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作戦開始

登場人物


本田佳那

主人公。平和主義者の両親に育てられた影響で、時代に合わず自身も平和主義者である。

自分の行動のせいで母親が死んでしまったことを後悔している。


本田恭介

佳那の兄。佳那やローラと共に戦争のない世の中を目指している。


佳那の母

軍部によって殺されてしまった女性。


佳那の父

自分が働きたくないからと、自分の息子を戦場に向かわせる、佳那曰く『クソ親父』。消息不明。


平野慶太

佳那の親友。どうやら、佳那に好意を寄せているようだ。


ローラ

色々と謎の多い人物。恭介や佳那と共に、戦争のない世の中を目指している。


アンドリュー

ローラ専属の執事。日本語もわかるらしいが、うまく話せないからと、いつも〇〇語で話す。

私が告げた場所は、とても人が少ない島だった。


「…嘘だろ」


そこはだって、とお兄ちゃんは唖然とする。


人は住んでいないが、土地も大きくない、そんな場所。


「そこはありえないんじゃないカ?」


「ううん、ここだと思う。


…だって」


仕方がないと思う。私もありえないと思ったから。


…でも、間違いないと思う。


「平野が…」


「平野?」


お兄ちゃんの形相が変わる。


「それは友達か?」


「…うん。


私の唯一の友達。


…別れ方が最悪になっちゃったから、本当はもう一度会って話したいんだ」


お兄ちゃんは私の話から平野が女だと思ったのだろう、お兄ちゃんの表情が和らいだ。


「そうか。


…平和になってから、いつでも会えるじゃないか」


「でも戦争中だよ?いつ死んじゃうかなんてわからないよ?」


お兄ちゃんは黙ってしまった。


「…さっき話した通り、平野がそこにいる。


平野は何か言えないことがあったみたいな雰囲気があった。


多分、核爆弾計画なんだろうと思うんだ」


私にはそれだけじゃないようにも思えたけど。


「…確かに、あり得るな。


その平野とやらは、どこの部署にいたんだ?」


「軍事参謀部の開発課。


私のいた開発部科学課とは違って、直接的な攻撃を主流にした開発だから、核爆弾計画を立てるのはそこが一番自然」


「確かにな」


ローラは「行ってみる価値はありそうだナ」と頷いた。


「でも、どうやって行くの?」


「日本軍に化けるのサ」


いや、それが普通じゃないと思うんですが。


「無理よ。私はあまり知らないけど、機械課にあった技術は普通じゃない。探知できる能力なんてあるに決まってる」


「私の力をなめてもらったら困るネ」


ドヤ顔のローラは、アンドリューを呼び寄せ、どこかへ電話し始めた。


「ちょ、そんなことしたら電波察知されて…」


「あー、もしもシ?私だヨ。元気にしてタ?


お願いがあるんだよネ。そっちのシゴト先で使える飛行機あるよネ?


…うン、話が早いネ。


私たちと仲間が昔使ってたやつでいいヨ!


うン、ありがとウ!感謝してるヨ!」


わずか20秒で終わったその電話。


ローラはニコニコ顔で私たちを見た。


「安全な飛行機の手配ができたヨ!」


…ローラって、何者なんだろう。


「おー、そうか。なら明日にでもいけるな」


「そうだネ!明日にはここを去りたいから、準備しておいてネ!」


そしてお兄ちゃんは順応しすぎ。


「…わかった。私も準備する」


仕方がないから、釈然としないまでもローラの言われるがままにした。



………………………………………


「わぁ…!!」


ローラが手配した飛行機は、すごくカッコよかった。


「ねえねえお兄ちゃん!テレビがあるよ!」


「本当だね。見ていいんじゃない?」


「ローラ、いいの?」


「いいヨ。好きなだけ使えバ」


テレビを見るなんて、悪いが1年以上ぶりだ。


「今だったら何の番組やってるかな?」


「朝だから空襲注意情報とか、情勢ニュースとかやってるんじゃないか?」


「そうだネ。私も久しぶりに見るから新鮮だナ」


ポチッと、今時珍しくリモコンで操作して、テレビの電源をつける。


出てきた番組には、『訃報情報』と書かれていた。


「あ…」


大量の名前が立ち並び、誰が死んでるのか、とかそんなものを探す暇もないくらいだった。


「…今度、見てみるか?


今時珍しいスマホを俺持ってるからさ、訃報情報の一覧をそこから簡単に見えるぞ」


スマホなんて、私は持っていない。


スマホとか、かなり古い代物だ。でも、この時代には今時の位置情報特定とか、…非国民ワード感知機能とか、何もついていないスマホは重宝する。


本当は、所持すること自体もう違法になってしまっているのだが。


私達にはそんな狂った『法』とかはもう関係ないのだ。


「…見る。


あのクソ親父が死んでるか確認してやる」


「佳那ちゃん、言葉遣い」


「…お兄ちゃんだって思うでしょ?


クソ親父が募集兵隊に行けば問題なかったのに…」


「代わりにこうやって『戦争を止める』側につけた。


いいんだよ、今を受け止めないと」


お兄ちゃんはニコッと笑いかけた。


…私は、何も言えなかった。


「ほらほら、他の番組でも見ようか」


次に見た番組は、世界のニュースだった。


「…あ。」


どこかで見た顔だと思えば、〇〇国の軍の総長、


カン・ジョルジュだった。


この人の顔は戦争前にはよく見た。


今思うとメディアで悪いイメージを流すことで、カン・ジョルジュを憎悪の対象にしようとしてたんだろう。


「佳那ちゃん、スマホ持ってきたよ」


ちょうどそんな時、お兄ちゃんがやって来て、スマホを私に貸してくれた。


「ありがとう」


私は訃報の確認に勤しんだ。


遠くからニュースから「…カン・ジョルジュ氏は…………、御令嬢の…………….、見つけ次第…………」と微かに聞こえてきた。


気付けばもう正午になっていて、目的地までもうすぐだった。



………………………………………


「…何で」


何でこんなに無事に着陸できちゃうの!?!?


「ん?何もおかしくないヨ。


あれだネ、レーダー妨害装置と擬態を使えば普通に着けるヨ」


いやいや、おかしいから。


そっと、目的地の島に足を踏み入れる。


…平野がいる、場所。


平野のことを考えると、自然に思い出されるのは、


体温。


私ってもしかしたら変態なのかもしれない。


…何であの時、平野についていかなかったんだろう。


そんな答えは分かっているけど、ついそう思ってしまう。


平野と離れて一番に思ったことは、平野のことが思ってた以上に大切だということ。


平野に、会いたい。


「佳那ちゃん、どうしたの?」


「いや、何でもない。すぐ行くから」


…何考えてるんだ。


自分に喝を入れて、お兄ちゃんとローラについていった。





………………………………………



静かで真っ暗な廊下を歩く人の気配がした。


湿っぽい匂いがして、思わず顔が歪む。


「ほら、早く行け。


…いつも通り、ケンサするぞ」


「…はい」


逆らう気もないように、青年は中年の男についていく。


「…俺はこれからどうなるんですか」


青年は尋ねる。


「さあな。知ったことではない」


中年の男は冷たく言い放った。


青年は俯く。


「……」


青年は小さな声で何かを呟いたようだったが、


誰にも聞こえなかった。






………………………………………



「…え?ここで、半年も暮らすの?」


ローラとお兄ちゃんに森に連れられてきた私は、思わず口からそんな言葉が溢れた。


「そうだ。今入るとまずいらしい。


お前の友達の…平田?だっけか。その子の身の安全も気になるしな」


お兄ちゃん、平田じゃなくて平野だからね。


「ただ、ここは元々無人島ダ。私達が先住民というのは無理があル。だから、人の目につかないところに過ごさなくてはならなイ」


「…そうだね。」


ここを離れないのは、ここから飛行機でもう一度飛ぶのは危険だと判断してのことだろう。


「じゃあ、サバイバル生活の準備をしよう」


「お兄ちゃん、できるの?」


「昔、やっていたからな」


お兄ちゃんは上を向いた。


既に空は赤くなっていた。

次回の更新は1月22日16時です。

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