尖兵
「民を虐げる貴族共の中でも、この者達は一段と浅ましい。何故なら、真っ先に掠奪をしたいが為に、尖兵と称してこの国境の街までやって来たからだ。つまり、この者達は敵の中でも抜け駆けをしたのだ。だが、結果は見ての通りだ。愚かにも出過ぎた連中は、革命隊の勇士によって一網打尽となった。これは正に、自業自得と言うべきだろう。我々は、この賊の中の賊共に、民の怒りを知らしめなくてはならない。当然の報いを、与えなくてはならない」
ヤサンが右手を掲げると、人群れは歓声を上げる。俘虜達の首が斬り落とされる度、群衆は沸き立つ。ヴァルコは人群れに背を向け、顔に手を当てる。
「ああいう貧乏貴族は何人も見てきたんでね。そりゃあ、嫌な奴も沢山いましたし、今の奴らだって死んで当然の輩だったのかもしれませんがね。中には良い奴も、いたんですよ」
ヴァルコの言に広報局は頷き、返す。
「隊を率いていた男の尋問には、わたしも立ち会いました。当然、彼には彼の言い分があります。彼は己の信じる大義の為、帝国を蛮族の手から取り戻す為、行軍に加わったのだと言っていました。しかし森丘の国の王都を目指して進軍していた筈が、何故か小川の街で軍の統率が突如として失われ、掠奪が始まってしまった。彼は掠奪に加わることを良しとせず、それを止める為に味方と争うことも良しとはしなかった。そして決めた。己だけで初めの大義を貫くと。その為に信頼出来る仲間のみを率い、森丘の国への進軍を続けたのです。そしてここ、国境の街まで辿り着いた。しかし先の戦で荒廃したこの街では、補給も儘ならない。そこで少しばかり、強い口調で供出を迫った。さて、果たしてこれは、掠奪なのか。或いはそもそも、彼は真実を語ったのか。と、まあ、ここまで話しましたが、本当のところは結局分かりません。それに、どちらでもいいのです。民兵の集まりである革命隊は、一人一人は決して強くない。だからこそ集団としての闘志、士気が大きな意味を持つ訳です。それなのに、敵には良い奴もいる、などと言って、何になると言うのでしょう。或いは彼らと革命隊は、話の流れ如何では共に蛮族を憎む者同士、共闘出来たのかもしれない。しかしそんな、もしもの話など、何の意味もない。我々は彼らの命を、革命隊の闘志の火種とするより他なかった。違いますか」
「分かってますよ。俺だって部下の前で、そんな話はしない」
ヴァルコは頭を掻き、去った。




