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過去を探しに行こう。俺の未来は明るい

 回避しきれなかった。

 右の太腿に弾が掠り、痛みが走る。だけど、エミリーには当たってないはずだ。

 それにしても、銃を持っていたのか……!


「ちっ、大人しく倒れればいいのによ」

「何で攻撃するんです。取引は成立したでしょう!」


 痛みを(こら)えながら、扉を開けようとするも開かない。

 やられた。外からかんぬきか何かで塞がれている。どうすればいい。


「マグ、フルス、手はず通りにやれ」


 俺の言葉を無視して、リーダーらしき男が二人に指示をする。

 机の左右から、男達がナイフを持って迫ってくる。やるしかない。

 腰に装着してあるホルスターから、銃を素早く取り出し、撃鉄を引き、撃つ。

 ガラスの割れた音と共に光が消える。


「クソ、暗くて何も見えねえ」


 左側から声が聞こえる、フルスという男の声か。

 照明を撃ったせいで、室内は暗く、何も見えない。これで自警団の人も異常に気づいてくれるだろう。

 だが、この膠着した状況、長くはもたない。覚悟しろ、アンドリュー。


「やってくれるな。直接俺達を撃たねえで、灯りを消すか。だが、あんちゃん早計だったな」


 ゴソゴソという音が聞こえる。灯りになるものでも持っているのか。それとも、位置をしっかりと把握できているのか。

 どちらにしろ先手を取るしかない。覚悟を決めた瞬間――モゾモゾと左腕で抱えていたものが動く。

 このタイミングで起きちゃったのか。


「んんん……?」

 

 エミリーのうなり声が聞こえる。

 やることは変わらない。エミリーが状況を把握する前に終わらせてやる。  


閃光(ひかりよ)

 

 俺は唱えると同時に、右手で顔を軽く隠し、来たるべき光を軽減する準備をした。


「目が……!」


 自分の想像通りに、魔法が発動した。強い光を発する球状の形をしたものが1つ上の方からゆっくりと落ちてくる。

 この光を予想してなかった三人組は目を覆っている。

 俺はその間に三人組の場所を把握し、銃で撃つ。致命傷にならないことを祈りながら。

 三発の発砲音と共に、男達の痛みから来る声も三つ聞こえた。

 そして自分が銃を落とす音も。片腕だけで銃を撃ったせいで、右腕が震えて、言うことをきかない。

 光も消え、銃もない。打つ手は炎の魔法を使うか、もしくは、


「おい。どうした」


 音と明かりに釣られたのだろう。

 扉を開ける音が聞こえたと同時に、見張りをしていた男の声が聞こえる。

 期待通りだ。

 

「くらえ!」


「がっ……!」


 気合の声と共にウエストタウン名物のタックルをする。

 体重を乗せた攻撃が命中したおかげで、相手は壁の方によろめいている。逃げるなら今だ。




 小屋を出て、ロイドさん達が待っている方へ逃げる。太腿の痛み、右腕の違和感を無視して逃げる。

 反撃が来ないか確認するため、後ろを振り向こうか迷うが止める。

 体のバランスが安定してない状況で、後ろを振り向くのは危険だ。過去の経験がそうさせた。

 走っている途中エミリーがこちらを見たような気がするので、大丈夫だよと声を掛け、微笑んだ。


 もう丘を半分は降りただろうか、もう少しで合流出来るはずだ。そう思った時、小屋の方から大きな銃声が聞こえた。


「! あああっぐぅッ……」 


 歯を食いしばる。いたい。右肩が焼けるように痛い。おそらく見張りの男が立ち直り撃ったのだろう。結構距離はあるはずなのに。当たっちゃうなんて運が悪いな、おれ。

 強い痛みとは裏腹に呑気な考えが頭を通り過ぎる。右肩なのはラッキーだった。これならエミリーを抱きかかえられる。

 ぼんやりとした意識の中、丘を滑り落ちていく。


 背中に大きな衝撃が走る。木に引っかかったのだろうか。遠くからアンドリュー、エミリーと叫ぶ声が聞こえる。

 自分もそれに応え声を出す。ロイドさんに聞こえただろうか。ここですよー俺達。


「アンドリュー! エミリー!」


 声は無事に届いたようだ。

 聞き慣れた声と木の間から見慣れた顔がうっすら見え、俺は安心し、目を閉じた。



 

「ん……」


 ここはどこだ……ふかふかしてて、気持ちいい。

 というかどうして寝てるんだろう。


「アンドリュー! よかった~……起きたんだね」


 声につられて、目を開ける。

 そこには笑顔を浮かべているエミリーの顔があった。

 

「エミリー!? 起きて大丈夫なのか」

「もう~それは私の言うことだよ。アンドリューこそ大丈夫?」


 言われて体を動かしてみる。

 痛い。けど、なんとか動けそうだ。


「まだ痛いけど、なんとかなりそうかな」

「そっか。ならよかった! でもお医者さん驚いてたよ。怪我の治りが凄くいいって」

「ならよかった……そういえば冒険者やってた時も怪我の治りが良かったし、そういう星に生まれてるのかもな」

 

 事件のことがゆっくり思い出されてきた。

 気絶したから寝てたわけか。そういえば俺、


「どれくらい寝てた?」

「二日も寝てたんだよ。心配したんだから! アンドリューはもう」


 ちょっと怒った顔でエミリーが言う。

 そんなに寝てたのか、悪いことしたな。


「ごめん、ごめん。確かに寝すぎだ。もしかしてずっと看病してくれてた?」

「うん。私を助けてくれるために怪我したんだから、私がお世話しなきゃいけないよ。

 あっでもパパとかミドリちゃんが時々代わってくれたよ」


「そっか。苦労かけたな。ありがとう。エミリーのおかげで随分良くなったよ」


 アレスさんやミドリにもあとでお礼を言わないとな。

 なんか気が抜けてまた眠くなってきた……


「アンドリュー眠そうだね?」

「ああ、分かる?」

「だって大きなあくびしてるもん」


「そりゃ恥ずかしいところ見られた」

「何回も見てきたから、恥ずかしがる必要ないのに。寝ちゃいなよ」

「うん。そうさせてもらう。お休み……」

「私も一緒に寝ていい?」


 眠気が頭を支配してるせいで、声を出す気力がない。

 少しだけベットのスペースを空ける。これでわかってくれるだろう。


「ありがと。お休み」


 エミリーの声を聞きながら、俺はゆっくりと眠りについた。


「(アンドリューが起きたらロイドおじさんに教えなきゃいけないんだっけ…………今はいいよね)」

 



「俺がアンドリューを心配して見に行ったら、仲良く眠ってんだもんな。俺の心配を返してほしいぜ」


「なんかすみません」

「謝る必要ないのよ。アンドリューちゃん。こいつご飯を食べるついでに見に来ただけなんだから」

「ちげえよ! アンドリューを見るついでに飯を食いに来たんだ!」


 ロイドさんのことだし、ご飯を食べるついでなんだろうなぁ。仕事中の顔付きではなかったし。

 それにしてもお腹空いた。アレスさんが今病人食を作ってくれてるみたいだけど、チキンが食べたい……


「エミリーずるい」

「だってアンドリューが気持ちよさそうに寝ってたんだもん」


 休憩時間でお客さんがいない店内、ここだけは騒がしかった。

 自分を中間として左側のテーブルが大人達、右側は子供達と綺麗に分かれてる。

 両方とも騒がしいけど、なんだかいい気分だ。


「アンドリュー」

「ん?」


 話をぼけーっと聞いていたら、ミドリがジトっとした目で話しかけてきた。

 なんだろう。


「私とも寝て」


「え、ああそれぐらいなら――」

「ミドリちゃん大胆! 流石ママと私の子ね」


 いいよ、と言おうとした瞬間、ガースさんが割り込んできた。

 ロイドさんと話してたはずじゃ。


「ガースてめえが思ってることと、ミドリちゃんが言ってることは別だろうがよ!」

「あらー私大胆としか言ってないわよ。これだから独身は怖いわー」

「独身は関係ねえ!」


 ロイドさん、過敏に反応しすぎです。ガースさんも狙ってたような気がするけどさ。

 一方、エミリーとミドリはよくわかってなさそうだ。

 俺は少し考えてわかってしまった。これが大人になるってことなんだね……


「飯が出来たぞ。持っててくれ」


 厨房からアレスさんの声が聞こえる。待望のご飯の時間だ。




「あつッ、あつい! エミリー頬に粥がぶつかってる! 自分で食べられるから!」

「まだ治ったばかりなんだからだめだよ。はい、あーん」

「はあ……あーん。うーん久しぶりに食べるとおいしい」


「次はわたし。はい」

「ミドリもありがとう。美味しいよ」


 何回か熱々の粥を顔にぶつけられたけど、何とか食べ終わった。

 彼女達の優しさからくる行動だと思えば、この痛みも我慢できる。

 痛かったけど。怒ってないぞ、決して。

 

 そうだ、ロイドさんもいるんだし、今の内に聞いておかないと。


「そういえば、事件ってどうなりました?」

「自警団の本部で話そうと思ったが、まあこのメンツだしいいか」


 ロイドさんは一同を見回したあと、くれぐれも内密にな。と言った。


「小屋にいた三人は自警団で預かってる。連絡も入れたし首都の衛兵が、じきに来るだろ」

「怪我の具合はどうでしたか? あともう一人いたと思うんですけど」

 

 ロイドさんはニカッと笑いながら、


「殺さないように狙ってやったなら大したもんだ。三人共足や肩を怪我しただけで、軽いもんだ。お前のほうがよっぽど重傷だよ」


 殺さずに済んだようだ。如何に悪い人間でも死んでほしくはなかった。

 それに気になることがいくつかある。できれば直接聞きたいことが。

 考え込んでいると、ロイドさんは先程と違い苦い表情に変えていた。


「もう一人なんだが、逃がしちまってな。逃げたのは見張りの野郎だろ? 多分」

「はい。見張りのやつです。自分の肩を撃ったのも、まず間違いなく、そいつだと思います」

「けっ、仲間を置いて一人で逃げるとはな。いい根性してるぜ」


 わざわざ俺を撃ってから逃げたのは、自分のためか仲間を思っての仇討(あだう)ちか、どっちだったのだろう。


「見張りといえば……ドイン、金の方はどうだった」

「十万マニーほどなくなっていた」

「持てるだけもって逃げたってところか」


「そうだろうな。だが、エミリーも無事に帰ってきて、金も殆ど返ってきた。

 これもロイドとアンドリューのおかげだ。ありがとう」

「どういたしましてと言いたいところが、今回はアンドリューのお手柄だ。よくやった」

「元はといえば自分があっさりとやられたせいなのもありますし……でも解決して良かったです!」


「一人逃がしたし、完全な解決じゃないのが口惜しいけどな。

 アンドリュー動けるか? 自警団の本部で詳しく聞きたい」

「ええ、あそこぐらいの距離なら大丈夫だと思います」


 席を立とうとしたら何だか騒がしい。ガースさんとミドリが口論してるせいか。

 デートが、とか積極的に、とかどういう話をしてるんだ。あっミドリが皿を持って、構えた。フリスビーの要領でガースさん目掛けて投げた! 痛そうだなー。

 あの親子仲が良いんだか、悪いんだか。アレスさん親子とはまた違う感じだ。血の繋がりってのもあるんだろうか。

 

 というか店の物を投げるのはまずいんじゃ……

 あっアレスさん怒ってる。ガースさんに対して。皿投げたのはミドリだけど、怒れませんよね。

 エミリー笑っちゃってるよ。いいのか、それで。

 

 ああいう風景を見るとどうしても自分の家族関係が気になる。できれば生きてて欲しい。

 どんな親であっても。

 自分が記憶を失って、雨の中倒れていたことを考えるといい親ではないのかもしれない。

 それでも、やっぱり会いたい。


「アンドリューあのバカ達は放っておいて、とっとと行くぞ」


 ロイドさんに呼びかけられて、ハッとする。

 今だに家族のことになると、つい、のめり込んじゃうな。

 

「わかりました。行きましょう。もし倒れそうになったら支えて下さいね?」


 男を支える趣味はねーよと笑いながら、店を出て行った。

 俺も皆に行ってきますと声をかけ。ロイドさんに続くことにした。




 店の外にあるプレートを逆さまにして、CLOSEにする。

 外の空気は夜だからなのか、とても澄んでいた。気持ちが良い。

 

 もう事件から三週間も経ったんだよなー。小さなことから大きなことまで色々あった。

 目を閉じ、風を感じながら思い出す。

 小さなことでいえば、ミドリとのデートが思い浮かぶ。看病したお礼にとガースさんが持ちかけてきたけど、楽しかった。

 自分としても初めてのデートだもんな、相手十歳だけど。エミリーと遊ぶ感覚に近かったな。うん。

 

 大きなことといえば、ロイドさんと自警団の本部に行った時、エミリーを誘拐した犯人三人が殺されていたことだ。

 何故殺されたのかは、わからないみたいだけど、無抵抗の人間を殺すなんて酷すぎる。

 殺され方からみて、暗殺者とかその手のプロの仕業とロイドさんが言っていた。自分が実際に見た時眠っているものだと勘違いしたしな。

 犯人を見張る自警団の人も眠らされていた。普通の人間には中々できることじゃないだろう。

 あの人達には聞きたいことがあった。

 なぜアレスさんの酒場を狙ったのか、自分の名前を知ってる理由、そして互いに不幸だなと言った理由(わけ)

 何も分からずじまいだ。だが、もしかしたら、犯人が殺された原因の一つに、自分の疑問が関係してるんじゃないか?

 ロイドさんが言うには大きな組織に関わっていて、口封じに殺されたんだろうと言っていた。

 そうだとしら、過去に自分も大きな組織と関わりがあってもおかしくない。……考えすぎかなぁ。

 それにしたってなんでわざわざ見張りを殺さず、眠らせたんだろうか。

 毎日のように考えているけどわからない。大きな組織ってのも曖昧だし、逃げた見張りの人と会えたりしないだろうか。

 それとも、もう……


「おい、アンドリューいつまで外にいるんだ。風邪を引くぞ」


 扉を開けて、アレスさんが話しかけてくる。

 つい考え込んじゃってたか。あの事件、自分の過去、家族と関わってる気がしてならない。

 でも詳しいこともわからないし、暫らく情報に敏感でいる、ぐらいがちょうどいいか。


「はーい! 今戻ります」


 うー体が冷えてきた。早く暖まろう。




「外で何をしてたんだ?」

「ちょっと考え事を……それにしても店の中暖かいですね」


 そこで会話が終わってしまった。当然だ、とか言われると思ったのに。

 沈黙が数十秒続いた後、アレスさんが難しい顔をしながら問いかけてきた。


「明日、店を出るのか?」

「はい、前お話した通り明日の朝には店を出ます。お世話になってる人にはもう挨拶も済ませましたしたし」


「そうか……怪我の方は?」

「バッチリです! そうじゃなければ、お店で働けませんよ」

「そうだよな……もう一度だけ提案がある。この店で働かないか? 

 条件は最初話した通りだ。なんなら給料はもっと上げてもいい」


 少しだけ考えてしまう。自分が記憶喪失になって(生まれて)から、三年。その半分をこの店で過ごした。

 今の自分(セイカク)になったのは、アレスさんやエミリーの影響が大きいだろう。そして、俺は今の自分がとても気に入ってる。

 そんな自分にしてくれた人達と一緒に働いて、生活を共にできるのは間違いなく幸せだろう。

 この店にいた間幸せだったのだから、間違いない。 

 それでも、


「すみません。働くことはできません」

「そうか。しつこく言って悪かった」

「いえ、何度も言ってくれて嬉しかったです。ただ、どうしても、自分の過去――――両親が気になって」


 過去なんて、と割り切ってしまえばいいと何度も思った。だけど、何度思っても割り切れない。


「当然だ。自分の過去が気になるのは」


 アレスさんは顔を少し緩めながら、


「ただ一つだけ言いたいことがある。

 もし過去や両親が見つかろうとも、見つからなくても、必ず帰って来い。いいな?」

「もちろんです! 恩返ししなきゃいけませんしね」


「それはいいと……いや、そうだな。期待してる」

「はい! 期待しててください」


 俺はグッと拳を握り締め、アレスさんにアピールした。

 二人に恩返しするまで死ねないなー。


「明日早いんだろう?」

「はい、八時には出ようと思います。紹介所がその時間に空きますし」

「そうか。ならもう寝ろ。ただでさえお前は朝が弱いんだからな」


「ははは、そうですね。もう寝ちゃいます! お休みなさい」

「お休み。朝飯は楽しみにしてろよ」


 アレスさん、起きれるかな? 少し心配だけど朝飯楽しみにしよう。

 チキンだと嬉しいなと思いながら、俺は自分の部屋に向かった。




 朝、ご飯も食べ終って、しんみりとした空気になっていた。

 こういうの俺達には似合わないよな。何か喋ろうとしたら、エミリーが先に口を開いた。


「アンドリュー行っちゃうんだね……」

「エミリー」


 エミリーは寂しげな顔をしながら、そう呟いた。今の自分もきっと同じ顔をしているだろう。

 もうお別れの時間だと思うと、名残(なごり)おしい。

 

「寂しいけど頑張ってね! ちゃんと弟見つけてくるんだよ」

「あはは、弟がいるかわからないけど見つけてくるよ」


「それと、また戻ってきてね。これでお別れなんて嫌だよ?」

「もちろん。エミリーにアイスをプレゼントしないといけないし」

「うんうん! 忘れちゃダメだよ。じゃあまた指切りしよ」


「あれか……ちゃんと戻ってこれたし、またやるか。アレスさんも一緒にやりましょう!」


 俺とエミリーを見守っていたアレスさんにも声を掛ける。

 

「俺もか?」

「そうです。全員でやってこそな気がしますし」

「そうだね。パパも一緒にやろ!」


 アレスさんは頷くと、席を立つ。

 それに見倣い俺達も立ち上がる。


「で、何てやるんでしたっけ? 小指を絡めるのは覚えてるんですけど」

「んーー私も覚えてない。先生に教えてもらったのにもう忘れちゃった」

「仕方ないな……アンドリュー、必ず無事に帰ってこい」


 三人の小指を一つにしたあと、指きりげんまん。嘘ついたら針千本飲ます。とアレスさんが似合わない声で言うものだから、ついエミリーと一緒に笑ってしまう。笑ったあと、自分達も指切りげんまん。嘘ついたら針千本飲ますと笑顔で言った。


「全く、お前ら人を笑って」

「すんません。それにしてもこんな物騒な歌詞だったんですね」


「だね~アンドリュー、一万回殴られた後に、針千本飲まされたくなかったら、ちゃんと帰ってきてね」

「ああ、ちゃんと帰ってくるよ。もう俺の故郷みたいなもんだし」


 俺は荷物を手に取り、背筋を整え、アレスさんとエミリーの方へしっかりと向き合う。

 スーッと息を吸い込んだあと、


「行ってきます!」

「気をつけてな」

「行ってらっしゃい! ってちょっと待って」


 俺は歩こうとするのを止める。ええっなんか忘れ物したかな。


「どうした?」

「最後にね、まだ見てない魔法を見たいの。パパも見てみたいでしょ」

「ん、そうだな。話には聞いてたが、実際に見たことはないからな」


 実はもうエミリーは見たことあるんだけだ、起きたばっかだったから覚えてないか。

 一日に何度も使えないんだけど、問題ないだろう。


「よしっ! じゃあ期待にお応えして」


 意識を集中し、唱える。


閃光よ(ひかりよ)


 唱えた瞬間、光を発する球状の形をしたものが1つ上の方からゆっくり、ゆらゆらと落ちてくる。


「綺麗……」


 エミリーがポツリと呟く。そして、光に照らされたエミリーは笑顔で、


「やっぱりあの光はアンドリューの魔法だったんだね」




 俺はアレスさんとエミリーの笑顔を脳裏に焼き付けながら、紹介所へ向かって歩いた。

 まだ回っていない中央国の街に行くか、魔法国に向かうか、どうしようかな。

 どちらに行くにしろ、願いは決まっている。

 家族と会いたい。そして、自分を知りたい。それが俺の願いだ。


 願いが叶ったら、二人に恩返ししないとな!

 明るい未来が頭いっぱいに広がってくる。

 駆け出したい気持ちを抑えず、俺は未来へ向かって走り出した――――


 









 

次の番外編で、伏線ましましの中央国編は完結になります。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


中央国(Center country)

特徴:

中央国はどの国とも接しているため、各国との交流が最も盛んな国

過去の戦争では、唯一どの国とも同盟を結んだ経験がある。そのため、尻軽な国と罵られることも。

独自の技術はないが、広さと利便性を兼ねた国土と圧倒的な人の数、

そして各国の技術を得ることができるため、これからも成長が期待できるだろう。


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