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悲劇というべき結末

登場人物


本田佳那

主人公。平和主義者の両親に育てられた影響で、時代に合わず自身も平和主義者である。

自分の行動のせいで母親が死んでしまったことを後悔している。

自称ブラコン。


本田恭介

佳那の兄。佳那やローラと共に戦争のない世の中を目指している。


佳那の母

軍部によって殺されてしまった女性。


佳那の父

自分が働きたくないからと、自分の息子を戦場に向かわせる、佳那曰く『クソ親父』。死亡。


平野慶太

佳那の親友。どうやら、佳那に好意を寄せているようだ。第二のマンハッタン計画にどうやら関わってるらしい。佳那に会った時、何故か逃げるようにして去っていった。


ローラ

色々と謎の多い人物。恭介や佳那と共に、戦争のない世の中を目指している。

恭介が好きっぽい。


アンドリュー

ローラ専属の執事。日本語もわかるらしいが、うまく話せないからと、いつも〇〇語で話す。



用語


第二のマンハッタン計画

昔のアメリカが行った原爆計画の名前に因んで付けられた、原爆計画のこと。

〇〇国も日本もこの計画を立てていて、いつ核戦争が起こるか国際的に心配されている。


第三次世界大戦

資本主義陣営の国に社会主義陣営の国が原爆投下したことで始まった戦争。

〇〇国と日本が戦争し始めた後に始まったそうだ。

「さあ、行くヨ」


ローラの声が聞こえた。


「うん」


「《はい》」


「ああ」


私とアンドリュー、お兄ちゃんは短く返事をした。


「こっちだヨ」


私達の住処となってた場所の、落ち葉が溜まってる所にやってきた私達は、まず落ち葉をどかし始めた。


「ここに穴が…?」


「シッ。敵がいるかもしれないから静かにネ」


辺りはまだ日も出ていないから真っ暗で、誰かがいるようには思えなかったけれども、いつどこから誰が現れるか予想がつかない。下手な行動はやめたほうがいい。


ローラが言ってた通り、落ち葉の下には人が一人やっと通れるくらいの穴が空いていた。


そこに、ローラ、私、お兄ちゃん、アンドリューという順番で入っていく。


ここの穴を抜けたらどこに出るんだろう?


後ろを振り返ると、心配はいらないと、お兄ちゃんは目で私に言ったように感じた。


「着いたヨ」


十数分すると、そんなローラの囁きが聞こえた。


穴からでも感じる、土の温もり。


上に大きな生物がいるのは、私でもわかった。


「…それで、どうやって出ればいいんだ?」


お兄ちゃんは小さく呟いた。


「ここの上には大量の家畜がいるんだヨ。


静かにしてないと、バレるかもしれなイ」


既に多分家畜は私達に気付いてるヨ、とローラは付け加えた。


ローラがここまで穴を掘った理由は何となくわかった。


まさか侵入者が、家畜部屋からやってくるとは思わないだろうから。


「…じゃあ、できるだけそっと、出よう」


私はそう言った。


そうだネ、とローラは同意し、目の前にある土を手で退かした。


すると、そこはちょうど家畜の上ではなく、ただの地面だったようで、静かにローラは地上に出た。


「みんな、早ク!」


その言葉に、私はすぐに穴から出た。


出た瞬間に目の前に現れたのは、


羊、だった。


…?


なんか、引っかかる気がした。


何故、羊をここで飼ってるの?


日本では羊を食べる習慣はあまりない。


牛じゃなくて、ニワトリじゃなくて、豚じゃなくて、


何で敢えて、羊?


それに、他の動物じゃなくて羊というのもなんか妙に引っかかる。


何でだろう…?


「佳那ちゃん…退いてもらえるかい?」


お兄ちゃんのその言葉に、私は我に返って「ごめん」とだけ言って穴のある場所から離れた。


それから暫くしてアンドリューが出て、それから穴を塞いだ。


ここから研究所の人が追跡してこないようにという配慮だった。


帰りはここを使わない、そんな計画だったからこそそんなことはできたんだと思うが。


「…じゃあ、みんな集まっテ」


ローラの言葉で、私達はローラの元に集まる。


羊達は私達侵入者を訝しがりながらも、それより寝ていたいとでもいうかのように、ぐっすりと寝始めた。


「今からは二手チームに分かれるヨ。


まず私とキョースケが裏口から侵入すル。


キョースケの話だと、裏口には門番がいて、その門番の指紋が裏口の鍵になっているらしイ。


その門番を私とキョースケが倒しテ、鍵を開けル。


開けたところをカナとアンディが侵入。


…いいナ?」


ひとつ言わせてもらいたいのは、この組み合わせってただ戦力的バランスとかじゃなくて、ただ単にローラがお兄ちゃんと組みたいだけじゃないかと思えてくるけど、それは流石に考えすぎかもしれない。


「そしてその後にカナ達は隠れられるところで息をひそめて待機。


そのうちに私とキョースケで研究所内の敵を倒ス。


私達が敵を倒して安全だと思ったらカナが作ってくれたバイブ装置で連絡するからその度にカナ達は上の階に行ク。


そしてマンハッタン計画絡みの資料を全て奪って廊下で待機。


…その後はカナ、前に言った通りにやってくれるんだナ?」


私はコクッと頷いた。


この島に着いて、研究とか武器製作を始めるにあたってローラと色々話し合った。


まず、無線での言葉による連絡は危ないということ。


その点バイブが鳴るだけなら相手はどうしようもない。


そして、ただ資料を奪ったところで何にもならないから、その後の処理をする、


それが、私の役目だ。


簡単に言ってしまえば、みんなを逃した後に私だけが残ってコンピュータにウイルスを植え付けるだけだ。


コンピュータウイルスは、学校でつくり方を習った。


だから大丈夫なはずだ。


「おっと…もう時間だネ。


カナ達はいつでも出れるように待機してテ」


「了解」


ローラとお兄ちゃんは裏口に向かって走り出した。


残されたのは私とアンドリューだ。


「《…アンドリュー》」


「《何ですか佳那様》」


「《大丈夫かな、二人は…》」


アンドリューはニコッと笑った。


「《お嬢様と恭介様ならきっと大丈夫です。


あのお二人を前から見てますけど、随分と頼りになりますよ》」


綺麗な◯◯語だ。


でも多分、この人は◯◯国の人じゃない。


「《ねえ、アンドリューって…》」


私が言葉を言い終わらないうちに、ポケットが震えた。


「え、もう決着ついたの…」


つい日本語でそう言うと、アンドリューは、


でしょう?とでも言うように私の顔を見た。


「《さあ、行きますよ?》」


…さっきの話がうやむやになった気がするけど、まあ、いいか。


「《…そうですね、行きましょう》」


そうして、私はアンドリューと家畜部屋を出た。



………………………………………


「お、カナとアンディ。


遅いゾ」


「いやいや、ローラ達は逆に早すぎだから」


「そんなこと言ってないで、侵入するぞ」


お兄ちゃんの言葉を聞いて、私達は早速研究所の中に入った。


「ほら、カナ、早く隠れナ」


「すいません…」


私の動きが遅くて、ローラはどう見てもイライラしてる。


私とアンドリューはまず、裏口近くの柱の陰に隠れた。


しばらくすると、ひっそりとした廊下に、足音が5つ。


ローラとお兄ちゃんはまだ動いてないから、敵が5人なのだとすぐにわかる。


どうみたって私たちの方が不利だ。


なのに、お兄ちゃんとローラは平然と闘い、


見事やってのけたのだ。


私とアンドリューのバイブが鳴った。


…行こう。


そういう目線をアンドリューは私に向け、また2階へと向かった。


今度目の前に現れたのは、いかつそうなおっさん。


__お兄ちゃん達!私達が通る道を安全にしてから呼んだんじゃないの!?


…でも、そのおっさんは襲ってはこなかった。


代わりに、ものすごい音を立てて倒れた。


「《お嬢様、ちゃんと相手が地面に倒れてからお呼びくださいよ》」


隣のアンドリューはそう呟いた。


そうこうしているうちに隠れて待っていると、またすぐにバイブが鳴る。


「…これ、異常じゃないの?」


「《いえ、当たり前なことです。


慣れてくださいね》」


…嘘でしょ。


こんなにお兄ちゃんは化け物じみてるはずがないから(まあある程度優れていることは認める)、多分すごいのはローラの方なんだろう。


本当に、ローラは何者なんだろう。


わけわからないところに知り合いは多いし、言語には長けてる気がするし、運動神経も異常に高いし、…多分、研究費を簡単に出せる程の金持ちだし。


よくわからない人だ。


そんな時、3階に上がって間もないのにさらに新たなバイブのサインが。


…考えてるだけでも頭が痛くなりそうだ。


気のせいということにしておこう。


そして順調に上の階へと進み、


…遂に、いかにも重要書類がたくさんありそうな部屋の扉の前にまで来た。


「…多分ここ、だよね」


「ここは最上階だしナ。


多分ここで合ってるヨ」


倒すべき敵を全て倒し尽くしたローラとお兄ちゃんは私達に合流して、今からの行動の作戦を立てる。


「いいカ、被害は最小限ニ。


まずはここの鍵を見つけないとどうしようもないんだけどネ」


そう、目的の部屋らしい場所には鍵がかかっていた。


一筋縄には行かせてくれないらしい。


…とその時、その部屋の扉が開いた。


…ヤバい、人が来た!


私達_、いやせめて私は内心バクバクで出てきた人のシルエットを見る。


その部屋から漏れてくる光が結構強いから、少し離れたところで息を潜めていた私達にもはっきりとその姿が見える。


一人は若者風の長身の男…ってところだろうか。


もう一人はデブいおっさんなのだろう。


いかにも人にブヒブヒ言いながら命令する、上司によくいそうなタイプだと推測できる。


「…で、…だからな。


………お前に任せたぞ」


豚の方だと思われる声が聞こえてきた。


何を言ってるのかはあまりわからなかったけれども、取り敢えず豚は勝手に一人で帰って、後の処理__多分私達を捕まえるもしくは殺すことを若者っぽい人に全て任せた、ということなのだろう。


つまり、私たちの存在は向こうにばれてる、ということになる。


「…どうする?」


「待ってても仕方ないネ。あのおっさんが完全にいなくなってから突撃だヨ」


私の小さな声に反応したローラは、はっきりとそう言った。


そして、豚は闇の中に完全に消えた。


「…行くヨ」


ローラの掛け声とともに、今もなお開いている、目的地の扉の前に向かって走り出した。


ローラやお兄ちゃんの突撃に驚いたその若者は、勢いで銃のようなものを私達に向けた。


………そして、その若者と目があった。


…え。


その顔は。


「平野…?」


この声はお兄ちゃんにまでは届かなかったけれども、私の異常な様子を見て、何かを悟ったのだろう。


「佳那ちゃん、どうした!?」


「キョースケ!!!!」


ちょうどその時、ローラはお兄ちゃんを押し倒した。


その瞬間、パァァン!という音が鳴り響く。


…そうだ、平野は銃でお兄ちゃんを撃とうとしたのだ。


でも、ローラの機転で誰にも怪我はなかった。


「カナとアンディ!!!


中に入って資料を取ってきテ!!」


ローラの叫び声にハッとなった私とアンドリューは、そのまま部屋の中に入った。


部屋の中は、思った通り明るくて、目が眩みそうだった。


でも、そんな中頑張ってアンドリューと二人で探す。


そして、遂に見つけた。


「これだ…!」


紙の束が置いてあり、表紙には「秘」と書いてあった。


そして、その隣にあったパソコンをいじる。


USBメモリが差してあって、多分これが原本なんだろう。


そのUSBを抜き、パソコンを漁り、コンピュータウイルスを植え付ける。


…それだけでもいけないなと思った私は、そのまま近くにあったハンマーで画面を叩き割り、


他の部分も粉々になるまで割った。


…本当に良かったことは、このパソコンがかなり古い形であることだ。


古いのを使う意図としては、情報が他の人にばらまかれないようにするためなんだと思う。


最近のやつは秘密で何かを作ることはできないように、監視システムがついている。


つまり、いろんな人に知られてしまうのだ。


昔のパソコンにはそんな機能は付いていないから、それを利用しているに違いない。


「《佳那様、そろそろ》」


「《…そうね》」


久しぶりに、◯◯語で返事をしてみた。


そしてそのままUSBをアンドリューに渡す。


「これも持ってて。紙の束の方も持ってるよね?」


「《はい。では、行きますよ》」


私たちは早々と部屋を出た。


出ると、そこには交戦中のお兄ちゃん、ローラと平野。


平野は躊躇することなく2人を狙う。


ローラは割と躊躇っているけれど、お兄ちゃんは躊躇いがなかった。


見ると、お兄ちゃんとローラの武器は私が作ったものだった。


…あれは、脳に当たらない限り死ぬことがない…


でも、お兄ちゃんは平野の頭を狙ってた、いや、狙ってるように見えた。


「〜っ!お兄ちゃん!!!」


平野を、撃たないで!!!!


私はお兄ちゃんを止めるように抱きついた。


その拍子に、お兄ちゃんの持ってた武器の引き金が引かれ、


ピュン、という音とともに平野に向かって弾が飛んで行った。


そして__


バタン、と大きな音を立てて、平野は倒れた。


血が、溢れ出た。


「い…や……」


血が出るなんて、


頭に当たった時にしか起こらない。


「ひ…らの…?」


私はフラフラしながら、平野に向かって歩く。


「カナ!!!どこ行くノ!?」


ローラの声なんて聞こえちゃいない。


「平野…目を覚まして…?」


私ね、平野と離れてすっごく後悔したんだよ。


2人で、逃げればよかったなって、何度思ったことか。


私には平野、貴方が必要なの。


「目を…覚ますよね?もちろん、そうだよね…?」


「佳那ちゃん!!!!!!」


大きな声でお兄ちゃんが言った時、ちょうど敵がたくさん現れて、


「〜っ、撤退だヨ!」


ローラはそう叫んで、予め取り決めていた流れで、屋上へと向かっていった。


お兄ちゃんもアンドリューも、私のことを一瞥してそのまま撤退していった。


私もそれについていくのが一番いいのはわかっていたけれど、


足が、動かなかった。


私の周りに敵が群がり、


私を拘束していくのを、他人事のように思いながら、


焦点が合わない視線で、目の前に現れたにやけた顔をしたキモいおっさんを見ながら、


そのまま意識を手放した。

次の更新は2/19 16時です

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