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偽書『愚帝と僭王、畜生と議長』  作者: 宿木マコト
帝国の内なる厄災
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大義

「ルクシウス殿下の兄君であらせられる皇帝陛下は、極めて難しい立場に置かれております。先日執り行われた臣従の儀礼は、率直に言って失策でございました。ハンゾが皇帝陛下に跪いて見せた所で、帝国の臣民の多くは蛮族どもを赦す気になど、なれなかったからでございます。そしてその後もハンゾの横暴は続き、つい先日も大工の街が蛮族どもの手により落とされております。ハンゾと蛮族の勝手をこれ以上赦すなという声は、帝国内で高まるばかりです。しかし、陛下は大工の街の一件も、単なる小競り合いにすぎぬとして介入はせぬおつもりです。無理もありません。王に任じたばかりのハンゾを今咎めるようでは、政の一貫性を疑われてしまいます。更に陛下は、ハンゾの妹である皇后への顔向けも考えねばなりません。即ち陛下は、帝国臣民の声に鑑み、ハンゾと蛮族を討つべきだと思ったところで、実際に行動を起こすことは出来ぬのです。では翻って、我ら臣下の選ぶべき道はどこにあるのでしょう。帝国を想う、真なる愛国者は、今、何を為すべきか。考えてみたのです。それは、陛下の下知を待つことではない。陛下が思っていても口に出来ぬことを察し、為さねばならぬと思いながらも、為せぬことを為す。即ち、陛下には黙したまま、我らがハンゾを討つべきなのです。本日わたしはその挙兵をするにあたって、ルクシウス殿下の御威光を是非ともお借りしたく、お願いに参上した次第でございます」

参謀が言った。その傍らには大臣が立つ。向かい合った先には皇子ルクシウスが座し、その傍らにはその母と伯父が立つ。参謀の言に、伯父が返す。

「そなたらの帝国への忠誠は分かった。その主張に理解できる点はある。しかし陛下に断りもなく兵を動かし、表向きには陛下の御身内と戦うのだ。帝国の為だと言い訳をしたところで、謀反と呼ばれても仕方のない行いであろう。そなたらが国を憂い、危うい立場を進んで受け入れると言うのならば、それも良いかもしれぬ。誰にも断らず勝手に攻めて、勝手にハンゾを討ち取ったならば、それこそ誰も文句は言わぬであろう。しかし何故、それにルクシウスを巻き込む必要がある」

「此度の状況では皇帝陛下の御威光をお借りする訳には参りませんが、それでも帝国の意思であるという体裁は必要なのです。掲げる旗がなくては、行軍もままなりません。ルクシウス殿下が兄君の為を想われるのであれは、是非ともお力添えをお願い申し上げます。しかしこれは兄君の為のみならず、帝国そのものの為でもあります。臣下の中には陛下の難しいお立場を理解せぬ者が数多くおります。もしそれ故に、あまりにも陛下から人心が離れてしまうようであれば、陛下に皇帝を続けて戴くことは難しくなるかもしれません。そのような折には、ルクシウス殿下の存在がとても大きな意味を持つことになります」

参謀の言に、伯父は暫し黙し、返す。

「危うい物言いだな」


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