GETWILDをバックにおじさんが寿司屋に入る話
「へいっ!らっしぇっ!」
「……いつもの」
「あいよぉっ!」
この寿司屋は私の月に一度の癒し。ミチュランで一ツ星を獲得するずっと前から目をつけて通っている。大将。あんたよくここまで店をでかくしたな。立派だぜ。
「お待ち!あとこちらサービスです!」
「うむ」
ああ。エビだ。
「頂きます」
くぅぅ。プリっとした食感!海の香りがたまらねぇぜ。これは?ほぅ?山葡萄のジュースか。旨い。ワイルドだな。……昔。田舎のばあさんが
作ってくれたっけな。
おやおや。相変わらずこの辺のガキっぽさは変わらねぇなぁ。大将。
「……ボロボロコミックか」
寿司屋に漫画本なんて似合わねぇよ。格式も景観も損なわれる。
大将の趣味か?なーにが面白いんだ?こんなの?
「……うむ」
…
…
…
一時間ガッツリ読んでしまった。私としたことが。
「お愛想」
「ヘイッ!500円になりまさぁ!」
「……」
……困ったな。400円しかない。忘れたか?落としたか?冷や汗が溢れてきた。食い逃げ?警察?これまで築き上げた私のキャリアが……。嗚呼。そろそろ女が外で待っている頃だろう。格好悪い所を見せたくない。どうする!?
「あっ!本日100円割引のクーポンが発行出来ます!本日からお使いになれますがどうしやすか!?」
「おおっ!使わせてもらおうか!」
助かった!
「ヘイッ!ありあっしたーっ!またお待ちしておりやす!」
ふぅ。助かった。しかし大将。クーポンはねぇだろう。だから格式を考えろ格式を!今日は見逃してやるがな。
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母親に手を引かれ帰っていく少年を店先で見送る。今月も来てくれてありがとうごぜぇやす。
えれぇなぁ。お母さんのお手伝いして100円5枚握り締めてよぉ。大人ぶってエビぃ注文して旨そうに食って漫画読んで……可愛くて仕方ねぇよ。
本当はその500円でボロボロコミックを買いたいんだろう?我慢してえれぇなぁ。
400円しかないのに必死に100円数えてよぉ。
とっさにクーポンがあるなんて言ったけど『見せてみろ』って言われたらどうしようかと思ったぜ。
「来月も待ってまさぁ」
……GETWILDが流れる。
テンテンテン。テンテテテテン……、
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「大将。エビ頂ける?」
「へぇ」
「……ちなみにおいくら?」
「1800円になりやす」
「……結構するわねぇ」




