5話 レボリューション
「分かった。ちょうど良かったなーー」
ルイは楽にしていいと言われたので楽にする。ルーファスのこの言葉は社交辞令などではなく本心だと感じたためだ。
「ちょうど良かったとは?」
ルーファスは少々引っ掛かったようだ。
「あぁ、俺も革命を起こそうとしていたんだ」
両者の目的は同じだ。ただ本当の敵が違うだけ……ルイは国民全て、ルーファスは政治に携わっている者、目的はたしかに同じだが真の敵は違う。はたしてこの両者はそれを分かり合っているのかーー
ルイとルーファスは軽く雑談した後に、広い中庭に移動した。これは「私に力を見せて欲しい」と言われた為だ。
「やっほー!貴方がルイ?」
そこで模擬戦の相手になったのはロリだった。いや、ミストと同じくらいの身長で歳は10歳から11歳といったところかと、ルイはT.S.Fでパワーアップしている目で判断した。T.S.Fになり、さらにT.S.Fでによってブーストを掛ける。まるでループしているように見える。とんだ変態である。
「あぁ怪我するなよ、ちびっ子?」
ルイとしては純粋に心配したつもりだが、紳士さが足りなかったようだ。褐色銀髪のロリはぎゃーぎゃーとうるさい。
「なにー!言ったなぁ〜。ルーファス!良いよね!?」
ルーファスはニコっと笑うと許可を出した。今日一番の笑顔である。褐色ロリが盛大に喜び背負っていた鞄からグローブを取り出した。ボクシンググローブを金属製にして先っぽに爪を付けた物だ。それを右手に装着して構える。
「なっーー」
全身から危険信号が溢れ出す。あれはやばいと感じた瞬間後ろに飛び退く。その行動のお陰で鼻先数cmの空間に爪が走る。一瞬でも遅れればざっくりやられていた。
「やるじゃん!ならこれならどうかな?」
次は足元に攻撃がきた。今までにない程集中していたためなんとか致命傷は避けられたものの血が出ていた。ルイはここで魔法もあるこの世界という事からひとつの可能性に気付くが、確証に至って無いので保留する。
「あれは……あのルイがあんなに押されるなんて」
アリスは信じられないといった表情だ。隣にいるルーファスは真面目な顔になり、アリスの呟きに答える。
「アーティファクトだよ」
「アーティファクトですか?」
なんだそれはと顔に出ている。ルーファスは腕に着けている腕輪を見せる。
「これもアーティファクトなんだ。アーティファクトっていうのはね古代のアーレントに存在した道具だ。道具というより武器だね。今はロストテクノロジーとなって再現は出来ないんだけど、現在20のアーティファクトが残っている」
「そうなんですか……」
「国王陣営内に14個ものアーティファクトがあるから誰も逆らえないんだ。こちらに5個、あとの1個は不明だ。私はその1つに形を持たないアーティファクトがあると考えているのだが……」
と、ルーファスは意味深な言葉を並べアリスを見る。
「え、それってーー」
「まぁ私は君の事もかっている。共に来てもらえるか?」
アリスの言葉を遮り勧誘をする。まだ追求するような時ではないと考えて。
「はい、勿論です!」
「それはありがたい。っと、戦況が変わるよ」
ルーファスが指を指した先に、会話を始めた二人がいた。
「見破ったぞちびっ子。そのグローブにはなんらかの能力がある。俺は瞬間移動だと考えたが?」
褐色ロリは驚く事はするものの余裕の態度だ。
「だからなに?ばれた所で僕の優位は変わらないぞ!」
瞬間移動を使いルイの斜め後ろに接近してグローブを振りかぶる。だが、ルイはグローブに手を当てて受け流し蹴りをかます。
「うっ」
呻きながら蹲る。ルイはルーファスに視線を向け、「終わりか?」と聞く。
「うぐっ」
その瞬間グローブで思いきり殴られる。褐色ロリは視界に入っており、誰がやったのかと考える。そしてある事に気が付いた。あのグローブを右手にはめていた。それならば左もあるのでは? と。
「困るよルサ!僕が出なきゃいけないなんて」
「ごめんルカ、でもルイは強いよ」
現れたのは褐色ロリことルサとそっくりな褐色ロリであった。最初から戦闘をしていたのがルサ、今出てきたのがルカだ。
ルイは深呼吸をひとつし、ぺっと血を吐き出すと両手にナイフを構え深く腰を落とす。
「力の差を教えてやるーー」
ここからが本当の激戦が始まる。その様子をアリス、ルコール、マリ、そしてルーファスまでもが食い入るように見ていた。二人でコンビネーションを活かし隙の無い攻撃を仕掛けるルサとルカだが、それを完璧に捌いていくルーファス。
だがそのショーも終わりが訪れる。体力切れだ。ルサとルカは瞬間移動というアーティファクトの力だが、それを使っている。対してルイも限界が近いのだが、ぎりぎり保っている。ルカの肩にナイフが突き刺さる、ここが潮時と判断したのだろう、ルーファスが止めに入る。
「そこまで、両者ともお疲れ様。ゆっくり休むと良い」
翌日、ルイはある部屋に来るように言われる。
そこには顔を知っている者や初対面の者も合わせて八人がいた。そこにルイもとアリス、ルーファスを、含めれば十一人となる。
「よし、集まってるみたいだね。それじゃ自己紹介をよろしく」
ルーファスが切り出す。そして一番初めに席を立ったのは筋肉質のまっちょのおっさんだ。
「俺はベルフだ。そしてこの中の指揮を執る事になった。よろしく頼む」
「お兄さんはルコールだよぉ、よろしくねぇ」
このゆったりした話し方はルコールだ。
「ルーファス様のメイドをしておりますマリと申します。ちなみに私は皆さんに対してお世話など一切しませんのでご了承ください」
私はあくまでルーファス様のメイドですので、と付け加えて答えたのはマリだ。
「僕はルサ!よろしくね」
「僕はルカ!よろしくね」
似ているこの二人はルサルカだ。
「ミスト……」
名前だけの自己紹介は自己紹介と呼べるのかと、思う程短かかったのはミストだ。
「僕はラインハルトだ。未熟な身ながらよろしく頼む」
謙虚でイケメンなのはラインハルトというらしい。金の髪に赤い目をしている。その目は何かをずっと追いかけているようでーー
「私のことはベアトリスと呼んで下さい。よろしくお願いするわ」
茶色い長髪をポニーテールにしている。お姉さんキャラぽいのがベアトリスだ。
「私はアリスよ。よろしく」
金髪碧眼でまるで人形のような少女はアリスだ。
「は〜い、僕はルイです〜よろしく」
普通バージョンのルイだ。アリスを含め、戦闘していたルイを知っている者達はこの変化に少し戸惑う。が、戦闘になると切り替わるのだろうと納得する事にした。強い者の中にはそういう人種が少なからずいるのだ。
「はい、終わったみたいだね。それじゃぁ、なんとなく分かった人もいるみたいだけど集めた理由を言うね。
君達は少数精鋭のチームだ。依頼を与えるからそれを実行してほしい」
強い者達を集めたのだ。暗殺から他の貴族の説得、なんでも屋みたいなものだ。
このチームの名前はルーファスが名付けた。
その名は、アール、文字にしてRだ。
レボリューションのRなのだがなぜ英語が使われているのか、ルイはそこを見落としていた。
どうも!
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