は大食い?」

「なんでそうなった?」

「だって、ケーキを一人で食べるんだよ。」

 あんな大きい食べ物を一人で食べるなんて驚きです。

「あー、何となくわかった。」

 ?

「まあ、中に入れば分かるって。」

 何が分かるのでしょうか。冬奈ちゃんの大食いぐあいでしょうか。



 冬奈ちゃんと一緒にケーキ屋に入ります。

 すると、そこにはとても魅力的な世界が広がっていたのです!

 あたり一面、ケーキ、ケーキ、ケーキ!

 こんな光景、見たことがありません!

「すごい、すごいよ!冬奈ちゃん!ケーキがこんなにいっぱい!」

「ちょっと、恥ずかしいから静かにしてよ。・・というか今冬奈って言わなかった?」

「早く見に行こう、とーちゃん!」

「ねぇ、なんで戻したの?て、ちょっ、引っ張らなくていいから!」



「知らなかった。ケーキって小さいのもあるんだね。」

「なんで知らなかったんだか。まあ、折角来たんだから買っていったら。」

 透明な棚に並んでいるケーキ達は、皆がきらきらしています。

 ショートケーキ、チョコレートケーキ、モンブラン、スフレ、

 小さなケーキ達もあれば、大きいケーキもあって、どれも美味しそうです。

「ケーキだけじゃなくて、色んなお菓子も売ってるからね。」

 ケーキ以外?クッキーとかチョコレートとか、ふがしとかもあるんですか!

「まるで駄菓子屋さんのお兄さんみたい!」

「あ、ふがしは置いてないと思うよ。」

 がっかりです・・・


「これと、これと、これと、これください。」

 冬奈ちゃんは、ニコニコ顔のお姉さんに次々とケーキを頼んでいきます。

「やっぱり大食いじゃない。」

「違う。家族の分も入ってる。」

 なるほど。流石冬奈ちゃんです。

「でも、一つ多い気がするよ。」

 冬奈ちゃんは三人家族です。

「うるさい。りーちゃんも買ってけば。」

 私、ですか?確かに、今持ってるお金だと充分買えるお値段です。二つもケーキを買えます。

「ど、れ、に、し、よ、う、か、な、」

「普通に選んだら?」

「だって、どれも美味しそうなんだよ!」

 むー。なかなか決まりません。

 その時、あることを思い付きました。名案です!

「これと、これください!」

 早速、さっきからずっと笑顔なお姉さんにケーキを頼みました。



 ケーキ屋の帰り道。

「りーちゃん、それでいいの?」

「いーの!もう決めたことなの!」

「ま、いいんじゃない。じゃ、またね。」

「よいお年をー!」

「早くない?」

「明後日の約束忘れないでね!」

「いや、やっぱり早くない?」

「なにが?」

「いや、だいじょーぶ。忘れないよ。」

「わかった、またねー!」

「またね。」




 家に着いたら、早速行動です!

 ケーキは冷蔵庫に入れて、自分の机にダッシュ!

 確か、机の中の、奥の方に、・・・




 これをダイニングのテーブルの上に置いて、

 準備かんりょーです!

 これで二人が帰ってきたら、ふふふ。

 二人が帰ってくるのが楽しみです!





 夜ご飯もとっくに食べ終えて、もう夜遅くです。

 二人はまだ帰って来ません。

「仕事、まだ終わらないのかな・・・」

「兄はいつ帰ってくるのかな・・・」

 クリスマスなのに、悲しい気分になってしまっています。

 かちっ、という音が聴こえて、時計を見ました。

 11の所に、短い針が止まっていました。

 急に眠気が襲ってきます。

 ふらふらと歩きながら、用意しておいた布団に入りました。

 そのまま、ぼーっとして・・・




 ここはどこでしょう。よくわかりませんでした。

 見たことがない部屋に、私はいました。

 目の前にお母さんとお兄ちゃんがいます。

「えっ。」

 驚いて声が出ました。やっと帰ってきたのでしょうか。

「どうしたの。パーティーの準備、出来てるわよ。」

 お母さんが優しげな声で言いました。

「早くこいよ。パーティーするんだろ。」

 兄が、優しげな顔でそう言いました。

 二人に手をひかれて、よろけながら歩きます。

 そこには、ごちそうがありました。

 大きなチキン、大きなケーキ、他にも美味しそうな食べ物がいっぱいテーブルの上にのっていました。

「りいちゃん、あなたの為にこんなに買って来たからね。」

「俺も、りいの為に服を買って来たぞ。」

 兄が、私に包みを渡してきました。

 そこには、私が前から欲しがっていた、ワンピースが入っていました。

「さあ、りいちゃん、一緒に食べましょう。」

「りい、早速着てみてくれよ。絶対似合うって。」

 二人は、笑顔でこちらを見てきます。


 違う。


 違う。


「違う!」


「一人で私達を育てるために、クリスマスまで働いてるお母さんは、こんなことしない!」


「彼女の為に必死になってバイトしたりしている兄が、そんなことをする余裕なんてない!」



「そんな、今日は特別なのよ。」

「俺が彼女だけの為にしたとは限らないだろ。」



「二人はそんなこと言わない!そんな顔はしない!」


 二人の、気味の悪い笑顔に向けて、はっきりと言いました。


「あなたたち、誰!」



 ぱきっ。


 ぱりん。



 世界が、砕けました。

 一瞬で、砂のように流れて、飛んでいきます。

 そして、何も見えなくなりました。



 私は気付きました。

 これは、サンタクロースが私にくれた夢だったのです。

 朝の私の想いに、応えてくれたのです。

 でも、それはあくまで夢、でした。

「ありがとう、サンタクロース。でも、私は大丈夫。他のこどもの所に行ってあげて。」


 私の後ろで、誰かが笑った、そんな気がしました。





「ん・・・」

 朝、です。

 不思議な夢を見た気がします。どんな夢だったのかははっきりと思い出せません。

 幸せな、夢だったようにも思えます。

 考えてもどうにもならないので、布団から出ることにしました。


 かさっ。


 聞き慣れない音がしました。

 手元を見ると、小さな包みが二つ、置いてありました。

 もしかして・・・

 一つ目を開くと、かわいいポーチが入っていました。私の好きな色です。

 二つ目を開くと、ふがしが何個か入っていました。

 しかも、それぞれに手紙がついていました。

 私はそれらを読みます。



 ダダダ・・・バン!

「お母さん、兄、おはよう!」

 居間の扉を開けて、大声で言いました。

「あら、おはよう、りいちゃん。」

 お母さんは朝ごはんの準備をしながら、優しい声で言いました。

「朝からうるせえな。」

 兄はいつも通りです。

 私は、ありったけの気持ちを込めて、言います。





「メリークリースマース!そして、ありがとう!」











最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ