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風の行方  作者: 藍月 綾音
本編
5/61

にぃ~の3


「で、きら?今日はどうしたんだ?」


突然の巽のお言葉。

気にしてくれてたんだ。


一瞬、フリーズする私。でもすぐにグラスを置いて、巽に抱きついた。


すっかり忘れていたけれど、そもそも巽に慰めて貰おうと来たんだった。


優しく頭を撫でてくれる。あぁ癒される。巽に頭を撫でられるのすごく好きなんだよね。


「バイトでありえない失敗たくさんしちゃった」


「ん、それで?それだけじゃないだろうが」


心配をかけるので、どうしようかと思っていたけれど、どうせ最後にはばれるので素直に伝えておくことにした。


「……バイト先、あいつに見つかっちゃった。また、バイトやめなきゃ」


「なんだ。きら、まだストーカー被害にあってんのか?」


橘先生が低い声でいった。


私は、頷く。これでバイトを辞めるのは、何度目か分からない。幸い家はバレていないけれど、大学で見張らているのだと思う。


バイト先はすぐにバレて追いかけ回されるんだ。


私は、たいして可愛い顔をしている訳ではないのだけれど、ある種類の人間に異様な興奮をあたえるらしい。


どうも、目覚めさせてしまうのだ。ストーカー気質とでもいうのか、暗い感情を呼び起こさせてしまっている気がする。


今までに、何人に追いかけられたか、数える気にもならない。


始末に悪いのは、なぜか、本当に普通のクラスメートからの被害もあったということだったりする。


ストーカー達の言い分は、まさに皆一緒。


『なぜ?君が誘ったのに。俺のこと好きだろう?』


因みに、言い添えておくけれど、私は話しをしたこともなければ、接触した憶えもないということだ。


よって、何をどう誘ったのか見当もつかない。それは、気をつけるすべを持たないことだったりする。


だから、私はなるべく空気のように目立たずに、存在していたいのだ。


「まだっていうか、新たにっていうか。本当に、きらはドコでも引っ掛けてきちゃうからなぁ。しかも、危ないやつ限定だしね?」


「なによ。私が悪いみたいじゃん?そんな言い方しなくたっていいでしょ」


私が巽に抗議をしようとしたら、橘先生がボソリとつぶやいた。


「なんで、これなの?」


…………橘先生。それ、すっごく失礼。


うわぁ、いま何気に、私の事全否定だったよね。


恋愛対象にもならねぇよ、こんなちんちくりん、みたいな?


いけない、つい被害妄想がっ。当たらずとも遠からずな、気がしないでもないけど。


解ってますよっ、可愛くないことくらい。


「あぁ?できればお前にも。会わせたくなかったんだよ?俺。大丈夫な奴は、ドコまでも大丈夫だけど、駄目な奴には、とことん駄目だから」


巽は一旦言葉を切ると、私を引き寄せて肩を抱いた。


「ほら、今まで一度もブッキングしなかっただろ?まぁ、学校で会ってたっていっても、それぐらいじゃ大丈夫だっただけ、だと思うぞ」


「なんだよそれ。これだぞ?お前ちょっと過保護すぎねぇ?」


またこれって、指差しされて真顔でいわれたよ。


止め刺されちゃったよ。

うっわぁ、へこむ。

絶対に私、今生徒扱いされてないよね。


まぁ、確かに?もう生徒じゃないけどさ。言い様ってもんがあるよね。


そんな私をよそに、巽が黒い空気を漂わせ始めた。


うわぁ、なんかろくでもないこと考えてるよ絶対。


「そんな事言ってられんのも、今のうちだよ?カズ君。きら、お前カズの隣にいってみろよ。」


うわっ今、カズ君言ったよ。

巽の笑顔が黒く見えるよぉぉ。


「嫌」


「即答かよ」


「なんか、巽変なこと考えてるもん」


「大丈夫だから、変なことなんか考えてねぇよ。物は試しだ、行って来い」


耳元で、私に指示をだすと私を引っぺがして、足で押して橘先生のそばに追いやった。


まったく、いつも扱いが乱暴なんだから。


しかも、微妙に恥ずかしいことしろって言われたんだけれど。


私は、よく解らないまま、巽の指示通りに、橘先生の耳元に手を当て、内緒話の要領で話しかけた。


内容は、巽に言われたとうり。


「橘センセ。巽がざまぁみろって。なんの事?」


「ッ………………!!」


ビクビクッと橘先生の体が揺れたかと思うと、すごい勢いで、私から離れた。


あ~あ。勢いがつきすぎで壁に突撃したゃったよ。


口元を片手で隠した、橘先生の顔はびっくりするほど真っ赤だった。


なに?なんか可愛いんだけど?


しかし、失礼な。


何もそんなに嫌がらなくったっていいじゃないか。


「言葉にならねぇんだろ?やっぱ、お前駄目なほうな。だと思った」


 何かを一人で納得する巽は、もういいからと私を自分の隣に座らせた。ついでに、チーズも私の口に放り込むと、だから会わせたくなかったんだ、とかぶつぶつ呟いている。


しばらく、放心状態だった先生は、元の位置に座りなおすと巽にくってかかった。


「なんだっっ!!!今の!!すげぇ、破壊力だったぞ!!てか、お前平気なわけ??」


なによ、破壊力って。人を化け物みたいに。

ちょっとむっとして、唇をとがらせると、巽が私の頭に手をおいた。


「ん~。きらに言ってもどうしようもねぇから、黙ってたんだけどね。俺は、免疫がある程度あるの。小さな頃から一緒に住んでるみたいなもんだからさ。どっちかってぇと、駄目なほうよ?俺?でも、それに左右はされない」


「なんの話?」


自分の話をされているのは、わかるけど、何についての話なのかはさっぱりわからない。


「ん~。あのね、さっきも言ったけれど。大丈夫な奴は、とことん大丈夫。駄目な奴はトコトン駄目、なんだよ」


「だから、なにがっ」


イラッとして、言葉がきつくなるのがわかった。


「お前の、その、匂いと声」


…………匂い?と、声?なんだそりゃ。


「多分な、男の本能刺激するんだよ。しかも、恐ろしく凶暴なやつ。お前の恐いとこは、無意識に、恋愛感情抜きで、男に火をつけるんだ。お前はなにも悪くない。ただ、魅力的つー範囲を軽く超えてんだよ。その、声と匂い」


「……なにを、馬鹿な」


意味がよく頭に入ってこない。匂いと声って……。


別に香水とかつけてないけど?


「馬鹿な事じゃないだろ。なんだ?あれ?別に、色っぽい声とかじゃないのにこう、ぞくぞくするっつーか……。俺、ちょっとヤバいかも……。てか、ありえない、マジありえない。だってこれだぞ!!」


……なんかもう、話の内容よりこれ扱いが腹たってきたな。


うん。失礼にも程があるよね?


「あ~くそっ。カズいい加減にしろよ。てめぇ腐っても聖職だろうがっ。さっきから、これ扱いしやがって!きらはかわいいっ!!てめぇの目が節穴だっつーのっ!!!」


頭の後ろをガシガシ掻きながら、巽は机の下から橘先生を蹴り飛ばした。


……いや、目が節穴なのは、巽だから。


さすがに、わかってるよ。自分の容姿レベルぐらい。

てか、いくら巽でも、目の前でそんな事言われると、恥ずかしいし、いたたまれない。


「よし、カズてめぇ明日は学校休みだよな?明日一日つきあえ。勝負だ!!!!」


「よしっ。付き合ってやろうじゃないか。受けて立つ!!」


何の勝負をするのかよく分からないけれど、交渉成立らしい。

どうも、26歳の会話じゃない気がするんだけど。


二人とも小学生並みの口喧嘩を始めちゃったよ。


その夜は、おおいに飲み、よく食べ、私はほろ酔いどころかいつの間にか眠っていた。


くそぉ。これってなんだ、これって。


許すまじ、橘 和臣。


そして、匂いと声ってなんだ!


だいぶよくわからない話が、当人をよそに、進行中だったことなど、その時の私に知るよしもなかった。


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