1章 ちょっとした出会い
短い…でもこれが精一杯なんです
「言ってしまうのかい?」
ラーナ様は柄にもなく寂しいそうな声で言った
「…すいません師匠、恩返しが出来ないのは俺だって心苦しいです。でも俺は旅がしたいんです。色々な世界が見てみたいんです。」
「分かっているよ、そのために君を鍛えたのだからね。まぁあまり強いとはいえないけど、そこそこの強さにはなったよ彼方君は。」
「…今までありがとうございました。」
「…餞別だ、持っていくといい」
「これは…?」
ラーナ様から渡されたのは黒い外套だった
「試しに手を突っ込んでみてくれ」
(手が入った!?…それにこの感触…)
「もしかして…」
「そう、刀だ。私が一番弟子の旅立ちに相応しいようにと、丹精込めて造った餞別兼試験合格祝だ受け取ってくれ。」
「ありがとうございます!」
「刀の使い方もまだまだだから自主訓練を怠るなよ?あとその刀は刃毀れしないから存分に振るって構わないよ。切れ味に関しては君の力量次第だ。」
(刃毀れしないって…なんでもありだな)
「分かりました。大切にしながら使います」
俺は外套を装備する
「似合ってるじゃないか…。最後に…旅を楽しめよ?」
「はい!」
そうして俺は自らの意思で出現させた扉の向こう側へと旅立った。
「まったく…寂しくなるな…でも…」
ーーーーーーーーーーーーーー
唐突だが俺は空から落ちている
別にそれだけだったらまだ良かった
「なんでそんなにでかいんだよおおおおおおおおおお!」
問題はその世界の住民だ
やたらでかい大体30mはあるだろうか、デカすぎである。さらに全身真っ白、この時点でかなりの気持ち悪さだがさらにキモイことにみんな目が死んでる。光が指していない
「嫌だあああああ!うわあああああ」
師匠への気持ちのいい返事はどうしたのか、いやそんなことより次の世界への扉を作ることが重要だ
「ゲートおおおおおお!オープンんんん!」
扉が出現する
「次はまともな世界でよろしくお願いしま
ああああああす!」
ーーーーーーーーーーーーーー
唐突だが俺は空から落ちている
のにも関わらず穏やかな気持ちに包まれていた。
なぜなら見渡す限りだと立派な城があったり、学園のようなものがあったり
紛争地域だってあるからだ。向こうの方は海がありそうだ、さっきの頭のおかしい世界に比べたらどうってことは無い
(あぁ…テンプレ異世界にこれたぜ…)
しかし、安堵してばかりではいられない
まだ高度があるので落下地点が分からないのだ。
街のど真ん中は論外、あえなく御用となる運命が見える。街の近くも論外、調査が入ってやっぱり御用となる運命だ。
となると落下するポイントはこうだ
1、街から離れた場所
2、発展していない村の近く
3、何の人気のない森
他にもあるんだろうが、ざっとこんなものだろうか
1を考えてみだが結局調査されそうだ
ただタイムラグがあるだろうから……
結局考えがまとまらない。かなりの高度だったのだがそろそろ決めないとまずい頃だろう…
(ん…あれは…?湯気…?山…)
ここで俺はなぜかこう考えた
(もしかして、温泉か!旅…温泉いい響きじゃないか!)
というわけで
4温泉に突っ込む
が選択された。そうと決まればすぐさま実行だ。足元に気を纏わせる
その気をそのまま爆発させる…爆発させるというよりは勢いよく霧散させると言った方がいいか
「温泉っだああああああいいいいいいぶううううう!」
この時の俺は馬鹿だった俺は当たり前な可能性を二つ失念させた。
旅と音泉という響きにテンションが上がり、何も考えず突っ込んだのだ
ひとつは
ばっっっざあああん!!
「がっ」
勢いが強すぎて温泉は飛び散り床に埋まった
もうひとつは
「きゃっ…」
「いったた…へ?」
温泉に入っている人がいるということだった。
「あ。」
「変ったああああああああい!」
美しい脚、艶やかな長い髪、麗しい黒髪
「美人だ…」
「ッッッ!ッ何見てんのよおおおお!!喰らいなさいッッッ!」
女の子が手をかざすといくつもの魔法陣が浮かび上がり巨大な火の槍が俺に殺到してくる
(これが魔法かあ。)
そんな場違いな感想とともに俺は燃えた
理外者だから死ななかったけどね