かわるよ
白川くんと教室に戻る。白川くんはやめた方がいいと言った。だけど、そんなの関係ないと言うと白川くんはそっかと少し不安そうに笑った。
教室の入り口の前に立つと丁度昼休みだったので先程の友達が駆け寄ってくる。
「葵っ!大丈夫?」
「優香……ごめん。心配かけたね。」
「まだ調子悪い?…無理しないでね。」
そこまで話して後ろにいた白川くんに気がつき睨みつける。
ここで気がつく。また私の勝手な行動で白川くんに嫌な思いをさせていると。
やっぱり別々に教室に帰るべきだった。
「優香……どうかした…?」
「あ、ううん。なんでもない。」
優香は嘘くさい笑みを浮かべながら私を教室の奥へ連れて行こうと手をひく。
「ひとつ、優香にちゃんと言わないといけないことがあるんだけど。」
「うん、なに?」
「私、さっき優香が言ってた通り白川くんと帰ってるよ。」
「やっぱり……なんで?」
「理由とかはないかな…一緒に帰りたいから帰ってる。コソコソするつもりはなかったんだけど…ごめんね。」
優香は腑に落ちないといった顔をしたが、気がつかないふりをして振り返る。
「…ありがとう……花谷さん…。」
白川くんは笑顔だった。それだけで良かったと思えた。
放課後、当たり前のように白川くんと帰ろうと席を立つ。
「お前ら、付き合ってんの?」
声をかけてきたのはクラスでもよく目立つ悠木くんだった。
「んー……別に付き合ってるとかじゃないよ…?ただ、家が近いから。」
「そっか。」
正直に答えると納得の表情で言った。
「今日も部活?がんばってね。」
「おう!」
悠木くんはにかっと笑って拳を胸に当てた。
この表情にやられる女子は少なくない。
悠木くんは明るくて、クラスのムードメーカーで、しかもバスケ部の時期エースと言われている。白川くんとは真反対の性格だ。
「じゃあ俺行くわ。葵、じゃーなー!奏多も!」
「うん。バイバイ」
悠木くんに手を振って別れる。そこでふと気がつく。
「白川くんと悠木くんって仲良いの?」
「へ?……うん。…まあ。」
「へーそうなんだ!」
なんだか少し意外だった。でもこれ以上は聞いて欲しくなさそうだった。
「まあいいや、帰ろっか。」
「うん。」
私たちはいつもの帰路につく。
これからは隠さずに帰ることができる。
「俺、今日思ったんだ。……変わるように努力するよ。」
「私に釣り合うためにーってやつ?」
「うん……いまのままじゃ、きっとまた花谷さんが、嫌な思いするからね。」
「ふふ、なにそれー私嫌な思いなんてしてないよ。」
「そう?……なら良かった…。でも、もう少しクラスの人たちと話せるようになるように頑張るよ。」
「うん。そうだね。そうなったら私も嬉しい。」
私が笑うと、彼も笑った。
それが、なにより幸せ。