勉強会 3
転じて佳境に入る香月達の勉強会。美穂と香月のエキサイトは加速する一方だ。美穂は解き明かした問題に納得して、香月に伝える。
「そうか。ここはこう解釈すればいいのね」
「なるほど、なるほど」
香月も美穂の解答に感心している。夏樹はその様子を見て、してやったりの表情で問題をスラスラと解いていく。
熱気の籠もる香月の勉強会。そこへ一際涼しげな風が吹く。香月の部屋をノックする、香月の母、沙織の声。
「いい? 香月」
「いいよー、お母さん」
香月がそう返事をすると、沙織はお茶菓子を持って部屋に入ってくる。勉強道具を机の隅に寄せるみなへ、楽しげに沙織は伝える。
「さぁ、勉強尽くしでもちょっと疲れるでしょ? ケーキでも食べてひと休みしたら?」
「ありがとう。お母さん」
沙織はケーキをみなに持て成すと、香月のお礼に「いや、いやー」と手を振って、部屋を出て行く。
「それじゃあ、いただきまーす」
真っ先に口を大きく開いて、香月がケーキを食べようとしたその時、夏樹がまたも何かを閃いたのかこう提案する。
「ねぇ。ちょっと待ってみんな。こうしてただケーキを食べるのも面白くないじゃない?」
朱美はゆったりと自分のペースで物事を進めるのが好きだ。ケーキを食べるのに面白くも面白くないもないらしい。朱美は小首を傾げる。
「別に。面白いんじゃなぁい? だってケーキはケーキだもの」
夏樹は朱美の言葉にもどかしげだ。
「だぁー。分かってないわね。朱美。スウィーツへのこだわりは女子にあって当然でしょ?」
「まぁ、それはそうだけど」
夏樹の熱論に朱美は若干、鬱陶しげだ。さっさとケーキを食べてしまいたい朱美を横目に、夏樹はこう言ってのける。
「いい? ここに五種類のケーキがあるでしょ?」
「うん」
元旦は晴れやかな日だ。雅やかな日でもある。どんなアイデア、提案にも「うむ、苦しゅうない」といって懐深く構えるのが慣習の日でもある。だから香月は興味深げに頷いた。
夏樹はその香月の手拍子を合図に誇らしげに言い放つ。
「今から問題集を解いて、一番成績の良かった子が好きなケーキを選べるっていうのはどう?」
凧揚げ、コマ、双六。娯楽の王道の日でもある元旦は、遊び好きでもある。真っ先に香月が同意する。
「いいね! それ」
香月が乗じたのを確かめると、夏樹があらためてみなの意思を確認する。
「どう? みんな、やる?」
勝負を持ちかけられて黙って引きさがる美穂ではない。彼女は一度大きくストレッチをして応える。
「よっし! やりましょう。ただやるからには文句はなしよ」
「OK! 決まりね」
夏樹は左手でガッツポーズを作って喜んだ。桜も嬉々として賛成のようだ。こうなると多勢に無勢。静かにケーキを嗜みたい朱美もやむなくと言った調子で同意する。
「仕様がないわね。やりましょ」
『よっしゃあ!』
最後の最後まで渋った朱美が重い腰をあげたのを見て、四人は声をあげた。こうしてケーキ争奪戦テストが始まったのだった。




