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訳注
『愚帝と僭王、畜生と議長』の第一巻では、ハンゾの侵攻から和平の成立までが語られる。この後、ハンを認めぬ者は和平を敗北と呼び、ハンゾを僭王と呼び、アルバリウスを愚帝と呼び、蔑むこととなる。そして帝国は内乱と殺戮の時代へと移っていく。
『クロードの友』の名前は、最後まで明かされない。本著がアルバリウスによるものではないとする立場からは、友の名が現れないことは文中のアルバリウスの台詞、『そなたの名は忘れぬ』という記述と矛盾していると指摘される。一方で、クロードの友というのは『森丘の戦いで死んだ名もなき兵たちの象徴』或いは『複数の実在人物の役割をまとめた存在』として描かれている、と言った主張も数多くなされている。なおクロードの友の名に関しては他にも有力な説があるが、これについては次巻以降で触れたい。
同様の議論は『将軍』に対しても存在する。特に当時の帝国軍の規模から考えると、森丘の戦いには複数の将軍が関わったと考えるのが自然であり、象徴説と複合人物説、共に有力である。なお、帝国博物館にはアルバリウス布告第一号を記録した文書が収蔵されている。これによると、帝国市民を虐殺した罪で処刑されたのは、近衛兵長エリクである。しかしこの文書の真贋もまた、今日まで続く議論の対象である。




