22 恋愛と部下達
「そうだね。おなかすいたよ。」
背後からボスが言う。
今の今までボスがいたの忘れてました。
一言も発しないし、魔力消してるし、寝てるのかと思ってました。
「レクくん、もう食べれるかい?」
「はい、二日酔いは完全に治りました。」
「じゃあ僕がごちそうするよ。二人とも、なにがいい?」
にこにこ、うきうきした様子でボスが言う。
「ありがとうございます。もう一人連れていくので、レクラスと先に行っててください。」
3人で飯にすると、おそらくボスと僕が話し込んでレクラスが退屈するかもしれない。
まったく、いい上司をやるのも大変だ。
僕はレクラスにさわやかな笑顔を向けて地面に手をかざす。
「ちょ、クルさん。別にそんなことしてもらわなくても…。」
足元に魔法陣を出してロセルナのいるダンジョンの管理室に移動する。
レクラスが何か言っていたような気がするが、きっと問題ないだろう。
これは純粋なやさしさなのだから。
決してロセルナといるときのレクラスを見てにやにやするつもりなどない。
全く、微塵もない。
「お疲れさま。面白い冒険者は来たかい?」
「お疲れさまです。特に目立った人間は来てないです。どうしたんですか?」
「もうお昼だし、ごはん一緒に行かない?」
「遠慮します。」
「まあまあ、そう言わずに。ボスも一緒だよ。」
「魔王様が私を呼んでるんですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど、ロセルナが来てくれたらきっと喜ぶよ。」
特にレクラスが。
「わかりました。今のところダンジョンは問題なさそうなのでいいですよ。」
リウィアは部下に何かあったらすぐ呼ぶように頼み、仕事の引継ぎをしている。
実際のところどうなんだろう?
この子はレクラスをどう思ってるんだろうか?
あんまりこの子は感情を表に出さないからよくわからない。
でもきっといい印象は持ってるんじゃないかな。
彼は仕事ができるし、優しいし。
チャンスはきっとある、頑張れ、レクラス。
「お待たせしました。魔王様にお待ちいただいてるんですから、にやにやしてないで早く行きましょう。」
この子は確かにかわいいが、もう少し柔らかくならないものだろうか。
「セクハラですよ。」
「え? 勘弁してよ。変な意味じゃないよ。ていうか僕、何も言ってないよ」
もう一度足元に魔法陣を作り、ロセルナと一緒に城に移動する。
レクラスはきっとⅯに違いない。