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第7話 大災厄

 


 ガーネットは勿論、冷静だったはずのマリンまでが、その言葉に青ざめた。


「そんな……噓でしょ!?」

「国を滅ぼすとまで言われているあの大災厄が、今夜突然起こったというのですか?!」



 赤い月の夜、魔物たちが大量に王都に出現し、王宮を襲う。

 王都を壊滅させるまで、魔物たちが止まることはない――

 その災害は数百年に一度とも百数年に一度ともつかない不定期で発生し、そのたびにクリスタッロ王国は壊滅寸前にまで追い込まれる

 ――それが、王国で昔から恐れられる「大災厄」。



「でもあれは、占星術師たちによれば、私たちの代ではほぼ起こらないと言われていたはずでは?」


 マリンの疑問にも、サファイアは首を横に振る。


「国民の間ではそう言われてきましたが――

 実のところ、大災厄は幾多の占星術師にも予測が難しい。洪水や大風と同じで、絶対に来ないという保障は誰にも出来ないのです。

 直前まで迫らない限り、確実な予測は不可能。

 今回、どうにか3日前に予測が出来たのは、不幸中の幸いと言えるでしょう」


 3日前。

 ガーネットは思い出す。そういえばそのぐらいの頃から、ディアマントの様子はどこかおかしかった。

 彼らしからぬ落ち着きのなさが目立ち、ガーネットが話しかけても上の空。彼女に触れようともしなくなっていた。

 そして彼がガーネットを追放したのが、昨日。



「……なるほどね」



 ガーネットは何となく理解した。王子があぁまでして、自分を遠ざけた理由を。

 ディアは、知っていたんだ。この大災厄が来ると分かっていたから、彼は私を――



「でもそれなら、なおのこと分からないわよ。

 何故、私をそばに置いてくれなかったの? 術最強の私がいれば、王宮も王子も絶対安全じゃない?」

「王宮自体を破壊するほどの火力だからでしょうか?」

「ちょっとマリン……」


 冷静な表情でボケるマリンに、ツッコむガーネット。

 しかしそんな彼女たちのやりとりにも、サファイアは首を振った。



「大災厄に関しては、王家にしか伝わっていない情報があります。

 それは――

 ()()()()()()()()()()()()、災厄がおさまることはないということ」



 ガーネットもマリンも、思わず息をのむ。

 王子を、(にえ)に? つまり、魔物に命を差し出すということ?

 呼吸を落ちつけながら、必死で説明を続けるサファイア。


「それは厳然たる事実です。過去の災厄でも、時の王子が魔物の手にかかって初めて、災厄は沈静化したと伝えられている」



 トパジオがしくしく泣きながら、その言葉を補足した。


「兄上は最初からそれを分かってた。

 だから僕も父上もガーネットもみんな逃がして、自分だけが犠牲になろうとして、王宮に残ってるんだよ!」


 そう言いながらトパジオは、髪をかきあげて自分の首筋をガーネットに見せた。

 右の襟に隠れたあたりに小さな水晶が、きらりと光っている。


「つい最近分かったことなんだけど……

 この国の王家に生まれた人間は皆、身体のどこかに強い魔力を秘めた水晶を持っているんだって。

 父上も僕も、内臓とか筋肉とか身体のどこかに、水晶があるんだ。兄上ほどの量じゃないけど。

 兄上はたまたま水晶をたくさん持って生まれた上に、それが外側に多めに出てるだけなんだよ。僕なんて、首にこの程度しかないのに……」


 そんなトパジオの言葉を、サファイアが継ぐ。


「その水晶を狙って――魔物たちは王宮を狙うというのが定説です。

 しかもディアマント様は、水晶の魔力がちょうどピークになるお年頃。魔物たちは一気に王子に襲いかかるはず……!」




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