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字融落下  作者: 莞爾
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2:エジソン製じゃないけれど

「なあ、『霊界交信機』って知ってるか?」


 飲み明かしたAM5:43。

 俺はそんな風に切り出した。


 白み始めた空が色彩を取り戻すまでの、

 別れを惜しんで機会を逃した男二人の、

 過ぎていく時間を埋め合わせるための、


 気まぐれな会話である。


「なんだよそれ」

「エジソンの発明だよ……エジソンは分かるか?」

「おい、馬鹿にするなよ」


 友人は笑いながら俺の肩を小突く。


「知りたいのは霊界通信機の方だ」

「エジソンはな、人間の魂もエネルギーの一つと考えてたんだ。

 エネルギーは物理的に光・熱・電気・と形を変えても残るから、魂は死後も存在すると考えたらしい」


 友人は山の向こうから射し込む朝日に目を細めて言葉を引き取った。


「死者の声をラジオみたいに拾える機械を発明したってわけか?」

「そう。でも、それは今も沈黙している」

「ん? 現物をお前が持ってるわけじゃないよな?」


 友人の問いに対して、俺は含みのある笑みを浮かべて頷いた。


「そりゃ持ってるわけ無い。というかエジソンは考案はしたけど発明品としての物はないぞ」

「じゃあ、『今も沈黙してる』って」

「エジソン製じゃないけど、家の頓痴気トンチキ爺ぃが発明したやつがある」

「なんだそりゃ」

「爺ぃが言うには『エジソンが霊界から交信機に話しかけているはずなんだが、まだメッセージを拾えていない』ンだとさ」


 友人は鼻で笑った。

 俺も下らないと肩を竦める。


 飲み明かした体から少しアルコールが抜けて、二人でぼんやり朝日を眺める。


 今度は、友人が話し始めた。


「俺の親父がさ、『死んだら絶対にお前の枕元に出て驚かせてやるぜ』って言ってたんだ」


「へえ」


「まぁ昔からそういう茶目っ気がある親父だから慣れてるんだけどさ」


 泣いているわけではないけれど、友人は言葉を切ってはなをすすった。


「未だに枕元には出てこないよ」

「……貸してやろうか? 爺ぃのヤツ」

「要らねぇー」


 二人でからからと笑う。

 早朝の空は雲が薄く広がり、街は少しずつ色づいていった。

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