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World's END. 人間はしつこく抗う。  作者: アイスティー
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第三話: 8人の探検隊!

ミナは朝日が差し込む小さな部屋で目を覚ました。昨夜は疲れ果てていたのか、深く眠っていたようだ。しかし、目覚めるとすぐにチャーリーたちのことが頭をよぎる。まだ彼らの行方が分からない以上、一刻も早く探しに行かねばならない。だが、今のままでは戦力が足りない。もっと経験のある人たちを集めなければならない。

「よし…」

深く息を吐き、ミナはベッドから飛び起きた。身支度を整えたミナは、ヨルルとサラを連れて拠点の中央広場へ向かった。

「今日は人を集めます。」

「何人くらい?」

サラが聞く。

「最低でもあと5人です。探索に慣れている人、戦える人、治療できる人…」

「なるほどね。でもそんなに都合よく集まるかしら?」

サラは持ってきたパンをかじりながらミナを見る。

「兄に相談すれば、適任者を紹介してくれるかもしれません。」

ヨルルが言った。

「そうだね、それが一番早いかも。」

ミナたちはミナルのもとへ向かった。

「5人必要?なるほどリュウが行けない分と確かに塩尻までが分からないし、チャーリーたちがどこでどんな状態で待ってるか分からないと少人数でサクッと行くのは無理そうですね。ちゃんとした部隊を組んで行くべきか。」

ミナルは腕を組みながらミナを見つめる。ミナが真剣な目で見つめ返すと、ミナルは少し考え込んだあと、低く笑った。

「確かに。連れて行く人を選びに行きましょう。化け物退治がしたい人ならすぐ見つかりますよ。」

そう言ってミナルは三人を酒場に改造された市役所に連れて行った。そこには異世界ファンタジーの世界のように冒険者が集まるギルドかのようにいかにも戦闘経験豊富そうで血を好みそうな者たちが集っていた。

「レイラさん居る?」

ミナルは人々が叫びあう中、入り口付近にいた一人に聞いた。その人は黙り込むと辺りを見まわし、探し人を見つけると口に両手を添えて呼んだ。

「レイラ、ミナルだよー。」

呼ばれた女性は席から立ち上がり、こちらを見る。ミナルの存在に気づくと顔色がコロッと変わり、ニコニコしながら歩きよってきた。

「ミナルじゃん!やっほー。」

手を振りながら彼女はミナルに呼びかけた。

「レイラさん、ミナさんと塩尻まで行ってほしいんだけど、あと4人くらい連れていける人いない?」

「んー、おっけー。」

そういうとレイラは居なくなり、ミナたちは無言で立っていた。少しするとそういう性格のサラはミナルにレイラのことについて聞いた。

「あのー、レイラさんていったい何者…」

「レイラさんは、なんか元軍人なんですよね。性格とか雰囲気からしてあんまり信じがたいですけど、彼女に銃を持たせれば最強ですよ。」

「なるほど。でも銃無いんですよね。」

サラが指摘するとミナが入ってきた。

「そう。本当は怪物たちについて政府が調べたデータと銃を何丁がもって帰ってくるためにチャーリーたちを送ったんです。でもやっぱり二人だけで行かせるべきじゃなかった…」

「しょうがないわよ、今そんな嘆いたって。とりあえずできることをしましょう?」

ミナはまたサラに励まされてしまった。するとちょうどレイラが他に4人連れて戻ってきた。4人はレイラの隣に並び、ミナたちをジッと見ている。

「これがたっちゃんね。私と同じ元軍人。」

レイラが一人目の傷だらけのごつい男を指さして言った。

「コレとは何だ。」

彼はレイラを睨むとミナに視線を戻し、手を差し出した。

「達夫だ。よろしく。」

ミナは彼の手を取り握手した。ごつごつしていて少し手汗が出ている。ミナは彼が手を話すとズボンで手のひらを拭いた。次にレイラは達夫の隣に立つ少し背の低い男性を指さした。

「こっちは祐一!私の彼ピだから。超最強。まじで神。」

自分ごとのようにレイラは彼のことを語った。サバゲーでレイラを倒したから付き合っているのだという。本物の銃を使ったことはないし、元軍人ほどではないが、なかなか戦闘はできるらしい。

「どうも。狙撃銃が一番得意です。」

彼の自己紹介が終わると今度はそのまたとなり、達夫に似ているが、少し、こう、まんじゅうみたいな顔をしている男性が前に出た。

「最近退屈だったからなー、久しぶりに外出れるよー。あ、僕は正男って呼んでね。」

隣に持つ斧を肩の上に背負い、彼はにこっりとミナたちを見た。なぜだかわからないが、ミナは彼のことがあまり好きではない気がする。そして最後、一番右に立つ女性。パーカーを着て、両手をポケットに突っ込んでいる。

「よろしく…」

彼女は自己紹介もほとんどなしにボソッと言った。

「彼女はシェリーだよ。サラちゃんみたいに看護婦だね。口数少ないけど、腕は確かだから。一応戦闘もできるよ。」

レイラからのその紹介にサラは嫉妬したのか横を向いた。自己紹介を終え、ミナはこれから一緒に旅立つメンバーを知った。正直心配な部分がいくつかあるが、一刻も早くチャーリーたちを助けに行きたいという思いの方が強かった。

「じゃあ、ミナちゃんよろしくね。」

レイラが元気よくミナに挨拶をするとミナは彼女に向かってペコリと頭を下げ、彼女を含む8人で門まで再び歩いた。門を出た景色を見るのは2回目、そしてこの道を通るのは3回目。帰るころにはすべての石ころの位置まで覚えられそうだ。

「今度こそ助けに行くよ。」

決心してミナは進み、それに続くように他の7人も歩いた。グループのリーダーのミナが先頭、隣にはヨルル、そして右後方にはいちゃつくレイラと祐一、左後方には達夫と正男の大きめな体系の二人、そして後ろには医療係のサラとシェリー。静かな道を歩き、人数が増えたにもかかわらず昨日より早くミナたちが触手の怪物と戦ったところまで来た。

「ちょっとそろそろ休憩しましょう。」

ミナが皆に呼びかける。8人はそれぞれ腰を下ろし、水を飲むなり足を休ませるなりした。しかし正男は1人、ヨルルが退治した怪物に近づくなり斧でつついた。

「こんなもん、僕にかかれば楽勝だね。」

彼は言う。サラもミナもヨルルもいい顔はしなかったがあまり何も口に出すことはしなかった。ミナがため息をついて座っているところにレイラがやってきた。

「ところでさ、塩尻まで何しに行くん?」

レイラが聞いた。そういえば新しく連れてきていた人たちにはまだ目的を何も伝えていない。ミナはそれからチャーリーたちが怪物についてのデータを集めるのと武器を持って帰るために行ったこと、自分たちが心配になって南木曽から彼らのいる松本まで行こうとしていたこと、そして木曽で彼らの目撃情報を貰って塩尻にいる可能性が高いと判断し、そこまで行きたいということを丁寧に何も漏らすことなく5人に話した。

「なるほどねぇー。」

レイラは髪の毛をいじりながら言った。他の4人も協力してくれるそうだ。当然木曽拠点にも銃が欲しいので大人数で行ってごっそり持って帰ってくるのはいいかもしれない。レイラが再びしゃべりだす。

「ねぇ、お互いにさどんな怪物とあったことあるか言い合わない?面白い発見できるかもだし、もし遭遇したらみんな対処の仕方わかんじゃん?」

「確かに悪くないな。」

達夫が嫌そうにもレイラに賛成した。そうしてみんなの視線は次第にミナに集まった。

「へ、私からですか?!」

ミナは驚いた様に言うが、周りはそうだよと言うように黙り込んで彼女の冒険譚を聞く。

「私、事件が起こった日大きなマンモスかゾウみたいな怪物を見たことがあります。高さが4メートルくらいで大きな牙を持っていました。私と同じ会社に勤めていた会社員たちの乗った車を突き飛ばしていました。大通りのあるところの方が動きやすそうなので松本の方に向かったら遭遇するかもしれません。」

しかしミナが話している間に彼女の目から涙がポロポロ落ちて行ってしまった。あの会社、それは社員が何人も死んだ場所でもあったが、彼女の最も尊敬した人の1人、カノが怪物に殺されたところである。あのスライムかゼリーのような怪物の存在を南木曽や木曽に一刻も早く伝えまわったのは彼女である。内部に入られることができるので一番危ないと言っても過言ではない。しかし今はマンモスのような奴の話をしている。達夫のフォローアップにミナは記憶の世界から引きずり出された。

「じゃあそいつの弱点は今のところ分からないってことだな?」

「はい。そうなんです。でも大きく、随分と音を立てると思いますから来るとわかったら建物の中に隠れて通り過ぎるのを待つ、と言うのが得策かと思います。」

達夫はこれに頷いた。

「そうだな。そうした方がいいか。じゃあ次言ってみろ。」

彼は指揮をとってヨルルを指さした。

「あ、はい!あの、私は触手の怪物と戦いました昨日。もう話は聞いたかもしれませんが、地面が不自然に出っぱっていて、そこの下に潜んでいます。近づくと触手が飛び出てきて襲ってきます。触手の方は比較的簡単に切れますが、とても素早いです。力も強いので絡みつかれたらとるのは人では難しいと思います。あ、でも触手を全部切り落としたらやっつけたと思います!」

以前とは比べ物にならない、あり得ないほどに彼女は地震をもって話した。ミナは彼女にうれしく微笑みを見せる。次に達夫はサラに指をさす。戦闘経験がほとんどないサラは恥ずかしそうにしながら答えた。

「ウルフにあったことなら…」

そういうと正男は膝を叩きながら爆笑した。

「ちょっとなによ!」

サラは正男の態度に怒った。すると当たり前なことを言っているかのように彼は言い返した。

「いやだってよぉ、ゲームで言えばスライムみたいなもんだぜ?序盤に出てくるやつさ。あれを1匹くらいやれないと生きていけないぜ?」

そのふざけた発言にサラだけでなく全員が嫌な顔をした。するとレイラが声を上げた。

「あんた、サラちゃんは看護役よ?戦闘ができなくたっていいじゃない。何ならシェリーとサラちゃんはあなたより10倍役に立つ怪物の毒や痕に関する知識を持っていると思うわ。」

サラは自分かばうレイラの言葉を聞いて頷いた。一方正男は言い返すことがなく黙り込んでしまった。次に経験を共有したのはレイラと祐一だった。食虫植物のような感じの植物が地面を這って追ってくるのだという。もちろん弱点は火で、とても尖った武器なら半分に切ることもできてしまうということだ。

「お二人さんってどこから来たんですか?少し気になってしまって。」

ミナが聞くとレイラはサラっと答えた。

「池袋だよー。東京、埼玉に近いほうだけど、この辺の拠点木曽と南木曽しかないからね。なんなら塩尻を拠点にするのありなんじゃない?」

「確かにいいアイデアかも…」

ミナも彼女の考えに乗ろうとしていたが話を再び怪物経験共有に戻した。

次に話したのは達夫。彼の経験談には元軍人と言うこともあるからか、サラ、ミナ、ヨルルの全員が真剣に興味深そうに耳を傾けながら歩いた。

「俺は事件から1か月くらい立った日だったか、俺はこういった山道を歩いていたんだ。するといきなり空に影が見えたんだ。最初は鳥かと思ったが、見上げる限り俺よりだいぶ大きかった。恐竜のような、だがものすごく不気味だ。俺の仲間を一人ずつ持ち上げ、空高くから落下させていた。」

「それでどうなったん?」レイラが顎を手のひらに乗せ、興味深そうに続きを聞いた。

「俺はビルの下に隠れたんだ。そしたらあいつが俺が最後の一人だと理解するとピルの下に入って俺を掴もうとしてきた。だが、案外動きが鈍かったもんでな。もしかしたら狭い空間は得意じゃないかもしれん。」

彼は両腕でライフルを持っているような動作をし、うっているかのように手を動かした。

「俺はそいつの羽を撃ち破ってやったんだ。そしたらあいつは飛べないただの鶏だ。」

彼の考察にミナは頭をうなずかせた。まだまだ見たことのない、あったことのない怪物たちがたくさん世界にいるということを彼のスピーチを通して改めて思った。カノを殺した奴ら、ミナがこの地球上から一匹残らず駆除すると決めたこの怪物たちに会い、仲間と退治するのが少しばかり楽しい感じが来た。

「次はうちらね。」

レイラが祐一の肩に手をおいた。レイラが真剣な顔で話し始めた。

「時は七か月前、私たちは甲府にいた…」

ドラマチックなトーンで説明するレイラ。

「怪物のせいで昼寝ができなくなってしまったこの世界、私たちは見てしまった。奴の存在を…」

レイラはバトンタッチとでも言うように祐一に肘で合図した。そしてそれに気づき祐一はレイラのドラマチックなトーンを続けるかと思いきや普通な声で話し続けた。

「僕たちはコンビニを拠点にしてました。室内なら安全、そう思っていました。食料もあるし、自動ドアも電気が落ちて動かない、でも透明だから外が確認できる窓になったんです。」

「なんかあんまり緊急事態が起きるようには聞こえないわね。それで?」

サラが聞きこむとそれにこたえてレイラがまたドラマチックに話始める。

「私たちがコンビニの中で隠れる中、突然ドアが開いた。しかし誰もいない。ただ動かないはずのドアが一人で動いているだけだった。私たちはとっさにレジの後ろに隠れた。耳を立てて、ビニール傘を持って待っていた。するとコツコツと足音が聞こえる。そこに見えるは何かの影。そう。黒い影だけが立っていた。私はビニール傘を持って思い切り奴を叩いた。」

「ちょっと待ってよレイラ。」

祐一がレイラの冒険譚を途中で止める。

「それやったの僕だよね。レイラは傘抱えて震えてたじゃん。」

「いやぁ?私はそうは覚えてないけどなぁ~。」

もうすでにみんなレイラが話を変えていると悟った。もめは収まり、今度は祐一が説明を続けた。

「僕が影の主がいるであろうところに傘を振ると何かに当たったんです。多分透明になるけど影だけ残す奴がいるんです。奴はそのあとコンビニから逃げて行ったんですが、まだ甲府にいるか、それとも移動したか分かりません。」

「おいおい、なんだそれは。夜なんか最強じゃないか?」

達夫が怒ったように聞く。

「そうですね。でも影はものすごくくっきりと見えました。多分少しした月明かりでも見えるかと思います。」

そういって祐一は立ち上がった。察してミナも立ち上がり、皆に呼びかけた。

「そろそろ行きましょう。」

塩尻に続く道を歩く8人。彼女らはまた未知の道を進んだ。昨日に比べ人数は多かったが、全員とてもサバイバルに長けているせいか、サクサク進み、日が暮れる前には塩尻にたどり着いてしまった。

「暗くなってきたし、今夜キャンプできる場所を探しましょう。」

ミナが全体に呼びかけるとサラが手を挙げた。

「ショッピングモールなんかはどう?」

「確かにそこなら食料調達もできるし何か役に立つものが見つかるかもしれない。」

と達夫。

「トランシーバーかなんかあれば最高ですね。」

祐一が付け足した。

「ああ、とりあえずそこで決まりだな。」

「ははーん。もう少し私に感謝しない?みんな。私の最高の案でしょう?」

サラは言ったが別に誰も気にせずみんな歩き出した。ショッピングモールまで来るとちゃんとあの事件の被害が分かり、皆の記憶に蘇って来る。車はひっくり返り、潰され、建物は倒れ、完全に崩壊しているものがほとんど。道路は剥きあがり、砕けたコンクリートが腐ったしたいを埋めている。

「ウッ…ひどい匂い。」

ミナを含めて全員が鼻を摘む。全方向から腐った死体の異臭が漂って来る。埋もれた死体、ひっくり返された車両にシートベルトで逆さまに固定されている死体、頭や手足の無い死体、そしてその死体のであろう切断された部位。

「きゃっ?!」

シェリーがつまづいた足元には皮膚が剥がれ落ちた首なしの黒焦げの死体が転がっている。達夫は近づき、手を合わせて祈る。

8人はそのままショッピングモールの中に入り、入り口で二人組ずつに分かれて探索することにした。


=ミナとサラ=

みんなと別れ、二人組になったミナとサラ。二人は最も優先すべきは食料の確保とみた。

「この中にスーパーあるわよね?」

「確かに食料と言ったらそこが良いですね。」

二人は合意し、一階にあるスーパーに向かった。地図を見る限りスーパーはショッピングモールの反対側らしい。ショッピングモール内を歩いていると店のほとんどは崩れたりぐちゃぐちゃになっていたりしていた。人がいっぱいいる、かつ出口の少ないショッピングモールは数多くの犠牲者を出したことだろう。

「スーパーのもの、腐ってないといいですね。」

ミナはそういったものの、あれから年単位で立っているのだから保存がきくようなもの以外は全部だめだろうと思ていた。運が良ければ潰されずに済んだごく一部、一割未満のものはまだいけるかもしれない。

歩いているとサラは突然ある店に入った。倒れ崩れたコンクリートや棚の間をすり抜け、しばらくすると出てきた。

「どう?似合う?」

サラはブランドバッグを肩から掛けてミナに見せながら手を腰に置き、ポーズをとった。

「似合ってますよ。でもあんまり荷物を増やさないでくださいよ。サラさんは治療用の薬剤や絆創膏などが入ったかばんもあるんですから。」

ミナはため息をつきながらサラに注意を呼びかけた。

「まっ、リーダーさんがいうんじゃあしょうがない。」

あきらめてブランドバッグを投げ捨てる。

「あ、ほら着きましたよ。」

進みながら店の鑑賞を続けるサラにミナが呼びかけた。

二人はスーパーの中に入って行った。ほとんどは棚が倒れ、割れたワインボトル、ハエのたかる魚や肉、変色した果物、野菜が目に留まる。

「ほとんどダメそう。」

サラが茶色くなり切ったキュウリをもって言う。

「食べたらあの怪物たちに食べられるよりも早く死んじゃうかもしれないわね。ちょっと見た目的にも…」

いろんなセクションを見て回る二人。ミナがお菓子のエリアにたどり着くと大丈夫そうなものをいくつか見つけた。

「この賞味期限切れてから一週間たっていないポテトチップスなんてどうですか?これなかバラバラですけど一応足しにはなると思います。」

彼女はポテトチップスの袋をいくつか上にあげてさらに見せた。

「ナイス!いいよこれ!あ、でも私の好きな味じゃない。」

彼女らはポテトチップスの袋をできるだけ集め、かごに入れた。

「水も何本か持っていきましょう。」


=祐一とレイラ=

このイチャラブカップルがこのとき何をしているかというと、みんなと別れてすぐにアーケードエリアを荒らしに行ったのだ。つかないエアホッケーで遊び、クレーンゲームのぬいぐるみやお菓子はすべて取る。お菓子は腹の足しになる。だがみんなのところに持って帰れる前にすべて平らげてしまった。

「なんでもできるアーケードって楽しすぎ!」

二人ともはしゃいでいた。時間を忘れ、多分三十分は遊んでいただろう。そしてもう二人はアーケードエリアにはいない。いつの間にか本屋で漫画を漁っている。

「うわーこれ懐かしい。頑張って全巻集めたやつだわ。」

「これまだ読んでなかったんだよねー。」

二人は読書と漫画トークに浸った。


=達夫とヨルル=

ミナと同じく他に比べ比較的真面目なこの二人もまたミナ達とあらかじめ相談して寝るための安全な場所の確保、そしてバリケードなどを作ることだ。真っ先に思い浮かぶのはキャンプ用品の店。寝袋はあるだろうし、なんらか大きめの椅子やテントで仕切りを作ってもし怪物が来たら見つからない、かつ逃げる時間を稼げるかもしれない。その上、運良く発電機やグリルが置いてあればミナとサラが料理のための食材や非常食を見つけることができたら何か作れる。

達夫は壊れた案内用電子パネルの隣にある散らかったパンフレットからショッピングモールの地図を探す。

「まずは地図をみよう。」

二人もミナと同じ手順を辿る。ヨルルも見えるように広げてみる。色々崩壊しているから地図がどれだけ当てになるかは分からないが、ないよりかはマシだ。

「二店ありますけど、近い方でも二階までは行かないとですね。」

ヨルルは地図を指差して言うと、達夫は頷いた。

「二階の方がこっちの四階のより良いだろう。上の階の方で何かが崩れたら終わりだ。二階の方なら二階の駐車場にも近くて何かあったら比較的に脱出しやすいだろう。」

地図で1番近そうなルートを考えてからエスカレーターへ向かった。

「エスカレーターなら止まっていても階段と同じになるだけだからな。」

と思い、歩いていた達夫だったが、着くとエスカレーターは上の階から切り離されて床にヒビを残して倒れていた。

「残念ながらこのエスカレーター、エスカレートしていませんね。ゴーアップのエスカレーターがギブアップ…」

ヨルルは12歳の時点で英検一級を持っていた。そして元軍人で英語の勉強もした達夫が彼女がボソッと言ったことを理解すると何年振りかに吹き出しそうになった。

再び進み始め、今度は階段をためす。エスカレーターと違って階段は1番端と入り口付近にしかないため、戻る必要があった。結局この方角での短いショッピングモールの旅は往復で終わり、スタートに戻ってから階段を試してみた。階段は天井の穴真下にコンクリートが崩れ落ちていたものの、それを避けて上がれば二階に着くことができた。そしてまたさっきのエスカレーターが上がるはずだったところ付近まで歩く。二階は一階よりもだいぶ崩れ落ちた部分が面倒だった。天井から崩れ落ちたコンクリートを避けなければいけないし、その上崩れ落ちた床の穴も避けなければならなかった。

「達夫さん!」

靴が穴の一つに引っかかって脱げてしまったヨルルが助けを求めた。

達夫はヨルㇽの靴を引っぱり出そうとするが、これ以上やっては靴が半分しかついてこないような具合だ。

「予定変更だな。まずは靴屋だ。確か階段から少し戻ればあったな。」

達夫は自分の靴を片方脱ぎ、ヨルルに履かせた。申し訳なさそうにもヨルルはそれを受け取り、今度は二人で靴屋のほうへ向かった。

なるべく傷ついていない靴、そして一つ大きめのサイズを探す。そして黒いプレーンなデザインのスニーカーで満足した。ヨルルはそのスニーカーを履き、古片方だけの靴を放り投げると達夫に靴を返した。

「ありがとうございました達夫さん。」

そして今度こそはキャンプ用品店に向かう。そして今度こそ二人はたどり着いたのだ。

「寝袋ありますね。八人分あります!」

「よし、とりあえず寝られる場所を作るか。」

ヨルㇽが指さした寝袋を達夫がとり、まだ壊れていない展示用のテントの中に敷いた。

「八人もいるから二つのテントになったな。軍人の時のこと思い出すな。」

達夫がつぶやくとヨルルが興味深そうに聞いた。

「実は私キャンプしたことないんです。レイラさんといっしょで元軍人なんですよね?どんな感じでした?」

「俺らのいたころはありがたく平和でキャンプは基本的にすべて練習の時だけだ。たまに疎開された場所で救助をしなきゃいけない時にやったりするけどな。寝袋はなかったほうが多かったな。どちらにせよ、自衛隊として戦わないで人を救助できるのは俺の誇りだ。」


「ほら!やっぱりここにいたね。」

話していた二人の後ろに突然現れたのはサラ、そしてその後ろにはミナ。

「あ、サラさん、ミナさん。私のせいでまだちょっと終わってなくて…」

ヨルルが申し訳なさそうに二人に現状報告するとサラは水やポテトチップスの入ったかごを差し出した。

「テントがあれば十分。それより見てよこれ!」

袋を一つ持ち上げる。

「ちょっと、うち抜きに食べないでよ!」

後ろから漫画を何冊か持ってきたレイラと祐一がいる。だが彼女らの場合、一緒に読もうと思って持ってきたというよりも、自分たちが読みたいだけだ。

六人が円になって座ると達夫が言った。

「正男とシェリーがまだ来ていないな。」

「私ら結構偶然ここにたどり着いたしね。集合場所とか決めるの忘れてたし…」

レイラが頭を掻きながら言う。

「探しに行きましょう!」

ミナの当たり前の発言に動かされた五人は一緒に店を出るとまずはヨルルの靴とは反対方向の二階を探索した。

「おーいシェリー!」

「正男さーん!」

「シェリーさーん!」

「正男―!」

「シェリー!」

「正男さん達―!」

しかしいくら呼んでも返事がない。上の階まで筒抜けの部分が多くあるのでこれだけ叫べば二人には聞こえるはず。しかし六人の以外は当たり全体沈黙している。

すると全員に一、二歩下がらせるような大きな雄叫びが頭上から聞こえた。

グァォーー

そして追いかけるように建物全体が揺れた。

「チッ。」

そんな達夫にヨルルが聞く。

「シェリーさんと正男さんあれにやられちゃったんじゃないでしょうか?上の方の階で負傷しているかも。」

「じゃあ、サラさんは私と一緒に二人を探しに行きましょう。その間にみなさんは怪物を引きつけてください。」

ミナがリーダーシップを発揮し、的確に指示を出すとみんなの顔にはやる気満々の笑みが輝いていた。

「了解!」

そうして二手に別れた。

「階段に向かいましょう!」

雄叫びと揺れが続く中ミナはサラを連れて階段を駆け上がる。

それを確認すると四人はキャンプ用品店の鍋などを使って叩きながら怪物の注意を引けるよう大きな音を出した。

「おい!こっちだぞ!」

頭上の怪物の叫びが移動していると確認した四人はガンガン音を出しながらひたすらミナとは反対方向に走った。


=ミナとサラ=

三回に上がった二人は落ちないように気お付けて、かつ素早く通路を駆け抜けた。左右をチェックし、シェリーや正男がいないことを確認する。

「右はいないよ!」

「左側もいません!四階に行きましょう!」

今度は建物の反対側の階段を駆け上がった。

ガシャンガシャンガシャン

ドーン

彼女たちの目の前を怪物が上の階から床を突き抜けて一階まで落ちていった。その青い怪物は大きく、球体を引き延ばしたような形をしていた。体中のあちらこちらから足が伸びていて全身足の短いムカデのようだ。顔と呼べるかわからない先頭は大きな口でカタツムリのように小さな歯が細かくずらっと並んでいた。怪物が通り過ぎるとき、二人の目に留まったのはその大きな口からはみ出していた正男の白目向いた頭。彼の頭に体はもうつながっていなく、首が歯に引っかかって怪物が落ちるにつれて引き離されているように見えた。

「シェリーも食われちゃったんじゃあ…」

サラは絶望とした顔で見ていたが、ミナはまだあきらめていなかった。彼女はもうたくさん人をなくしている。今日知り合ったとはいえ、大事な仲間だ。死を確認するまではあきらめない。歯をかみしめ、怪物の作った穴を避けて反対側に行けるルートを頭の中で考えていた。

バキバキ

そう思ったとたん、足元の床が崩れ落ち、宙に浮いているかのように感じた。


時がゆっくりになっているように感じる。私の足元に床がなく、崩れ落ちたコンクリートの破片とともに私は落ちている。宙に浮いているようなそんな感覚。私の目の前には手を伸ばすサラさんがいる。何か叫んでいるかのように口が大きく開いている。彼女のひとみには私が映る。彼女の大きく開いた目に映る私の目もまた大きく開いでいた。私は落ちている。そう自覚した。サラさんの伸ばす手をつかみに自分の手を伸ばした。掴んでよ。私の手もう少し伸びてよ。まだシェリーさん見つけてない。リュウに会いたい。ヨルルがミナルさんと再会するまで送ってあげたい。チャリーさん達助けたい。まだ終わりたくない。伸びて。伸びて、生のほうへ!私はまだ終わりじゃない。肌が触れる。私と彼女の指が。そして手のひらが。強くつかみ、絶対離さない。彼女が私を強く引っ張り上げると私の首は後ろに下がり、天井上を見せられた。すると見えた。シェリーさんの足と腕がギリギリ見える範囲で上の階からはみ出して見える。少し動いた。すぐにいかないと。私の体が床の上に戻されると私は立ち上がり、サラさんの目を見た。

「シェリーさんが上にいる。それと、ありがとう。」

私は彼女を強く抱きしめた。

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