文化祭 2
美穂は意外と器用な方らしい。文系創作に特段興味がない分、あっさりと仕上げられるのか。美穂は二日もあると脚本を仕上げてしまった。
本の出来に香月達は大方満足なようだ。だが夏樹を除いてだが。本が仕上がった翌日から香月達の稽古が早速始まる。
魔女に扮装した夏樹が、鏡に映る桜、王妃の姿を目にして、おどろおどろしく呻く。
「この王妃の生血を飲めば私の若さは永遠に」
と、そこまで来て魔女が「絶世の美女」という当初のイメージとかけ離れていることに気が付いたのか、夏樹は不平を漏らす。
「ちょっとぉ。これ気持悪すぎない? もっと品のあるセリフにしてよ」
「品のあるセリフねぇ」
美穂は特別夏樹にイジワルがしたいわけじゃない。何とかこの演劇を成功させようと必死なだけだ。美穂は考えあぐねる。すると中々良案が出ない美穂を見た香月が、挙手をしてアイデアを出す。香月は勇者の格好をしている。
「じゃあ『肌に触れるだけで』ってのはどうでしょう」
「肌に触れるだけ。それいいアイデアね。良く言った! 香月」
夏樹が香月を指さして褒める。美穂が仕方なしと言った様子で香月のアイデアを受け入れる。
「そうね。そっちの方が神秘的かも」
「決定ね」
そう返して夏樹は満足そうだ。すると三人のやり取りを目にしていた桜が恐る恐る口にする。
「あ、あの、私なんかがお姫様役でいいんでしょうか。もっと適任が」
「何言ってるの。桜。この五人の中でお姫様やれるのは桜くらいでしょ」
美穂が丸めた本で手を軽く叩くと答えた。朱美も口を出す。
「そうそう。配役に文句言わないの。私なんか『謎の秘薬売り』なんだから」
「すまぬ。朱美」
美穂が掌を合わせて謝ると朱美も左手を軽くあげて構わないといった素振りを見せる。
「いいわよ。別に。セリフも少ないから、覚えるのも楽だし」
「めんご」
もう一度美穂は謝った。やがて美穂は改めてメガホンを叩くとみなに発破をかける。
「それじゃあシーン3! お姫様と主人公が初めて会うシーンね。行ってみよう!」
いよいよ舞台演出が様になってきたと感じてきたのか、乗り気になった美穂は機嫌よくみなを取り仕切っていった。




