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第11話 最強の魔物と最高の贄

 

 さすがのディアマントも茫然としながら、その巨躯を見上げるしかない。

 魔物の身体から放射される熱だけで、壁も床も発火し始めている。

 炎魔の化身ともいうべきその化け物は、悠々と王子を――水晶に包まれた身体を見降ろした。

 頭部を裂くかというほど吊り上がった眼は禍々しい瘴気を煙の如く噴出させながら、ニヤリと歪む。


「ほう……今回はなかなかの(にえ)じゃないか。

 これほどの水晶の持ち主は、何千年に一度現れるかも怪しいもの。

 じっくり味わわせてもらうぞ」


 そう言い放つが早いか。

 イフリートはすぐそばにいたオニキスを軽々とその右手で掴み、高々と差し上げた。


「お、オニキス!?」

「ぐぅっ……

 は、離せ……っ!!」


 掴まれたオニキスも当然抵抗するが、イフリートの握力には全くかなわない。

 得意の氷術で生み出した槍さえも、悪魔の手のひらの中へ儚く溶けていくだけだ。



「やめろ! お前が欲しいのは僕だ、この水晶だろ!?

 喰らうなら僕一人を――!」



 苦しむオニキスを正視出来ず、思わずイフリートの真正面へ飛び出すディアマント。

 そんな王子を、イフリートは嘲笑した。


「ククク、甘いなぁ王子よ。

 貴様の水晶は、貴様の感情が昂れば昂るほど力を増すものさ」

「!?」


 言いながらイフリートは、オニキスを掴んだ手に力をこめる。

 酷い悲鳴が、熱せられた室内に響き渡った。


「や、やめろーっ!!」

「こうして、お前の国や大切なものを踏みにじれば――

 お前の怒りは昂り、それは我らの恰好の餌となる。

 分かるだろう王子、我らは酷い空腹ぞ。貴様がゴミどもを逃がしてくれたおかげでなぁ!!」

「ゴミども……?」

「決まっておろう、この国の人間どもよ。

 貴様の弟に父親、優秀な女騎士に多くの人間どもまで、我らの手の届かぬ場所まで貴様は――

 貴様のあの花嫁も、なかなか美味そうだったのになァ!!」



 そうか――ガーネットも、ちゃんと逃げられたんだな。

 イフリートの嘲笑に、何故かほんの少し安堵する王子。

 しかしすぐに剣を構え、凶悪な魔物と対峙する。自分の身から削り出した、水晶の剣を。

 爛々と煌めく大きな翡翠の瞳には、一つの覚悟が宿っていた。



「言いたいことはそれだけか?

 僕の身体ぐらい、いくらでも好きにするがいい――

 だが、この国の皆を愚弄することだけは、絶対に許さない!」



 間違いない。王子は今ここで、イフリートと共に果てるつもりだ。

 そう察したオニキスは、苦痛の中でも思わず呻いた。王子を止めようとして。

 しかしそんな王子の決意さえ、イフリートはせせら笑う。


「全く、笑わせてくれる。

 貴様、自分を食わせて我の体内で自爆すれば、災厄は止まると考えているのだろう。

 その甘っちょろい考えこそ、我の最大の養分となる!」

「――えっ?」


 決死の覚悟さえ鼻で笑われ、思わず虚をつかれる王子。

 その隙を見逃すイフリートではなかった。


「ハハハ、かかったな! 我が炎を喰らえ!!」

「うっ!?」


 一気に紅蓮の炎を口腔から噴出させるイフリート。

 天井を支えていた柱の殆どがその閃光で破壊され、他の魔物さえも炎に巻かれて消し飛んでいく。

 何とか剣で直撃こそ防いだものの、王子自身も壁まで吹き飛ばされてしまった。


「うぐっ……?!」


 立ち上がろうとしたが、衝撃で動けない。

 しかも身体を包んでいた水晶の殆どが、一撃だけでぼろぼろと崩れ去っていく。その上――


 何故か、再生しない。




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