17 腹黒と赤面
「失態の尻拭いを部下にさせておいて何を貴様はにやにやしているのだ? 初心者ダンジョンのミミックの分際で」
楽しく今日の振り返りをしていたところ、ヴァルートに声をかけられた。
「別にいいじゃんか。今日は貴重な体験が出来たんだよ。ロセルナには迷惑をかけたかもしれないけど、それお前には関係ないでしょ?」
「ほう、確かに私に直接関係する事柄ではない。しかし、貴重な体験とはトロールの代理でダンジョンに引きこもる事か?」
こいつ、僕よりよっぽどにやにやしてるじゃないか。
自分はいつも城に引きこもってるくせに。
きっとこいつは自分の仕事が退屈でならないから誰かにに
構ってほしいのだろう。
相当暇か、僕のファンかのどっちかだと思う。
今夜は、新設する高難度ダンジョンのアイデアをまとめようと思っていたけれど、ここはひとつかわいそうな同僚に付き合ってあげるとしよう。
「うん、楽しかったよ、ミミックやるの。ていうか、前から思ってたんだけどなんでそんなに僕の活動に詳しいの?暇なの?それとも僕のファンなの?」
「暇人などではないわ! ただ先ほど貴様の部下の骨女が周囲にさっきを振りまきながら歩いていたのを見ただけだ! あと、ファンでもない!」
今日もこいつは元気がいいな。
いつもならこのくらいで終わらせるところだけど、今日の僕は機嫌がいい。
もう少しだけ構ってあげよう。
「どうしてロセルナの様子を見ただけで、僕の今日の仕事内容がわかったんだい? しかもそんなに詳細に。ねえねえ、どうしてなんだ? 僕に話しかけるためにわざわざ僕の部下の誰かに聞いたんじゃないの? 誰に聞いたんだろう? ロセルナはお前のこと嫌ってるから違うと思うし。あっ、レクラスかな。レクラスに確認してみようかなぁ。今日の僕の様子を誰かに、弓を持ったダークエルフとかに聞かれなかったかい……。」
そこまで言ったところで、僕の推理は遮られた。
「うるさい! 私は警備で忙しいのだ。失礼させてもらう。まったく、貴様のせいで時間を浪費した。せいぜい宝箱にでも擬態しているがよい。」
ヴァルートは吐き捨てるようにそう言うと、浅黒いはずの顔を赤くして、寄せ手の来ない城の警備をしに行く、という体で逃げ出した。
自分から声をかけておいて逃げるなんて、構って欲しいのか欲しくないのかどっちなんだ。
まあいいか。
これで新設ダンジョンに集中できる。