三者面談 3
三者面談ウィークから数日経った放課後。ゴミ捨て係を任された二人の男女。焼却炉でゴミを燃やす二人の影が、傾く夕陽に照らし出され、滲んでいる。それは香月と俊哉の二人だった。
二人はゴミを焼却炉に放り込みながら、何とはなしに話をしている。ゴミが放り込まれた焼却炉からは、煙がゆったりと立ち昇る。
夕焼けが仄かに二人の姿を炙り出す。香月が少し寂しげに口を開く。
「三者面談。終わっちゃったねぇ」
「うん。そだな」
俊哉はゴミを燃やしながら淡々と返す。俊哉は感傷と自分を切り離そうと必死なようだ。香月が何の気なしに、自分の三者面談の中身を伝える
「私、頑張り次第で進学校に進めるかも、だって」
「そうか。良かったな」
俊哉は特に何の感慨もなく返事をした。香月は手袋をはめたまま焼却炉に触れる。
「俊哉君は?」
「ん? 何が?」
俊哉が訊き返すと、香月が核心に触れる。
「どこ行くの? 高校」
そう尋ねられて俊哉は改めて考えた。今から猛勉強すれば香月達と同じ進学校に行けるかもしれない。ただそれは相当の努力と労力を必要とする。合格するかも分からない。
そこまで気負うのはクールじゃない。そんなことをぼんやりと俊哉は、らしくなく、俊哉なりに考えていたのだ。香月は澄んだ眼差しで俊哉を見ている。
仄かに温かい風が二人をくるめとると俊哉は答える。
「俺は高校、進学出来ればそれだけでいいからなぁ」
「そっか」
香月はただそれだけ言って頷いた。香月はそれ以上、何も詮索もしなかったし、何か奮い立たせるような言葉も俊哉にはかけなかった。しばらくの沈黙が過ぎる。
さすが「鋼の涙腺を持つ男」の異名を持つ俊哉でも、少し感じるところがあったのか、俊哉はゆっくりと口を開く。
「高校、離れ離れになるな」
「うん。そだね」
香月は澄みきった眼差しを俊哉から離さない。俊哉はやや俯く。
「少し、寂しくなるな」
「うん」
そう返事をして香月は最後のゴミを焼却炉に入れ終えた。俊哉が締めくくりの声をあげる。
「よし! これでゴミの焼却は終了。『数多の思い出達も煙に包まれて』っと」
その俊哉の言葉を聞いて香月は儚げにこう零すのだった。
「『煙に包まれて』思い出はどこに行くんだろうね」
「ん? ああ。どこだろうな」
香月の少し長くなった髪を、風が優しく撫でていく。その姿を俊哉はただ見つめるしかない。
舞踏会。芥川中期の名作。そこでフランス人将校は「花火」を我々の「生」になぞらえたという。
俊哉が、煙に包まれて雲散霧消、消えていく「思い出達」に託したのはいかなる心情、心象だったのか、それは多分香月と俊哉、二人だけが知るのだろう。




