かえろう
ぐるぐるしていた。頭の中で整理がつかず言葉の意味を考えるので精一杯だった。
なぜ、断られたのか。なぜ、なぜ、なぜ………。問いかけても答えは出ない。
「……それ…じゃ………俺、帰るね…。」
私の後ろを通って入り口へと歩き出す彼の手を気づいたら掴んでいた。
「…で……なに…が……っぅ…」
涙が溢れてきた。そしてやっと理解した。そうか、私、ショックだったんだ。
「やっぱり…友達が…あんな事言ったから……ぅぅ…わたし、の…こと…っう…嫌い……?」
視界が霞んで白川くんの表情ははっきり見えない。
「ちがっ……違うんだよ!……そうじゃなくて、俺と一緒に帰ってるのなんか誰かに見られたら……その…」
初めて聞いた大きな声に驚いて涙が引っ込む。
「白川くんは…迷惑?その、一緒に帰るの…。」
「そんな事はないよ……でもさ、やっぱ…その……やめておいたほうがいいと思う…。」
今度は嬉しくなって、笑った。今日の私は自分でもわかるほど表情がコロコロ変わる。
「じゃあ、帰ろう。」
「……あのさ、話し…聞いてた?」
「うん!」
外からなんと言われようと私は白川くんと帰りたい。その気持ちだけで十分なのだ。
「……わかった。…帰ろう…。」
観念したというように一つため息をついて白川くんはそういった。
「ところで…そろそろ……手離して…。」
そこで私はまだ白川くんの手を握っていたことを思い出した。
「わあ!!ご、ごめん!」
勢いよく手を離す。触れていた場所が熱い。
そしておそらく私の顔もりんごのように真っ赤だ。
恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、でも、嬉しい。
私は鞄を手に取ると少し先に歩いて行った白川くんの後を追った。