鬱病鴉
昔々、深く暗い森に一匹の大きな鴉が住んでいました。
鴉はいつも一匹でした。
仲間も居ません。
生まれた時は兄弟も居ましたが、他の兄弟よりも身体が小さく、飛行練習も遅れてしまった為、親鳥からも見捨てられてしまったのです。
その時から鴉は一匹で生きてきました。
春・夏・秋・冬と、どれだけの年月が過ぎたのでしょう。
いつまで経っても一匹に変わりはありませんでした。
そんな鴉はいつも何かを考えていました。
住んでいる森の事、他の生物の事、この森の広さについて。
沢山の物事を考えている中で、一番に時間を費やしていたのは、仲間たちと仲良く暮らす鴉の理想の姿でした。
数組の群れの中で鴉は番で群れの一員でした。
子供も居て、家族や仲間の為に狩りをして生活をしています。
ある時は、子供に狩りのやり方を教えに遠くの森まで出掛けたり、仲間と助け合って沢山の餌を獲り、皆で分け合ったりしている姿を思い描いていたのです。
毎日、同じ事の繰り返しでしたが、一匹でいる時とは全く違う感情を抱いていたのでした。
そんな、鴉の日常が過ぎて行く中で、もう何度も経験した冬がまた近付いていたある日。
一匹の鴉が羽を休めようと森に立ち寄りました。
その森には、一足先に雪が降った様子で、木々や地面がうっすらと雪化粧をしていました。
その景色を眺めていた先に、鴉の青光りする羽が落ちているのが見えました。
この森に仲間が居るのかと、近くへ行ってみると、雪の上に大きな鴉が横たわって死んでいる姿があったのです。
その鴉は、とても幸せそうな顔をしていました。
前回に引き続きの作品です。
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ねるふ@oω6さんのmy space
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