表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
香月  作者: keisei1
23/81

プール開き! 期待するか!? 何を!? 人生を! 2

 健達、健康優良助平少年達は、女子達が更衣室へと立ち退いた教室で、話し合い。もとい計画を立てている。もちろんリーダーは、ふんわりとした髪の毛をかき上げ、眼鏡をクイっと人差し指で上げてみせる健だ。


 健は神妙な面持ちで仲間達、熱き同志たちに呼びかける。



「我が愛すべき同志達よ。私はとんだチョンボ、失態を仕出かしていたようだ」



 同志達は熱く煮えたぎる想い、もとい欲望を、胸の内で抱きしめて、健の言葉に耳を傾ける。健は両手を広げて、くるりと体を回転させてみせる。



「私の失態。それは今時、学校で水着に着替える女子などいないということだ。私は自分の情報不足を恥じ入り、嘆くばかりだ」



 健の仲間、いやただの欲求暴走中のクラスメートでしかないのだが、彼らは健の体を支える。



「同志、健! 何を仰るんですか。制服を脱いで水着姿になる瞬間を目に焼き付けるだけでも、我らの願いは叶おうというもの!」



 健はフィデルカストロ、チェゲバラ顔負けの大げさで情熱溢れる身振りで答える。



「分かってくれるか。同志。私は失態を犯した。しかし同時に垂涎ものの情報を手に入れたのもここに報告しておく」


「それは何ですか!? 同志、健!」



 クラスメート達は固唾を飲んで、拳を強く握りしめる。その姿の暑苦しさは、異様に稽古が続いて汗だくになった力士さながらだ。


 余りの仲間達のむさ苦しさに一瞬、気圧された健は彼らを片手で制すると、告白する。



「私の情報によると、高樹。元旦娘。高樹香月だけが、水着を制服の下に着てきていないという話だ!」


「な、な、何と! 元旦が! さすがサービス業以外全国民の休日足りうる元旦! ありがたや!」



 叫び、歓喜する助平軍団。その彼らの興奮をそっと鎮める健。



「だから我らは女神の裸体を愛でるチャンスがあるというわけだ」


「なるほど!」



 手に汗握る同志達。最後に長い演説の終わりを締めくくるかのように、健はこう言葉を添える。



「我らが更衣室に近づけるルートは三か所。つまりチャンスは三度だ! このチャンスを逃しては、決してならない!」



 健の雄叫びに「オー!」と猛々しい声で答える愚連隊だった。


 一方その頃。香月を守るために、一致団結する夏樹を筆頭した女子達は、男子の攻め手について確かめ合っている。



「あのバカども。発情したゲラダヒヒが更衣室に近づけるルートは三つ」



 美穂が淡々と意見を差し挟む。



「三つ? 二つの間違いじゃないの? 東校舎からの階段と、西校舎からの渡り廊下。この二つだけが、彼らが更衣室に近づける唯一のルートだと思うけど」



 その言葉を聞いた夏樹は、大げさに大見得を切ってみせる。



「甘い! 甘いわ! 美穂! 全国区のスプリンターともあろう人間が! 未来のオリンピック候補ともあろう人間が、そんな甘ちゃん予想でどうするの!? ハバネロスナックで身体に辛味を取り込むのをお勧めするわ!」



 朱美も左手を軽くあげて、美穂に同意する。



「でも実際。二か所しか更衣室に近づく手段はないわよ」



 夏樹は指先を立てて、チッチッチと舌を鳴らしてみせる。



「朱美、あなたもあなたね。コンクールでなまじ優秀賞なんか獲っちゃったもんだから、呆けてるんじゃないの!?」



 そう言われて朱美は顔を引きつらせて、紅潮させる。



「なっ! じゃあ何よ! 東の階段と西の渡り廊下。それ以外に更衣室への侵入ルートがどこにあるって言うのよ!」



 夏樹は確信をもって言ってのける。その容貌は難事件を解決してみせる名探偵ホームズをも思わせる。



「あるわ。それは『戸外』からの侵入よ」


「戸外!? まさか! だって更衣室は二階よ! どうするの!?」



 驚く朱美に桜も頷く。



「いかにパワフル独走状態の健さん一派でも、戸外から二階にある更衣室に忍び込むなんて不可能ですわ。夏樹さん」



 夏樹は目を鋭く光らせる。



「いいや、不可能じゃないわ。奴らは『梯子』を使うのよ!」



 美穂は、ミケランジェロの天井画の如くオーバーアクトを見せる。



「梯子!? 転落でもしたらどうするの!? あいつらも! いかに無節操でも! それほどバカで阿呆な助平達じゃないでしょう!」



 言い返す美穂に夏樹は、両手を広げてみせて、大袈裟な身振りで断言する。



「いいえ。それほど阿呆でバカでド助平だからやるのよ。彼らは」


『そんな』



 声を揃えて落胆する美穂と朱美。その様子を、騒動の当の本人なのに微笑ましげに眺めている香月がいた。


 香月は少し暑いのか、制服の襟元を何度か煽り、胸元を少しチラつかせる。彼女はブラジャーさえしていない。


 そのチラつく胸元を見た夏樹は、一言零す。



「香月。あんた結構胸あるわね」


「えっ? そうかな? 考えたこともなかった。そんなこと」



 香月の邪気のない、ウルトラスーパー級に、純粋無垢な物言いを前にして夏樹は少し顔を赤らめて、一つ咳払いをする。



「と、とにかく! 香月を何とでも死守するわよ! 乙女の清らかな裸身を!」



 その言葉に「おー!」と大きな声で反応する朱美達。

 

 最後に夏樹はどこから取り出したのか、どこで用意したのか、対男子用武器を取り出し、それぞれに手渡す。



「さぁ。これが、更衣室の牙城を守るための武器よ」


「武器? そんな大層なこと?」



 冷静に言葉を返す朱美にも夏樹は構わない。



「こうでもしなけりゃ、香月の柔肌は守れないわよ。はい。朱美は放水器、美穂は消火器。桜はハリセンね。さぁそれぞれの配置について! やるわ! 勝負の時よ!」



 その掛け声とともに戦闘配置につく夏樹達。ただ一人香月だけが、「私は、どうしたらいいのかな?」と蚊帳の外であった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ