陽光
願いを以って理を推し量ってはならない。わたしの胸に刻み込まれた、学術院の戒めだ。片やハンゾは戦の中に理を見出している。仮に戦に理と呼べるものがあるのだとして、わたしが戦の理について考えるとき、それを考えるわたし自身の願いは排除しなければ、解釈が歪むであろう。しかし戦を動かすのは、人だ。その根底には欲望であれ恐怖であれ、人々の願いがある。だが戦は願えば勝てると言うような生易しいものではない。戦の勝利への道が願いの外にあるものだと言うならば、それは正しく理と呼ぶべきものだ。してみると戦の理とは、願いと理の鬩ぎ合うところにあるのではないか。だがこれは、矛盾だ。矛盾は、前提の誤りを強く示唆する。即ち、願いを以って理を推し量ってはならないと言うなら、戦の理に辿り着くことは出来ない。わたしは人の世の理を欲するなら、願いと向き合わねばならないのだ。
願いとは、星である。わたしはこれから星を追い、星を読まなければならない。片やハンゾは、鮮やかなる陽光である。その日差しの下で星を読もうとするなど、愚かな行為だ。即ち、わたしは理を望むなら、ハンゾから逃れなくてはならない。
思い返せば、恥ずかしい。全く演繹的ではない。恐らくは、逃げ出したかっただけなのだろう。だが、そのときのわたしには、それが真理へと至る唯一の道であるように思えたのだ。
-- 或る学師の手記




