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4話 魔法

「アーリースー、ま〜だ〜?」


「はぁはぁ、分からないわよ……」


「ーー」


二人はバテでいた。一人は能力を制限された少年、もう一人はか弱い(多分)女の子だ。既に太陽は頂上へと登り、下り始める時間だ。少年と少女の間には沈黙が流れている、極力体力を節約するためだろう。


そしてルイはぶつぶつと何か呟いていた。本当の力の状態に名前を付けていたのだ。事の発端は退屈なのと、名前があったほうがかっこいいからである。やっぱり無難に英語でつけるかなぁと悩んでいた。前日アリスにこの御飯デリシャスだね!と言ったところ通じなかったのである。そこからたとえ安易に名付けたとしても大丈夫だろうと考えたのだ。


「あれはーー」


「ルイ! ん……ここは、アストレア様の街だわ」


そこはアーレント王国の貴族、アストレア公爵領の街だ。つまるのところルイ達は初めから公爵領にいたのだ。


「さがれ!」


ルイはアリスを後ろに突き飛ばす。そのまま茂みから飛び出てきたナイフの腹を手の甲で弾く。


「止められちゃった……」


ナイフを持った小柄な少女が呟く。ルイは咄嗟に距離をとり襲撃者の事を観察する。少女は無表情、ルイも無表情、ある意味で似ている二人であった。

そろそも何故反応出来たのかというと、T.S.Fになったのだ。T.S.Fとはルイが先程考えていた与えられた力の名前である。the strongest forceの頭文字である。見事にそのままであり、ルイ自身が最強と思っている証拠だ。


「これならどうだ」


少女は手を振りかぶる。距離を考えれば十分に対応できると考えていた、そしてそれが仇とあった。ワンテンポ遅れて右腕に無数の切り傷が現れたのだ。それも出血が多く感覚が鈍い、神経も少しやられたようだ。いくらT.S.Fだろうが激痛が身体中を駆け巡る。


「うがっ!?」


何が起きた!? と言いたげだ。何故かは分からないがT.S.Fになっている時だけ感情が垣間見える。こちらの方が何倍も人間味があるというものだ。


「ふふ、私の勝ち。どちらにしろ私に殺されるくらいならいらないーー」


襲撃者は青い髪をした少女だった。ここにやって来たのはルイを勧誘する為であったが実力が無ければ必要ないと独断で考えた。

ふと少女の耳に声が入るーー


「いきなり襲ってきた、ギルティだ」


左手にナイフを持ち少女に向かって接近する。右腕が無くてもお前など簡単に殺せるぞと。


「くっ、これでもくらえ」


少女は軽く手を振る。少女が使っているのは魔法という技術だ。その中でも風魔法と呼ばれるものを得意としていた。そもそも魔法が疲れる人口自体少ないので、貴族くらいなのだ魔法が使えるというのは。


「魔法ってのは弱点もあるんだな」


今放った魔法はウィンドアローと呼ばれ、気体を矢のような形にして噴射する魔法だ。

ルイは走り出したと共に右腕を降り血を空中に撒いた。それによって魔法がどんなものかも解明した。ルイが出した答え、それは風を操る系といった物だ。そして飛び散った血が影響を受けた箇所、そこが小さかったため細長い棒の様な物か、その大きさの球状に空気を固めて飛ばしているのだと判断した。飛び散った血から魔法の軌道を読み、その軌道上にナイフを添える。


「うそーー」


青髪の少女が思わず呟く。何故なら!


「へぇ案外出来るもんだな」


切ったのだ! 気体の矢を!

そしてそのまま少女に蹴りを放つ。吹っ飛んでいき、木の幹にぶつかり ずさっと音を立てて落ちる。さらに近づき躊躇無くナイフを喉に突き刺す。


「そこまでで許してください」


メイド服を着た女がナイフをナイフで受け止める。ルイに近づき、ナイフを受け止めた。これだけでこのメイドが只者でない事が分かる。


「駄目だ。お前も敵か?」


ルイが牽制にナイフを投げつける。だがメイドはそれを軽く受け流して、対話を試みる。


「そうではありません。この少女も貴方の実力を試しただけです。どうか引いてはもらえませんか?」


「駄目だな。邪魔するのならーー」


拒絶の反応を示すと、これは困っといった顔でルイの斜め後ろを見る。


「いやぁ、お兄さん困っちゃうなぁ〜。人殺しは慣れてるけど罪もないこんな可愛い子はちょっと気がひけるんだよねぇ」


そこにはウォーターアローと呼ばれる青髪の少女との属性違いの魔法をアリスを囲む様に展開する男がいた。その数30ほど、逃げ場はもちろん無い。


「うん?良いんじゃない?そこのメイドさんは別としてお前は人殺した事ないだろ」


これには男もびっくり、男は温室育ちで子供の頃から魔法の修行しかしてこなかった為に人と触れる時間があまりなかった。故に、人を殺すという経験もなかった。


「これはお兄さん参ったなぁ、でもやるときはやるよ?」


目が本気だ、ルイはそう感じた。ルイはアリスに情というモノが芽生えたのかもしれない。そうでなければ、今のようになんとかしようなどと考えてはいないのだから。もっともこのこのにルイ自身は気付いていないのだが。


「ルコール、落ち着いてください、私達の目的は彼を引き入れる事です。失礼しました、私はルーファス様のメイドであるマリと申します。ルイさん、以後お見知りおきを」


マリの制止により魔法を解除する。


「お兄さんはルコールだよ。ルコール兄さんって呼んでいいぞ」


「先ほどは彼女が失礼をしました。私達は敵ではありません。ただ私達の主人に会ってもらいたいのです」


メイドのほうは21歳、ルコールは22歳だ。確かにこの中ではお兄さんと言えるだろう。それよりもこのメイドはルーファスのメイドだったようだ。二人の戦意が無くなったと感じたルイも戦意を消す。だが警戒は一応しておく。


「俺はルイだ」


「……アリス」


ルコールは呼び捨てである。とここでアリスが


「ルイ、治療するから手出して」


「はい」


素直に差し出すようだ。そこでメイドとお兄さんは度肝を抜かれたようだ。


「ちょちょちょい! え、お嬢さん回復魔法が使えるの!?」


「これは驚きました……」


傷がどんどん癒えていく。まぁそれでもこれだけの傷だ。完治は難しい。


「え?は、はい。そうですけど」


「ねぇマリさん? 回復魔法が使えるのってこの国に何人いるっけ?」


ルコールがマリに問う。それも何人いるかという聞き方は物凄く少ないようでーー


「4人ですね。ただルーファス様の陣営には0人です」


そう4人だ! それ程までに貴重なのだ。その4人のどれもが選ばれし血を持っている筈だ。


「失敗……利用価値大」


「あぁ、あの子の名前はミストさ。覚えといてあげてねぇ」


青髪の少女が目をさます。この少女もそこそこ鍛えられている筈だが、それを一撃で気絶される蹴りとはーー


治療も終わったところでマリが切り出す。


「それではそろそろ行きましょうか。ルーファス様の所へ」


あっ、ミストの事は貴方がお振りなさいとルコールに命令する。マリさんは以外と……げふんげふん何でも無い。



「着きましたよ」


大きな屋敷に辿り着いた。大きいけどスカイツリーの方が大きいなとルイが内心思う。道中ではルイよりもアリスの方が人気だった。それもそうだろう話しやすさが圧倒的に違う。ミトコンドリアと惑星くらいの違いだ。さらに能力的にもアリスの方が貴重だ。


「お二人はここでお待ちください」


アリスと共に出された紅茶と焼き菓子を少しつまんでいると扉が開いた。

ちなみにだがいまだにルイはT.S.Fモードだ。一旦解けそうになったのだが、巨乳で美人のマリさんを見ていて、なんだがムラムラしてきたのだ。メイドと主人がやる事といえば?と想像したせいだ。とんだむっつりすけべである。


「やぁ、遅くなってすまない。何分忙しい身でね。私がルーファス・アストレアだ」


ルイとアリスは咄嗟にソファから飛び上がる。相手は貴族だ。この世界ではそれが常識なのだ。


「私はルイと申します。この度はお招き頂き光栄でございます」


「アリスです! こ、こにょたびはっ! あっ……」


ルイの対応は完璧、対照的にアリスは緊張していた。ルイは元々違う世界の住人だ、貴族なんてものには関心が無かった。


「はは、プライベートだし かしこまらなくても良いよ。それでね、さっそくだけど今日来てもらったのは理由があるんだ」


口元をニヤっと曲げて嗤う。ルイは何となく予想できているみたいだがーー


「一緒に革命を起こす気は無いか」


アリスはオーバーヒートして気絶してしまう。


これが怪物同士の初の顔合わせであった。


どうも!


今までスルーしていたTwitterでも始めようかな……

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