18 口止めと泥酔
ちょうどそこに仕事を終えたレクラスが姿を見せたので、今から内装の詳細について会議をしようと思う。
「戻ったばかりで悪いけど、今時間あるかい?」
「ええ、今日はもう仕事ないので空いてますよ。」
よし、じっくり会議と行こう。
「じゃあ、今から僕の部屋でダンジョンの打ち合わせしよう。」
「いいですね! 荷物置いたらすぐに行きます。」
「あ、先に一つだけ聞いてもいいかい? 最近、ヴァルートに僕の仕事内容の詳細を聞かれたりする?」
「ああ、それならさっきも…。」
レクラスは最後まで言う前に黒い影に連れていかれてしまった。
おそらく今日はもう解放されないだろうから、会議は明日にして休むとしよう。
雲一つない晴天、小鳥たちのさえずり、穏やかな風。
とてもいい朝だ。
ついに本格的にダンジョン作りに着手できるということで、僕のテンションはここ数年で最高潮になっていた。
そんな僕がこの気持ちのいい朝に何をしているかというと、
「うぅ…。気持ち悪い…。」
二日酔いに苦しむ部下の介抱である。
「まったく、ヴァルートにも困ったものだね。ほら、水飲みな。」
昨夜、どうやらヴァルートは自分の恥ずかしい行動がバレるのを防ぐために僕の部下にしこたま酒を飲ませ記憶を消そうとしたらしい。
「うぅ…。ずいばぜん…。いい酒だったので飲み過ぎました…。」
「一体どんだけ飲んだんだい?」
「あんまり覚えてません…。うっ、樽4つ目くらいから記憶が怪しいです…。」
うん、どう考えても飲みすぎだし飲ませすぎだよね。
ていうかそこまでして知られたくなかったんだ。
レクラスを誘拐した時点でもう答えみたいなものだけどね。
「あと、昨日のことを思い出そうとするとなんか頭痛くなります…。」
仲間に呪いまで掛ける始末だ。
そろそろ一回ボスに怒られた方がいいんじゃないかと思う。
「呪いは解いてあげるけど、二日酔いは治してあげられないからね。 えい」
「ありがとうございます。だいぶ楽になりました。」
「今日は寝てるといいよ。僕は今からあの洞窟に行っていろいろ見てくるから、回復したらダンジョン内部の詳細を話そう。」
「すいません…。よろしくお願いします。」
「それじゃあお大事にね。」
またしても制作会議が先延ばしになってしまったが、レクラスがあの調子なのではどうしようもない。
1人で作ることもできるのだが、めったにない機会だから一緒にダンジョンを作りたい。
1人で出せるアイデアには限界があるし、彼はきっといい案を出してくれるに違いない。
そんな風に自分に言い聞かせて洞窟へ魔法で移動する。