6 仕組みと説明
ダンジョン
魔物が巣喰う地下迷宮
財宝を手に入れるため、モンスターを狩るため冒険者が集まる場所
疑問に思ったことはないだろうか。
何故魔物たちは宝を用意し、奥に向かって順番に弱いモンスターから並んでいるのか。
「あるから聞いてるんですよ。」
先日魔王軍に入ったばかりの新人、ロセルナがあきれたようにため息をつく。
「先輩風を吹かせるつもりはないんだけど、君もう少し遠慮とかないわけ?」
まさか新人にため息をつかれるとは思わなかった。
僕、上司なのに、幹部なのに。
「仕事に関する質問に対して、カッコつけた語りを始められたらため息も出ますよ。」
一理ある。
ここは上司として僕が折れてあげよう。
「じゃあ、昔のことも話すからよく聞くように。」
「簡潔にお願いします。」
この子は…。
「昔、ダンジョンは居住空間として使われていて、また、人類の兵士を迎え撃つ要塞だったんだ。
鉱石で人間を呼び寄せ、倒し、装備を奪っていたんだけど、いちいち冒険者を倒してしまうこのやり方では、優秀な冒険者が育ち、現れるまでの時間がかかよね。
さらに、人間たちが転移の魔法を使うようになってからは、倒す前に逃げられてしまうことが増えて、装備の奪取が困難になったんだ。
ここまで大丈夫?」
「はい、続けてください。」
んー、もうちょっと愛想が欲しい。
真面目に聞いてくれるのは良いんだけど。
「そこで魔王様、言いなれないからボスっていうね。
ボスがダンジョン内で転移の魔法を使うと残った体力に応じて装備を落とす魔法を作ったんだ。
うん、僕もどうやってそんな魔法を作ったかは気になる。
でもそれはあとでボスに直接聞いてみて。
体力が有り余ってる状態でも、転移をするとまず武器を落とす。
そこから体力に応じて鎧、薬品、スクロール…、って色々なくしていくようになってる。
いや、だから僕もわかんないって。
さらに、人類と魔王軍の争いが沈静化したいま、『無闇に人間を殺せば余計な遺恨を生むだけである。』というのが魔王軍の方針だから、殺さずになるべく体力の減った状態で帰ってもらうのがベストってこと。」
すこし一気に話過ぎただろうか。
「なるほと、よくわかりました。冒険者毎の実力差に合わせて限界まで削るために階層ごとに魔物の強さを変えているのですね。さらにより強い冒険者を集めるために鉱石を用意し、難度の高いダンジョンを新設している、というところですか。」
んー、優秀。
まだ言ってないのに。
それに言い方がなんか氷みたい。
怖い。
「そう。それだけ理解できてれば問題ないかな。これからよろしくね。ロセルナ。僕はクルメノス。」
「よろしくお願い致します。クルメノスさん。」
もはや怖いを通り越して寒い。
氷の新人と名付けよう。
「って感じだったかな、ロセルナと初めて会ったときは。」
「やめてくださいよ、そんな昔の話!」
「どうやってクルさんはロセの氷を解いたんですか?」
「なかなかいい食いつきだね、レクラス。でもこれ以上はまた今度にしよう。」
僕は先ほどから小刻みに震えている元・氷の新人を指さす。
「レクラス!覚えてなさいよ!あんたの恥ずかしい秘密も絶対暴くからね!!」
普段は真っ白な肌を天狗のごとく紅潮させ捨て台詞を吐きロセルナは走り去った。
「お前は意地悪だなあ。」
「いやいや、今のはクルさんでしょ。」