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公爵令嬢は全てを失い黒薔薇の騎士として生きる  作者: 桜井正宗


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炎の渦の中で

「わ、私の事は構わなくていいわ、ローズ! どうせ見捨てるんでしょ!」



 人質になっているリリーがそう涙ながらに言った。



「見捨てはしません。このフォートレス家は命の恩人。リリーもそのひとりである以上、助けます」


「……どうして。私は一か月前、貴女を殺しかけたのに」

「許します。だから、諦めないで下さい」

「ローズ……」



 改めてハルバードを構えた。

 ヒッグスは、リリーを腕で抑え込み興奮状態。



「近寄るな、ローズ!!」

「ヒッグス、どうしてわたしがこのフォートレス家にいると分かったのです」


「この一か月間で我が組織は壊滅状態に追いやられた。毎日のように仲間を殺され、拠点を失った……その時、お前は『黒薔薇』を置き土産にしていただろう!」


「ええ、裁きの証に」


「調べていく内に、あの黒薔薇はこのフォートレス家の庭にしか存在しないと分かったのだよ。だから、イクスが黒薔薇の騎士かと思ったが、それは違った……。こうして蓋を開けて見れば、ローズ、お前が生きていたんだ!!」



 たまたま、というわけなのね。ならば、今までとこれからの代償を支払わせる。



「ヒッグス、よくもわたしを騙し、家族を皆殺しにしましたね!!」

「君が素直に婚約破棄してくれたのなら、ああはならなかった……断ったのは君の誤り、自業自得だ」


「話になりませんね。もういいです、リリーを解放していただく」



 一歩踏み込んで、一気に間合いに入った。



「――馬鹿なぁああ! 人質がどうなってもいいというのか!!」



 ヒッグスの手にはナイフ。

 向こうの方が先にリリーに手を出せる、けれど――それでも、わたしはナイフだけを弾く。ハルバードは槍としての機能があり、リーチがある分、遠距離攻撃もしやすい。


 腕をグッと伸ばし、槍の穂先ギリギリを使う。



「――――!!」



 リリーの首元にナイフが突き刺さる寸前。ハルバードの先がギリギリで進入し、ナイフを弾いた。



「ぐあぁッ」



 衝撃でリリーを放すヒッグス。その隙にわたしはリリーを救出した。



「……た、助かったの」

「良かった、ご無事で」

「ローズ……いえ、ローズお姉様、ありがとう」

「外にネモフィラさんがいます。合流して逃げて下さい」

「ローズお姉様は?」


「わたしは、あの男と決着をつけます。なので構わず」


「……分かりました。お気をつけて」



 頭を丁寧に下げ、リリーは去った。

 これで気兼ねなく、ヒッグスを葬れる。


 ハルバードを構え、再び向き直るとヒッグスが発狂していた。



「くそ、くそ、くそがぁッ!! ローズ、あの時お前は死んだはずだった!! どうして生きているんだ!!」

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