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第1話 突然の婚約破棄

 

 ここは魔物と人とが未だ争いを続ける王国・クリスタッロ。

 グルナディエ伯爵の一人娘たるガーネットは、同い年で17歳になるこの国の第一王子・ディアマントと婚約を取り交わした仲だった。

 王家と伯爵家の思惑がさまざまに絡んだ婚約ではあったものの――

 少々おてんばだが明朗活発、術も使いこなすガーネットと。

 剣術に長けているが、やや人付き合いが不器用なディアマント。

 その二人は周囲の予想に反し、時々口げんかはするものの仲睦まじく過ごしていた。



 しかし王子ディアマントには、大きな欠点がひとつあった。

 それは――

 何故か生まれながらに、身体中から生えている水晶の塊。

 特に頭部からは、毛髪の代わりに針山の如く水晶が無数にびっしりと生えている。

 その上、手首や足首からも刃物のごとく水晶が突き出し、誰も彼もを寄せ付けない。

 これらの水晶は削ろうが折ろうがすぐさま新しく生えてきて、一向に消える気配がなかった。


 その体質の為、ディアマントを生んですぐ彼の母親、つまりクリスタッロ王妃は逝去。

 現在の王妃は後妻であり、第二王子たるトパジオの母でもある。

 王や忠臣たちはそんなディアマントを何とか支えてきたものの、第一王子の姿を目にした貴族や民衆は大変に驚き、化け物と恐れる者さえ多くいた。

 翡翠色の大きな瞳に凛々しい金の眉、整った顔立ち。小柄ながらも鍛え上げられた、無駄のないすらりとした肉体。

 そんな王子を目にするたび、人は囁いた――「水晶の呪いさえなきゃあねぇ」と。


 それゆえ、縁談の話があがっても成立することはなかった。娘を差し出せば水晶に刺し殺されると分かっていたから。

 王はいずれディアマントを見捨て、トパジオに王位を譲らざるを得ないだろう――

 そんな噂は国内でもあちこちで囁かれていた。


 そんな中ひょっこり現れた、稀有な存在がガーネットである。

 くりくりよく動くブルーの瞳に、明るい緋色の髪を今風に頭の上でお団子にまとめた姿が可愛らしい彼女。

 術に長けたグルナディエ家の血筋らしく、若いながらに強大な炎術を操る少女であった。

 彼女ならば、王子の呪いを解けるかも知れない。そう期待されていた

 ――はずなのだが。



 ******


「ガーネット・グルナディエ!

 今宵、君との婚約を破棄する!!」


 ある夜、突然ディアマントから呼び出されたガーネットに下されたのは、あまりにも唐突な婚約破棄宣言。

 ガーネットにしてみれば青天の霹靂。一瞬あんぐりと口を開けてしまった彼女だが、持ち前の気の強さですぐに反論する。


「は、はぁ!? 何言ってるのディア?

 私、何もしてないわよ! 侍女や男爵令嬢をイジメたりイビったり階段から突き落としたりなんかしてないし、ちゃんと公務だってこなしてるし、追放される理由なんてこれっぽっちも……!」


 必死で反論するガーネット。しかし王子は冷たい沈黙を守るばかり。

 そんな彼の隣から進み出たのは、忠臣たるオニキスと女騎士のサファイアだった。

 王子とほぼ同い年で青い髪のオニキスは、涼しい瞳でガーネットに問う。


「ガーネット様。

 ここ10日間で、闘技場に行かれたのは何回になりますか?

 具体的には、試合に参加されたのは」



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