4 嫌味と同僚1
帰還早々お説教を受けたせいで報告に行くのが遅くなってしまった。
本日最後の仕事を終わらせるべく場内を歩いていたそのとき、
「晩酌の供にイカでも食おうと思うのだが、一緒にどうだ?」
後ろから声をかけられた。
「いや、お前魚介類食べれないじゃん。それにあの子はダンジョン用に捕まえてきたから食べさせないよ。そもそもクラーケンは肉が固いからおいしくないよ。人をいびってる暇があるなら仕事したらどうなの?」
「何を言うか! この私が失態を犯した貴様を慰めてやっているのだぞ?」
「全然慰めになってないし。僕は失態なんてしてないよ、ヴァルート。そんなんだから腹黒エルフとか言われるんだよ。あ、あとそろそろ引きこもり卒業したら?」
「失敬な!誰がこの城を護っていると思っている! 日々結界を維持するために…。ちょっと待て。貴様、私がなんと呼ばれてると言った?」
「僕、ボスのとこ行かなきゃだから。じゃあね。」
「誰だ? 誰がこの私をそんな呼び方で…。おい、待て! クルメノス!」
知らなかった事実に打ちのめされているそのダークエルフはヴァルートだ。僕の同僚に当たる。僕と彼は仲良しこよしなのだが、ロセルナはこいつのことが嫌いなようだ。
ヴァルートは城の警備を担っている。
百年単位で攻撃されたことはないが。
使いもしない弓を持って城の中を散歩してるだけに見えるのは、きっと僕だけではないと思う。
腹黒エルフを撃退し城の中を進む。
我らがボス、魔王様に会いに行くために。