婚約破棄
婚約記念に両親と親戚五十人を集めた大規模パーティ。盛り上がっていた最中、婚約者のヒッグスがわたしを手招きした。
「どうしたのですか、ヒッグス」
「……ローズ、穏便に済ませたい。すまないが婚約破棄してくれ」
「……はい? 嫌ですよ。ここまでやったのに今更、婚約破棄だなんて」
「そうか……なら君と君の両親……そして、ここにいる五十人の親戚たちが消える事になる。いいんだな」
ヒッグスは何を言っているの?
冗談にしか聞こえない。
そうよ、これはパーティのサプライズ……と、思ったのだけど。ヒッグスはニヤニヤ笑って、指を鳴らした。
その直後、パーティ会場を取り囲むように黒づくめの男たちが百人規模で現れ、いきなり剣で攻撃を始めた。
「え……ちょっと、ヒッグス、これは何です!?」
「聞こえるだろう……魂の声が」
「あ、あの……親戚が……剣で斬られ………殺されているんですが」
「君が悪いんだよ、ローズ。俺との婚約を破棄してくれないから……だったら、俺から解消してやったまでさ」
「え? ええ……? うそ……だからって、そんな……」
会場は大混乱に陥り、親戚たちが逃げ惑う。けれど、黒ずくめの男達に阻まれ、次々に犠牲になっていく。どんどん死体が増えていく……酷い。
「さあ、あとは君の両親とローズ、君だけだ」
「お、親は見逃して!!」
「ダメだァ!」
今目の前には両親がいた。
でも次の瞬間には腹部を貫かれ、二人とも死んだ。
「いやあああああああ……!! どうして! どうしてこんな酷い事をするの!!」
「最後になったなローズ。後はお前だけだ」
「…………もう、わたしだけ」
「そうさ。お前は特別だ。この俺がトドメを刺してやる」
グサッと刃が胸部を貫く。
わたしはそのまま底なし沼に落ち――沈んだ。
…………どうして。