はじまり
ーその時は、本当に突然訪れた。
「最近のゴミ問題について、男女でペアを組んでもらって研究発表をしてもらう。ペアは…まあ、隣の席のやつでいいだろ。」
社会の先生である鈴木先生の無茶振りは今に始まったことではなく、たまにこういうようなことをする。とは言ってもいつもは研究レポートの提出や個人発表などで、このようにペアで研究発表することは初めてのような気がした。
動揺があってなのか、はたまたペアに不満があるのか教室は騒ついていた。私はチラリと隣の席を見る。丁度こちらを見ていたようで目があったが、ビクリと大きく肩を揺らし目を逸らされてしまった。その様子に私の不安は増幅してしまった。でも、その不安に負けじと隣に座る白川奏多くんに話しかける。
「白川くん、よろしくね。」
とびっきりの笑顔で話しかけるが、白川くんはビクリと大きく肩を揺らすと、一向にこちらの方を見ない。
「ぅ………ぁ…の……は…花谷…さん……よろしく…」
すごく小さな声で、でも私にははっきり聞こえた。それで十分だった。
「うん!」
白川くんはその後も俯いたままであったが、私にとっては返事が返ってきたことがなにより嬉しかった。そして、私の中にあった不安は少しだけかき消えた。
この人となら大丈夫という確信がこの時に生まれたのだ。
それがこの不思議な白川くんとの初めての会話だった。
白川くんは元々あまり人と関わるのが得意では無いらしく、一人でいる所をよく見る。
話しかけると大きく肩を揺らして口をパクパクとさせる。それは私限定というわけでは無く、誰にでもそうなのだ。
そのせいなのか、白川くんは少しクラスから孤立していた。
私はそんなこと気になど留めていなかったが、周りの友達は違った。可哀相、大丈夫?などと言われる度に腹が立ったが、言い返せるような勇気はなく、愛想笑をするだけだった。
そのことを申し訳なく思いチラリと白川くんを見ると、やはり俯いたままだった。
そんな白川くんに心の中でごめんねと謝ることしか出来なかった。
今度、機会があれば謝ろう。
よしっと心に誓い私は白川くんから視線をそらした。
ボチボチ、ゆっくり連載していけたらと思います。