五
幼い頃から全てが手に入った。
さして誰かを好きになったことはない。好きになるまでもなく、私には完璧な許嫁がいたし完璧な周囲がいた。
だが全てがあれば、貰えるだけ全てが欲しくなる。
許嫁と取り巻きがそれぞれ持っている気持ちには気付いていたが、どちらも俺のもの。別にあいつらの思い通りにさせてやる必要はない。
何事もなく入学した学校でも、私は全ての支配者だった。常に私の周りには友達を名乗る取り巻き達がいたし、それ以外のやつらもヘコヘコしてくる。
身分は関係無いなんて校則も、私の前では無力だ。
だから欲しくなった彼女を、俺が手に入れるのも当然のこと。
ナギが思っているであろう取り巻きその1。名前は…… そうそう、ラダマスだ。奴が居ない間に少し話してやれば、簡単にコロッと落ちてきた。女子、いや臣民なんてみんなそんなものだ。
帰って来た時の奴の顔といったらもう……
いい娯楽だったぞ。
「どうした? 浮かない顔をして」
「はっ、いや…… なんでもないです。」
あぁ、お前は優秀な臣下だよ。私が王になった暁には無限の名声と富をやろう。
だからお前のものは私のものだ。
そして運命の昨日。私のものは私の命で壊れてしまった。
だがまぁいいだろう。まだナギが居る。
それにナギが居なくたって、俺には国民の女がいるからな。
そんな私の予想は悉く裏切られた。
1つ目に私は思った以上にナギに執着していたらしい。愚かにも臣下の身分で私の物を奪いやがった阿呆と、2つ目にそれに飛びかかる私。
そうして私は捕まり、牢の中へまっしぐら。
全てが私の手から落ちる。
それもこれも全て……
暗い牢で考える。逆転の一手と私を裏切ったやつとやつへの復讐を。
その時聞こえてくる報告が、私の復活を知らせる声。
「大量の血痕を残し、ラダマス邸がもぬけの殻になった」
あぁ、神は私を見放さない。
「さぁ、私を出せ! 被害者が居なくなれば加害者もいなくなる! そうして私のものを…… 再び私の手に。探せぇ!!!」
待っててくれお前ら。また、可愛がってやるからな。
もうここまで来たら全視点書くしかなくね?