一 雨、公園、遊具の中で。
ふと、光が消えた。
「……え?」
プラスチック製の窓から差し込んでいた月の光が、パッと消えた。
雲に隠れたのだろうか?
一気に周囲が暗くなったことで、不安に駆られる。
大丈夫、すぐにまた明るくなる。
メールを打つことをやめ、膝に顔を埋めて瞼を閉じた。
暗闇の世界に響き渡る雨水。
遊具状のトンネルを叩きつける雨が、少々強くなったような気がする————あ、……雨?
どうして、雨が降ってるのに月の光が……?
呟いて——得体の知れない何かに全身を舐られたような恐怖に陥る。
雨なのに、こんなに強い雨が降っているのに、どうして月が出てるんだよ。
瞬間、思い出したように月の光が窓から差し込んだ。
雲が晴れたんじゃない。
雲が晴れたんじゃなかった。
あれは、あの光は——
「懐中……電灯……?」
口の中の水分が無くなり、喉が異常に乾く。
もしかして——いやきっと違う。
近所の子どもたちが懐中電灯を持って遊んでいるだけだ。
——こんな……雨の日に?
——窓を、まるで集中砲火するかのように、ただ一点だけを?
どんな遊びだよ。
ここに住み着いたホームレスへの嫌がらせみたいじゃないか。
諸々と出てくる否定の言葉の中から、必死に都合のいい答えを探す。
そして、最悪の答えを悟ってしまった時。
スマホが、揺れた。
メールが一件。
宛名不明のメールが一件、届いた。
「右……窓……?」
漢字が二文字。
『右』
『窓』とだけ件名に書かれたメール。
右を向いてみると、そこには四角いプラスチック窓がひとつ。
「ぅっ……」
気持ち悪さに口許を抑えた。
鼻息が荒い。
見てはいけない。そう本能が警告しているのに、僕の体はそこへ向かって四つん這いに進んでいく。
窓を射抜く光が、点滅を繰り返す。まるでモールス信号のように。ここを覗けと。
恐怖……というよりかは、もはや諦めに近い感覚で、僕はそっと窓を覗き込んだ——刹那。
ブー、ブー、と手元のスマホが震えた。
窓の下。
スマホを耳元に当て、懐中電灯を点灯させながらにっこりと不気味に微笑むアゲハが、そこにいた。
咥えていた棒付きキャンディを噛み砕き、懐中電灯をその場に落としたアゲハは、雨に濡れて冷たくなった右腕の人差し指を僕に突きつけると、言った。
「——みぃぃぃぃぃつぅぅぅぅぅけたぁぁぁっ、れぇぇ~んぅ♡」




