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終局
「そなたの名は忘れぬ」
アルバリウスは跪き、地に突き立てられた友の剣の前で呟く。立ち上がり、言う。
「クロード、そなたはこの後どうするのだ。そなたさえ良ければ、帝都に来ぬか。それなりの立場は用意するつもりだ」
クロードは少し間を置いて答える。
「申し訳ない、殿下。いや、もう陛下だったな。俺は一度、街に帰る。その後のことは、そこで考えさせてもらいたい」
「無理強いはせぬ。だが気が変わればいつでも帝都を訪ねて欲しい。そなたの街、確か小川の街、であったな」
クロードは静かに笑う。
「人は水なしでは生きられぬ。だから大抵の街の横には大なり小なり、川があるものだ。それなのに俺の故郷がなぜ、小川の街と呼ばれるか、知っているか」
「それは、その小川が美しいからであろう」
「そうではない。他に何もないからだ。珍しくもない川がある、それだけの街だ。だが俺はそこであいつと出会い、共に拾われ、共に育ち、共に暮らした。御館様には拾って戴いた御恩もある。だから、帰ろうと思う」
「そうか」
森丘の国の木々は疎らに赤く、色づき始めている。秋が近づいていた。




