読書週間 2
一致団結する香月達を横目に、健もあっさりテーマを決めたようだ。向い合う俊哉に健は右掌をあげてみせる。
「俺は好きなラノベを幾つか読んで書くよ。俊哉はどうする?」
俊哉と健の仲のはず。なのに何事もツーカー、以心伝心で伝え合う二人にしては珍しく俊哉ははぐらかす。
「あー、俺はな。秘密だ」
健は不服げだ。
「何だよそれ」
俊哉は我、意を得たりといった様子で満足している。
「なぁ」
「『なぁ』じゃないよ」
納得がいかない様子の健を尻目に、俊哉はただただ嬉しそうにしていた。
いざ読書週間に入ると、香月を除く四人は順調に資料集めと読書を進めていく。
図書室や図書館を縦横無尽に使い分け、夏樹達は肝となる資料を見つけては、それぞれ自分の得意分野の感想文を書き連ねていく。
だがしかし当の切り込み隊長であるはずの香月だけは、思うように筆が進まない。彼女がテーマにした「ディズニーヒロインの傾向」は煮詰まってしまったのだ。
香月は最後の文の締めくくり「私の理想のヒロイン像」がどうしても思い浮かばない。元旦でも煮詰まる時はあるのか、期せずして一年の長として選ばれた三百六十五日の内の特別な一日、元旦でも突破口を見い出せないのか。
香月はペンを手元で回しながら、ため息交じりに零す。
「みんな素敵だなぁ。何か一つ飛び抜けたところがあって」
夏樹が遠目に香月の言葉を耳にする。香月は独り言のように呟いている。
「私、人よりちょっと『元気』ってだけで、そういや何にもないなぁ」
そうやって少し物憂げにする香月はバサッと髪をおろし、頭を下げてうなだれる。どうした元旦。お前の後光はその程度か。クラス中がそう香月に発破でもかけたかのように思われたその瞬間、香月の顔を嬉しそうに覗き込む四人がいた。夏樹、美穂、朱美、桜の四人だ。
夏樹が先んじる。
「香月、あるじゃない。いい所」
香月は合いの手で尋ねる。
「えっ? あるかなぁ。私に」
桜は香月の右手を握って軽く揺する。
「ありますよ。香月さん」
「えっそう?」
不思議がる香月に美穂が、そして朱美が告げる。
「あるじゃない。香月は『友達想い』って、飛び抜けたものが」
「そうよ。人の心を開くのってなかなかムズカシイのよ」
そう四人のメッセージを受け取った香月は、両掌を握りしめて、みるみるうちに覇気を取り戻す。香月は夏樹達四人の顔を代わる代わる見つめる。
「いいかな!? それ私の長所にしちゃっていいかな?」
夏樹達は口を揃える。
『いいんじゃない?』
それを聞いた香月は原稿用紙を右手に掲げて、机に広げると、喜び勇んでラストの締めくくりを書き上げるのだった。




