02.Exceed,Weapon
((♪~♪~♪♪♪~♪))
街中に聞こえる賑やかなカントリーミュージック。
付近の建物は赤や青、黄色など多彩な色をしており一戸一戸が音楽に合わせ主張し合っているようにすら見える。
その音楽と背景に似つかわしくない風景。
ブルーシートを敷いて重石を乗せただけの店、屋根を支えるには心配になるほどの細い支柱。しかし支えているのは屋根と呼べるものではなくブルーシートた穴の開いたぼろぼろのトタン。
焼き物をしているのか薬品のものなのか、周囲にはお世辞にも良いにおいと言えないような腐敗臭が立ちこめる。。。
そんなお店?と呼ばれるものがずらっと並んでいる。
そう、ここは闇市と呼ばれる市場。正規の品物など一つもない。旧日帝国時代のものや非公式のアメリア国の商品が並んでいる。
陽気な音楽をかき消すかのような声が聞こえる。
『なんっでだよおやっさん!?この兵器はCランクだろ!?』
ドンっ!!木の机を左手で大きく叩く。正直痛いが木の冷たさで緩和されているような気がしてそこまで気にはならなかった。
身長は2メートルくらいあるのだろう、色黒で短髪、不揃いな髭の大男をにらみつける
『そうは言ってもな…八雲。こいつぁ量産型だ。。こんなものはどこにでもあるぞ?形は斧タイブで需要はあるからこの値段でしかもお前だから色を付けてこの値段にしてやってる』
アルミのトレイに置かれた銀貨を見せつけるかのように指差し静かな口調で大男は話す。
俺は下唇を強く噛みながらもやもやして気持ちでトレイに置かれた銀貨を受け取る。
『せっかく危険を犯してまでアメリア軍基地の倉庫に侵入していただいてきたってのによぉ~。なんだよ10ドルって…円でいくらだよ…』
そんなに文句を言うなら1ドルおまけしてやる。…という声を期待するもそんなことはなく、、、
しぶしぶポケットに10枚の銀貨を突っ込む。
それをみて大男は笑いながら口を開く
『まぁ、そんなにふてくされるなよ。円換算なんて今や何にも意味がねぇだろ?がはは』
『うるせぇ!俺は国を捨てたお前ら大人とは違うんだ!!』
リスクに伴わない対価であったことにいら立つ…この店は不法な兵器を売買している店でおやっさんとは
数年前から世話になっている。Eランクの武器ですら買い取ってくれるがサービスがねぇんだよサービスが…
『まぁ、そう怒るな。その代わりいい知らせだ。週末にこのド田舎のアメリア軍基地にアメリア軍のお偉いさんがくるらしい。なにやら海外から物資が届くとやらでな。しかし考えてみろ?わざわざ首都から離れたここへの物資。お偉いさんの立ち合い…こりゃなにかあるぜ??ふふふ』
『ほんとか!?…へへ、それが本当なら間違いなくお宝だろ!!BランクどころかAランクの武器があるかもしれねぇな…おやっさん、きょうのところは10ドルとその情報で勘弁してやるよ!!じゃあな!』
俺は小走りで店を後にする。ここは田舎の辺境地。軍基地の警備も金平糖のように甘い。…がお偉いさんが来るとなれば警備も厳しくなるだろう、入念に準備しないと…まずは…
ここは闇市、ある程度の物はここで揃うだろう…。
八雲がおやっさんの店を飛び出してから、おやっさんの後ろから若い男が顔をだす。
『今日も相変わらず元気でしたね、八雲のやつ。師匠に対しての口の利き方はどうかと思いますが…』
振り返りもせずおやっさんは口を開く。
『まあ、そう言うな。あいつは戦で家族を殺されてんだ。親も姉弟もだ。アメリアが指定した高学校、大学校にも行かず、盗人の真似事をして今を生きている。悪い奴ではないんだがな』
『へぇ~師匠詳しいっすね。あいつ運動神経良いし喧嘩も強いんでしょう??軍にでも入ればいい暮らしでもできたんじゃないっすかね』
へらへらしながら品物を磨いている。おやっさんは何も言わず買い取った斧型の兵器を手に取り、商品棚へと置く。
『Excuse me? ちょっといいかな?』
急に声がかかる、いつものように接客しようと顔をあげるとそこには
『っ!?』
金色の長髪で男か女かわからないような中性的な整った顔。きちっとした軍服、胸にはたくさんの勲章がついている
(こいつ…アメリア軍の…この辺じゃ見かけねぇ顔だし勲章の数を見るとこいつは…)
いつまでもしゃべらない店主に疑問を感じたのか不思議そうな表情を浮かべながらも
軍服のアメリア人は口を開く。
『驚かないでくれたまえ。別に取って食おうというわけでない。ここは闇市。表だって公認はしていないが政府も認めているようなものだ。ここに何があったとしても僕の権限ではどうすることもないしできないよ。』
『あ、あぁ、すいませんね。闇市でみそんな立派なお召し物をされている人は見ないもんで…で何用です?うちは闇市で唯一exceed,weaponを取り扱ってますが…』
軍服の男は並べられた兵器を見ているが…
『旧式の兵器ばかりで掘り出し物があるかと思ったが…さすがに無い…か…』
何かお探しで?と言おうとするとアメリア人はすでに後ろを向いており店主の声が届かない所まで進んでいた。
……
『ありゃあ相当の手練れだな…八雲…無事に戻ってこいよ…』
おやっさんは何かを察したのかぼそっとつぶやいたが弟子の男は聞き取れずに手元の作業に戻った。