聖地辿りて −?−
光の丘に草を掻き分けて差した風があった。
ツヤに磨かれた葉の表面が痛々しいくらいに光を反射し、目をも阻んだ。
光沢に輝いた丘の向こうに、小さく人影が見える。
太陽は何の邪魔も無しに、熱と紫外線を放出し、季節を運んだ。そして、瞬き。
街には太陽と共に、活気に包まれ、人が行き交う溜まり場のようだった。
何も躊躇うことなんか無い。街に入るとき、そう思った。
怖い街でもない。ただ、見知らぬ人ばかりだったから。
今更悟ったって、もう街には踏み入っていた。もう突っ切るしか無い。
太陽に向かってひたすら人を縫うように歩き、くたびれた。
自分を追っていた影でさえも、人の波に消されていた。
・・・・と、突然街の高台から、大きなサイレンの音が鳴った。
耳で肌で、空気が振動するのが分かった気がした。鼓膜が揺れたから。
一心に耳を塞いだが、それの効果も、体してないようだった。
と、急に鳴ったサイレンは、急に鳴るのが終わった。
それでも音は、街の向こうからかすかに聞こえる。
人は鳴ったと同時に、まるで、今までずっと鳴っていたサイレンの音を、気づいたばかりのような、そんな顔で一斉に立ち止まった。
動きがみんな、そう、誰一人として、みんな動きが止まった。
一人、街に訪れたばかりの僕は、呆然とするしか他に道はなかった。
呆然、だから僕も動きが止まってしまい、街全体が止まった。
そして静けさが保たれた。しかしそのうちに、街の人は何も言わずに、無口で歩み始めた。
ただ流されてしまい、僕もみんなが行く方向に向かった。太陽の真逆に。
そして、また立ち止まった。
僕は勇気を出して、街の人にこれは何なのか聞こうと試みた。
しかし、この異常な雰囲気、そして静かさのために聞くことを断念した。
ただ街の人と同じ、同じ動きをすれば良いんだ。そう思った。
しばらくの沈黙、この異常さはもちろん初めてだ。
一人の人が座って、それに続くように人々はみな、座り始めた。
当然、さっき悟ったように、僕も座った。
そして、一人の人が立った。
「ジャジャ様!生贄賛同します!紅に、勇気を下さい!」
「「「「「「勇気を下さい!」」」」」」
一人が街いっぱいに響くような大声で、叫び、そして街の人全員がそれに続いた。
圧巻だ。何だろう?これは。
「紅!宿れ紅の竜巻よ!」
立っていた人が、そう叫んだ。そして、太陽に背を向けて、両手を天高く伸ばした。
青の空が、雲を揺らした。雲が動き出し、そして太陽を隠した。
「光よ!紅の刃、牙の紅!」
そのうち、嫌な予感と共に雲からうすらうすらと、光の刃が差した。
稲妻が、立っていた人に落ちた。